2014年の読書メーター
読んだ本の数:328冊
読んだページ数:102639ページ
ナイス数:20527ナイス

家族シアター家族シアター感想
家族にまつわる短編集。印象的だったのは母子の関係を描いた「私のディアマンテ」私も「お母さんの頃とは違うんだからわかった風に口を出さないで」と言われることがあります。物語のあの状況で私が最良の方法を取れるかと言ったら自信はありません。少なくとも彼女と同じようにはできないでしょう。兄弟の話もどれも自分の妹との関係を思い出していました。兄弟姉妹の距離、夫婦の距離、親子の距離。短編の中にそれをギュッと詰めて表現する辻村さんの上手さを感じます。どの短編からも家族の良さやありがたさが最後にじんわりと響いてきました。
読了日:12月31日 著者:辻村深月
小野寺の弟・小野寺の姉 (リンダブックス)小野寺の弟・小野寺の姉 (リンダブックス)感想
40歳の姉と33歳の弟。早くに両親を亡くした二人が20年近くたった今でも一つ屋根の下でお互い独身で過ごしています。近くにいながら干渉しすぎずそれでも十分に相手を思いやる二人の関係が、視点が交互に入れ替わることによって読み手には手に取るようにわかります。他人から見たらいい年をして、という状況かもしれない。でも二人の関係がすごく良かったのです。最後のシーンの封筒にじんわりとして、ラストの一行にほろっと涙がこぼれそうになりました。こんな優しい姉弟ならきっと明るい将来が待っていると信じたいです。→
読了日:12月30日 著者:西田征史
怪しい店怪しい店感想
お店にまつわる、殺人事件から日常の謎までの作家アリスの短編集です。いつも通り二人の掛け合いは楽しく短編ゆえに強烈なインパクトこそありませんが、相変わらず綺麗な文章で安定した作品を届けてくれます。実際に「怪しい」のはやっぱりラストの「みみや」ですね。好みはアリスが古書店で出会った小さな謎を電話で綺麗に火村が解いてしまう「燈火堂の奇禍」。シリーズには珍しい倒叙形式の「ショーウインドウを砕く」。そして「潮騒理髪店」はとにかく読んでみて、といいたい美しさです。例え短編でもこのシリーズは読後幸せな気持ちになります。
読了日:12月29日 著者:有栖川有栖
Nのために (双葉文庫)Nのために (双葉文庫)感想
ある解決済事件に居合わせた4人が10年後それぞれの視点から過去をそして事件を振り返ります。誰もがすべてを共有しているわけではなく隠していることも知らないこともあるために少しずつ事件の本当の姿が浮かんでくるつくりはとても好みです。大切な人のために純粋に彼らは行動していますが、物語が見せるNと実際のNは同じでしょうか?本人すら気づかず彼らは実際は巧妙に自分の過去を顧みて自分自身のために動いているのでは、と思いあたった時、湊さんの物語の見せ方に舌を巻き不思議に思った一章の独白とラストシーンも腑に落ちました。
読了日:12月28日 著者:湊かなえ
うえきばちですうえきばちです感想
読友さんの感想を拝見して気になって仕方がなくなり図書館の児童書コーナーへ。うえきばちがあったので、あるものをうえてまいにちみずをやりました。めがでてはがでてはながさいて…そのあとは?なんともシュールです。でもこの発想はなんか悔しい(笑)。そしてもう一度うえると…!!!大人と子供ではきっと受け取り方が違うと思います。私は「うわあ」と思ったけれど子供は意外と素直に楽しみそうですね。
読了日:12月28日 著者:川端誠
みんなの少年探偵団 (一般書)みんなの少年探偵団 (一般書)感想
子供のころ夢中になってシリーズを読みふけった方にはこの装丁はたまらないのでしょうが、当時私はこの表紙絵が怖くて(笑)。何かの機会に何話か読んだ経験がある程度ですが豪華執筆陣に惹かれて手に取りました。好みは万城目さんと湊さん。このような短編でも力を感じられるのは流石です。どの作家さんからもシリーズへの愛が作品を通して伝わってきて、逆にこの機会に原作の方をきちんと読んでみたくなりました。江戸川乱歩生誕120年記念プロジェクトとのことでまだこの後企画があるようですのでそちらも是非手に取ってみたいです。
読了日:12月27日 著者:万城目学,湊かなえ,小路幸也,向井湘吾,藤谷治
鷹野鍼灸院の事件簿 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)鷹野鍼灸院の事件簿 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)感想
鍼灸院という舞台設定に惹かれて手に取りました。期待通り鍼灸院の日常や施術、鍼灸専門学校で扱われていることや学校生活などとても興味深く読むことができました。読後知ったのですが作者自身が鍼灸師でもいらっしゃるということで生きた描写に納得です。分類としてはありがちな日常の謎系で事件としては重くてもミステリとしてはとても軽いです。むしろお仕事小説として主人公の成長や日常を楽しみました。実はこのミス受賞作の方は挫折しているのですがこちらは軽く楽しめましたのでシリーズになったらまた手に取ってみたいです。
読了日:12月27日 著者:乾緑郎
クリスマスのぶたぶたクリスマスのぶたぶた感想
12月24日と25日の二日間、サンタの格好をしたぶたぶたさんがプレゼントの配達をしています。それぞれの時間、それぞれの場所でぶたぶたさんに出会ったりすれ違ったりした人たちのショートストーリーで話は進み、出会う彼らと同様にシリーズ初読みの私も驚き、不思議に思い、でもほのぼのと癒されながら読み進めました。最後まで彼の詳細には全く触れられないまま終わるのかと思いましたが最終話はちょっと違って…またそのお話が最終話であることがとても良かったのです。すっかり彼に惹かれ、シリーズの別作品も是非読んでみたくなりました。
読了日:12月25日 著者:矢崎存美
クリスマスの4人 (光文社文庫)クリスマスの4人 (光文社文庫)感想
1970年20歳のクリスマスの夜、4人が引き起こしてしまった死亡事故を隠蔽してしまいます。必然か偶然かその後10年毎のクリスマスイブに集まるたびに起こる不思議…。謎が気になる割になぜか淡々と読めてしまいます。途中で違和感からもしかしたら、という思いはありましたが真相はちょっと違う方向なので人によっては好まれないかもしれません。ラストは綺麗に終わっているように見えますが実際の私の頭の中はいろいろなことを考えてぐるぐると落ち着かないままとなりました。なかなか経験しない読後感です。
読了日:12月25日 著者:井上夢人
仔羊たちの聖夜(イヴ) (幻冬舎文庫)仔羊たちの聖夜(イヴ) (幻冬舎文庫)感想
時系列ではシリーズ三作目。視点はタックですが今作では探偵は完全にタカチに移っています。二人の関係も少し変わっていきますね。イブの夜の飛び降りを追いながらタカチが見つめていたものは…。普通ではないタカチが何度も登場します。隠されていた嫌な部分が明らかになったあと、更に論理的にタカチによって導き出される過去の事件の真相はさらに苦いです。再読なので油断していたのですが、西澤作品に時々現れる歪んだ親子関係は最初読んだ時と違って、親の方からという違う目線でも見ることになり重さもひとしおとなりました。
読了日:12月23日 著者:西澤保彦
クリスマス・イヴ (講談社文庫)クリスマス・イヴ (講談社文庫)感想
岡嶋作品ですがミステリ要素はなく純粋なホラーサスペンスですね。山荘でのクリスマスパーティに呼ばれたカップルが到着するとそこは既に惨劇のあとだった…その後「13日の金曜日」を彷彿とさせる恐怖が襲ってきます。ジェイソンと比べても少し前に読んだ綾辻氏の「殺人鬼」(←これが強烈すぎるけど)と比べても相手が人間らしく感じるので襲われる恐怖や痛さは私には想像より少なめで、むしろ逃げている間の雪の中の寒さや川の水の冷たさを痛いほどに感じる読書となりました。リーダビリティは抜群です。読み始めたら最後まで一気でした。
読了日:12月23日 著者:岡嶋二人
悪いうさぎ (文春文庫)悪いうさぎ (文春文庫)感想
葉村シリーズ3作目。女探偵ですががっつりハードボイルド展開です。彼女の尊敬すべき点は何があっても後ろ向きにならない所。読んでも読んでも真相に近づいて行っている気がしないし、物凄く酷い後味が待っているんじゃないかと途中で心配になりながらも、先が気になって一気に読みました。最初から気になっていた題名の悪いうさぎの意味はこの表紙絵からは想像できません。全体にもうちょっと短くても良かったと思いますがそれでもよく計算されていると思います。一見どうでもよいラストの村木から受けた脱力感が後味を和らげてくれた気がします。
読了日:12月22日 著者:若竹七海
テロリストのパラソル (文春文庫)テロリストのパラソル (文春文庫)感想
乱歩賞と直木賞のW受賞作ということでハードルを上げた状態で読み始めたのですがこれは良かったです。アル中のバーテンがいきなり爆弾テロの渦中に!アル中だというのに彼はとても魅力的。記録を残さないために暗記するところなど痺れますね。塔子ももちろん。でも彼ら以上に私が惹かれたのは浅井です。もう恋でもしそうなくらいに。彼らに限らず関係者はみんな賢くてドキドキしながら読み進めました。伏線は綺麗ですしラストにすべてが綺麗に絡む部分は圧巻です。久しぶりに読後感まで十分満足の美しいハードボイルドに出会えました。
読了日:12月21日 著者:藤原伊織
サキ短編集 (新潮文庫)サキ短編集 (新潮文庫)感想
O.ヘンリ、と同じような綺麗に落とす短編を書かれますが、日本では知名度は低いですね。サキのほうが同じように落としてもブラックで教訓も何もない状況が多い気がしますのでそのあたりで好みがあるのかもしれません。この短編集には21の短編が収められていました。中でもやはり「開いた窓」は秀逸だと思います。最初の「二十日鼠」のような笑ってしまうものもいいけれど、「宵闇」「七つのクリーム壺」のようなラストにぐっと絶句してしまうようなのものが意外と好きでした。いつか再読もしたいと思いますし、他の短編集も読んでみたいです。
読了日:12月19日 著者:サキ
穴感想
芥川賞は読みにくいものだという感覚がありますがこれは読み易い方だと思います。表題作の持つ、何を信じていいのか足のついている地面をグラグラっと揺すられ放り出されるラストの展開と独特の雰囲気は、読後じわじわと聞いてきて私は結構好きです。連作短編の形になっている残りの二編は「いたちなく」のラストの衝撃がなかなか良かったので続きがない方が…と最初は思ったのですが同様に読後、対比するものやバランスを思ったときやっぱり続けて一つの話だと納得しました。表題作も後半二編も主婦という立場のほうが共感しやすいかもしれません。
読了日:12月17日 著者:小山田浩子
ダンデライオンダンデライオン感想
シリーズ三作目、今回もまず現れるのは空を飛んでいる途中で殺され、そのままの形でミイラ化したとしか見えない女性遺体というインパクトの強さ。彼女が双子であること、途中に挟まれる彼女視点の16年前、さらにシリーズキャラとして個性的で目を惹いていた姫野刑事(ヒメ)の過去と絡みリーダビリティの高さには感心します。伏線やラストの展開は書き方によってはもっと良くなったのではないかとは思いますが、デビュー三作目とは思えないそつのない上手さを堪能しました。シリーズの今後も、作者の成長も含めてとても楽しみです。
読了日:12月17日 著者:河合莞爾
悟浄出立悟浄出立感想
また変わったところ(いいところ)に目を付けましたね。すごく楽しかったです。中国の古典に現れる脇役に焦点をあてた作りで、実際彼らがそう考えていたかも、なんて思うと本編を見る目も変わりそうでワクワクします。ただ、そういう作りですので、実際に古典を読んだりしていなくても「三国志」「西遊記」のあらすじ程度と、司馬遷が何で有名かとかは知っていた方が楽しめる、というか知らないとただの平易な話に感じてしまうかも。沙悟浄や趙雲の本心も楽しかったけれど、一番インパクトが強かったのは四面楚歌の中の虞美人です。圧倒されました。
読了日:12月16日 著者:万城目学
依頼人は死んだ (文春文庫)依頼人は死んだ (文春文庫)感想
連作短編の形をとっていますが物凄く短いものもありそれぞれ短編としても秀逸です。どれも人間の嫌な部分を炙り出し、しかもフォローもなく終わるという何とも後味の悪い短編ばかり。前作「プレゼント」の影を引きずり、それによる主人公への仕打ちに至っては読み手まで悲しくなります。最終話にちょっとオカルトっぽい部分があったのが好みとは違いましたが、飄々と物語を綴りながらも読み手を惹きつけ突き放す作りには本当にこの作家さんの上手さを感じました。決して楽しいだけの読書ではないのにシリーズ続きがとても気になります。
読了日:12月15日 著者:若竹七海
あつあつを召し上がれ (新潮文庫)あつあつを召し上がれ (新潮文庫)感想
気になっていましたが機会がなく初小川糸作品です。ひとつのメニューに関わった短編が七つ。絶賛されている方が多いのですが、「親父のぶたばら飯」以外はどれも私には後味が切なかったり重かったり、薄い本なのに結構しんどかったです。中でも亡くなった母親の方に自分を重ねてしまった「こーちゃんのおみそ汁」はすごくきつかった。手放しで絶賛されている人たちはきっと自分がとっても幸せなんだと思います。ごめんなさい、もっと余裕のある時に読むべき本でした。楽しみにしていたので残念です。
読了日:12月15日 著者:小川糸
Xの悲劇 (創元推理文庫)Xの悲劇 (創元推理文庫)感想
学生時代に堪能して以来のご無沙汰のクイーン作品です。翻訳によってずいぶんと読み易さに違いがあった気がしたのですが、手元のものやアマゾンのプレビューなど3人ほど翻訳を比べてみましたがあまり差は感じませんでした。一度読んでいるものだからでしょうか。むしろ私の年齢では創元推理文庫版の字の小ささが辛くなりました^^;。ミステリ好きとしては二番目の殺人から想像するものはありますがそれでもとても真相には到達できません。一人で抱えてないで…と思いつつぐいぐいと引っ張られる後半は圧巻でレーンの魅力を存分に楽しみました。
読了日:12月14日 著者:エラリー・クイーン
幻視時代 (中公文庫)幻視時代 (中公文庫)感想
18年前の写真に、その4年前に亡くなった人が写っているという中々ショッキングなプロローグ。タックタカチシリーズのように、後半は作家と書評家と編集者という3人が集まって飲み食いしながら(こちらは酒豪ばかりではありませんが)推理を巡らせることで真相を考えていく手法になっていました。推理の途中で私にも真相は想像がつきましたが、悲痛な叫びが聞こえてくるようでとても痛かったです。例によって想像の域を出ずに終わりますがすとんと腑に落ちるエピローグで納得の西澤作品でした。ただ幽霊の存在意義だけはちょっと甘い気がします。
読了日:12月11日 著者:西澤保彦
法医昆虫学捜査官 (講談社文庫)法医昆虫学捜査官 (講談社文庫)感想
虫が苦手なので読むのを躊躇したのですが昆虫法医学に惹かれて。最初の死体解剖時の描写は顔をしかめたくなりますが思いがけずダメージは少なく読み続けられました(あいつらは飛んでくることはないからかも)。テイストとしては「科捜研の女」ですね。昆虫法医学という分野はもちろん昆虫の生態についても凄く興味深く読みました。女性法医学者も刑事もキャラが生き生きと描かれとても読みやすかったです。ラストの展開だけはとても悲しくなりましたが、シリーズの続きも是非読んでみたいと思いました。最初の描写さえ乗り切れればお勧めです。
読了日:12月11日 著者:川瀬七緒
クロノ・モザイククロノ・モザイク感想
わけのわからないうちに現在と未来を行ったり来たりさせられるタイムジャンパーとなってしまった主人公。見てしまった未来を阻止するために奮闘します。自分の意志でタイムジャンプするわけではないので前半は少々読みにくかったのですが、後半過ぎある人が出てくるあたりから突然話に筋が通ったように感じて一気に読みました。恋愛部分も良かったと思います。SFはともかくファンタジー要素があまり好みではなく最終的に必然性については納得できなかったのですが、ひょっとしたらもう一冊出て補完してくれるのかもしれず、気になるところです。
読了日:12月10日 著者:二階堂黎人
マスカレード・イブ (集英社文庫)マスカレード・イブ (集英社文庫)感想
マスカレードホテルの前日譚ですね。短編集の形になっていてフロントクラークの山岸も、刑事の新田もまだまだ若いです。もちろんこちらから読んでも問題はないのですが、これを単品として読むのは短編集ということもあってかなり軽く物足りなく感じる人もいるかもしれません。私はこの軽さをさらっと楽しみましたが、文庫でいきなり出たのもなんとなく納得します。二人の過去はそれぞれこんなだったのね、とか表題作のエピローグでニヤリとしたり、ホテルの方を読んでいるゆえに楽しめた部分も多いのでこれから手に取る方は是非ホテルからどうぞ。
読了日:12月10日 著者:東野圭吾
翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件 (講談社文庫)翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件 (講談社文庫)感想
多少予想はしていたものの彼の登場と退場のタイミングには吃驚しました。もちろんストーリーとしては純粋に新本格らしい前半と無理やりな推理をぐるぐるひっくり返す後半と素直に楽しんで読めました。でも真相というべき一番最後のどんでん返しだけは読者としてはずるいと思います。当たり前のことながらなんとなく新鮮だったのが、犯人は正しいことを言うとは限らないということ。これが21歳で書いたデビュー作とは本当にすごいと思います。ペダンチックな部分も人を選ぶのかもしれませんが私は好きです。作者のミステリへの愛が伝わってきます。
読了日:12月2日 著者:麻耶雄嵩
さよなら神様さよなら神様感想
同じ小学生を主人公にしていても、前作(読んでいなくても特に問題なし)がメッセージ性のある一応ジュブナイルだったのに比べ今回は純粋に大人向けだと思います。前作と主人公は違いますし、イケメン鈴木君の神様は犯人名を語るだけなのに底意地の悪さが増している気がします。前半は身近な殺人とはいえ穏やかに読んでいましたが、途中の「バレンタイン昔語り」でガツンとやられ、その勢いで最後まで引きずられ、さらにあの一文字とラスト一行に震えがきました。神様はゲームを楽しんだかもしれませんが、もちろん一番怖いのは神様ではありません。
読了日:11月30日 著者:麻耶雄嵩
純喫茶「一服堂」の四季純喫茶「一服堂」の四季感想
タ○ーラン?表紙絵にも安楽椅子探偵にも突っ込みました。そして読み始めたら本家以上に探偵が好きになれない!なんなのこの店主も店も!正直東川さんたら何を考えてるんだろう?でもテンポはいいしちゃんと本格してるユーモアミステリなのは流石、などと思いながら読み進めました。突っ込みつつ春夏の2つの短編を読み終え、なんだかめんどくさくなった3編目の秋。そして惰性で冬に突入して目をむきました。ごめんなさいごめんなさい!読み飛ばしたところはもう一度ちゃんと読み直します!少々グロイ描写もありますが軽く楽しめました。
読了日:11月29日 著者:東川篤哉
テミスの剣テミスの剣感想
渡瀬警部が若いころ担当したある事件は実は「冤罪」だった…。それを明らかにしたときその事件は、関係者はどうなるのか。人が人を裁くことの恐ろしさというのを嫌というほど突き付けられます。事件は冤罪を明らかにするところまででは終わりません。23年経ってさらに起こる事件。さらにラストの展開には驚かされました。メッセージ性だけではなく、この渡瀬警部を作ったともいえる一連の事件はミステリとしても上質です。堪能しました。検事の静おばあちゃんを始め別作品で見かけるメンバーがたくさん登場していることもファンには嬉しいです。
読了日:11月26日 著者:中山七里
最終陳述最終陳述感想
二人を殺めて強盗殺人罪に問われ、罪を認めていた男の最終陳述。突然傍聴席から犯人は自分だという声が上がる…被告人は無罪なのか、真犯人は誰なのか。中盤までは冗長と感じ苦戦しましたが、後半は先が気になって一気に読みました。裁判員裁判という状況ゆえ期限の関係で手続きは簡素化され、弁護人検事警察に加えて裁判員の思惑までもがぶつかり合いこんな状況で正しい裁判ができるのかという恐怖すら感じます。最終的に誰が何をしたくてどう動いているかは想像しやすいですが、提示される問題については改めて考えるきっかけとなりました。
読了日:11月26日 著者:法坂一広
かたづの!かたづの!感想
実在した東北の女大名(のちに清心尼)の歴史小説ではありますが、一本角の羚羊の角、かたづの様の視点から始まり、途中に河童などの助けもありファンタジー要素も含んで普通の歴史小説よりは読みやすいのではないかと思います。ただ史実に基づいているから仕方がないのですが、こんなに彼女は頑張っているのに時代の流れというものは本当に惨いもので読んでいて本当に辛く悲しい思いをしました。同じ史実に基づいていても彼女たちの気持ちがかたづの様や河童たちとの交流でもっと穏やかなものとして書かれていたらもう少し救われた気がします。
読了日:11月24日 著者:中島京子
神様の裏の顔神様の裏の顔感想
誰にとっても神様のような存在だった坪井先生。彼のお葬式に参列した人々の回想から話は進みます。それぞれの回想の重なる部分から読み手には「あれ?」と思う点が少しずつ出てきて、通夜ぶるまいで彼らが会話をするころには予想通りに裏の顔が…さあ、そして!…元お笑い芸人さんとのこと、ネタを作る感覚でお話ができているのでしょうか読み手を上手く誘導し振り回す運びは凄く上手いと思います。一気に読まされ、楽しめました。この本自体はものすごいインパクトのある作品ではありませんが、今後の作品の成長がとても楽しみです。
読了日:11月24日 著者:藤崎翔
3時のアッコちゃん3時のアッコちゃん感想
またアッコちゃんに会えて嬉しいです。相変わらずのパワーで元気をもらえます。前作同様に最初の2編がアッコちゃんとのお話で、後半二つはアッコちゃんは出てこないのですが、この後半二つも自分の考え方や目線を変えることで前向きで元気になれるお話でとても良かったです。アッコちゃんのお話、大好きでとても素敵なのですがワンパターンと言えば言えるので半分ずつにするのはちょうどよいのかもしれません。それにしてもウメチカってそんなすごいんですね。考えてみたら京都はよく行きましたが大阪を一人で歩いたことはなかったです。
読了日:11月22日 著者:柚木麻子
フリークス (角川文庫)フリークス (角川文庫)感想
精神病棟が舞台の3つの中編です。ホラーテイストですがしっかり本格で、2編目は別出版社で単行本でも出ていました。患者の目から語られる時点で既に何が本当のことかがわからないのですがそれを探りながらあっと思わせるところは流石だと思います。既読でしたが全く覚えていなかったのでぐるんと情景がひっくり返される醍醐味と作者ならではの味を楽しみました。表題作は特に作者の上手さを感じます。こんなテイストですが表紙絵のようなおどろおどろしさはなく、意外とあっさりと読めて読後感も悪くはなかったです。
読了日:11月22日 著者:綾辻行人
Wonderful StoryWonderful Story感想
犬にまつわるアンソロジー。凄く良かったです。伊坂さんは犬目線の昔話でお馴染みの犬たちのファンタジー。とても軽いけれど続きが気になります。大崎さんは小学生男子目線の家族を題材にした切ないお話。犬吠埼の扱いが見事です。木下さんはバター犬との3P強要なんてスタートながら短い中にも綺麗な伏線と回収のある後味爽やかなお話。横関さんは盲導犬を扱った優しく切ないミステリ。貫井さんのはなかなか壮大で面白いです。好みは大崎さんと横関さんかな。解説の「犬になってください」と編集者が頼んだ時のエピソードもとても楽しかったです。
読了日:11月21日 著者:伊坂幸犬郎,貫井ドッグ郎,犬崎梢,木下半犬,横関犬
再会 (講談社文庫)再会 (講談社文庫)感想
江戸川乱歩賞に何度もトライ後の受賞だけあり文章もしっかりとしてとても読みやすいです。視点が変わることによって現在と23年前の4人の状況が上手く伝わってきますし、必ずしも全てを4人が共有していないことから小出しにされる状況など展開も上手くぐいぐい引っ張られて読み進めました。後半少々強引だと思える部分はありますがこれがデビュー作と思ったら本当に良く書けているのではないかと思います。23年前と現在のそれぞれの哀しく辛い思いがしっかり伝わってきますが、不思議と読後感は悪くありません。他の作品も読んでみます。
読了日:11月20日 著者:横関大
公開処刑人 森のくまさん (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)公開処刑人 森のくまさん (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)感想
冒頭でぐぐっとつかまれるのですが、全てが分かり易いので意外と淡々と読んでしまいました。最後まで一気に読ませる力はあると思いますが、もうひとひねり欲しい感じで全体的にいまひとつ。グロさも同じレーベルにカエル男がある関係であまり印象に残らないです。化粧品会社の話や幼いころの話など中途半端に浮いてしまっているのも惜しいと思います。印象深かったのは「向う側とこちら側」という表現ですね。期待とは少し違いましたがこちらは隠し玉のデビュー作。今後を期待して続編も読んでみます。
読了日:11月19日 著者:堀内公太郎
丑三つ時から夜明けまで (光文社文庫)丑三つ時から夜明けまで (光文社文庫)感想
密室!といったら本格トリックを想像しますが、この本ではなんと不可能犯罪は幽霊の仕業。霊能力者で構成された静岡県警捜査5課が頑張ります。霊の設定はきちんとしており、捜査一課の「私」(霊感ありのキレモノです)が一緒に行動して人間側の捜査もするため単純ではないストーリーになっています。短編としてはどれも良かったですが「幻の夏山」がほろりとして好きです。メンバーのキャラが立っているのに活躍しきれていないなど全体を通してみると勿体ないなと思う部分も多いのが残念ですが、ラストの回収も余韻も見事でしっかり楽しみました。
読了日:11月19日 著者:大倉崇裕
はぶらし (幻冬舎文庫)はぶらし (幻冬舎文庫)感想
一章のラストで既に、無理っ!と思いました。でも沢山の方が読まれているのでなにかあるのかなとイライラしながらも最後まで頑張りました。私自身夫の仕事の関係で2歳まで親も頼れないほとんど母子家庭のような状況で子供を育てましたから、子供を一人で育てるのがどれだけ大変かは少しは分かるつもりですが、それでもこの選択は絶対ないです。十年ぶり?!よほど親しくても私には理解できません。主人公が中途半端に助けてしまうのもわからないではないけれどかえって良くない。ラストに少し救いがあったけど本当にこの読書は辛かったです。
読了日:11月18日 著者:近藤史恵
ずっとあなたが好きでしたずっとあなたが好きでした感想
表題作のラストの一行に、この表紙絵にそのオチなんだ、となんだか微笑ましく思ったスタート。短編13編収録ととても厚いので、なんで2冊にしなかったんだろうなどと思いながら一つ一つの恋愛ストーリーをのんびりと楽しんで読み進めました。途中少し感じるものはありましたが、それでも驚いたのが最後から二つ目。妙な納得と嬉しさに思わずいろいろ確認してしまいました。最終話もラストまで完璧です。本を閉じ、裏表紙の絵も堪能した後、あらためて見る題名と花束を持つ少年に一話読んだ後とは違う物語を見てつくづく上手いなあと感激しました。
読了日:11月18日 著者:歌野晶午
破門 (単行本)破門 (単行本)感想
黒川さんがテレビで、第五作「破門」を持ってこのシリーズを完結にしようとしていた、とお話されたのを見ていたのと、直木賞受賞作ということで必要以上にこの一作に期待をして読んでしまったかもしれません。相変わらずの二人の掛け合いと命を張った駆け引きはもちろん楽しめましたが、正直「疫病神」や「国境」の方が二人のパワーが感じられて好きです。直木賞はシリーズとして受賞されたと考えるのがいいのかもしれません。受賞作だからと今作のみ読んで楽しまれた方は是非シリーズの最初の方も手に取ってほしいと思います。
読了日:11月18日 著者:黒川博行
家守 (角川文庫)家守 (角川文庫)感想
光文社文庫版の加筆修正再文庫化だそうです。歌野さんの家にまつわる初期短編5編。「人形師の家で」の雰囲気が好き。「家守」は密室トリックは無理だろうと思うし被害者の事情にも想像がついたのですが、何気なく最初に戻って最初に見ていたものが全く違った光景だったことに気づいて驚きました。こういうのは流石上手いですね。「埴生の宿」「鄙」も何とも切ない事情が読み応えがありました。「転居先不明」はブラックですが身勝手さに自業自得だと思ったり。トリックや強烈なインパクトではなく、じわじわとくる余韻をじっくり楽しみました。
読了日:11月16日 著者:歌野晶午
殺人鬼  ‐‐逆襲篇 (角川文庫)殺人鬼 ‐‐逆襲篇 (角川文庫)感想
あの殺人鬼が山から下りてきてしまいました。前作は意外とさらりと読みましたがそれ以上のスプラッタ、とくに最初の小さな子供への描写はいけません。真面目にここで本を投げそうになりました。その後ももうエグイこと!絶対に読み返すなんてしたくなく、あまりどこの部分がどうなんて考えず、絵面で浮かぶ前にぐいぐい読みました。今回はちょっとSFが入ってきます。そのおかげでちゃんと見えていた伏線にあとから確かに「あっ」とは思いましたが、こちらの方がさらにミステリ要素は薄いですね。3作目への意欲もあるようですが私はもう十分です。
読了日:11月15日 著者:綾辻行人
殺人鬼  ‐‐覚醒篇 (角川文庫)殺人鬼 ‐‐覚醒篇 (角川文庫)感想
有名なホラービデオの世界がさらにパワーアップした形でここにあります。映像とは違うのでさらっと読める人はいいですが、そういうのが受け付けない方は絶対やめておきましょう。最初から何かが隠されているのは想像できます。十数年前に一度読んでグロさだけが印象に残った本作でしたが、今回は読んでいる間に違和感からそれを思い出しました。鋭い方は読んでいてある程度は気づくと思いますが巧妙に仕掛けられていますので、トリックを当てようとするよりスプラッタ描写に戦きながら一気に考えずに突っ走って読んで最後に驚く方がいいと思います。
読了日:11月15日 著者:綾辻行人
バリ3探偵 圏内ちゃん (新潮文庫)バリ3探偵 圏内ちゃん (新潮文庫)感想
バリ3圏内でなければ具合が悪くなるという引き籠りの圏内ちゃん。FXで生計を立てる彼女は小さなネットの情報から細かな個人情報まで集めてしまう特技を持っています。板での祭りへの参加やモラルはとりあえず置いておいて、要するに彼女が夫の助けを借りながらこの特技を生かして最終的に犯人を追いつめていくお話。新レーベルにこの表紙絵でどんな世界観かと思いましたが、適度にグロく伏線はバッチリプロローグから事件とのつながりも見事でいつもの七尾さんの世界そのものでした。残した部分があるので続きがあるのでしょう。期待しています。
読了日:11月14日 著者:七尾与史
THE 名探偵 (ジョイ・ノベルス)THE 名探偵 (ジョイ・ノベルス)感想
基本ミステリ読みなのですが、嵌ったのは新本格というジャンルが確立されてから。それ以前の古き良き名探偵たちの名作は正直どこから手をつけていいやらわからず形ほどしか触れてこなかったのでこの本を見たときに飛びついてしまいました。新かな新漢字に統一して下さっていますので底本よりかなり読みやすいと思います。それぞれの探偵の違った性格が短編からでもよくわかりました。独特の雰囲気を持つ仁木兄妹の「灰色の手袋」が好みです。恥ずかしながら初見の探偵さんもいまして別事件の活躍も読んでみたいと思いました。
読了日:11月14日 著者:江戸川乱歩,高木彬光,福永武彦,角田喜久雄,仁木悦子,戸板康二
([お]13-1)クローバー・レイン (ポプラ文庫)([お]13-1)クローバー・レイン (ポプラ文庫)感想
編集者が本にしたいと切に願う原稿に出会えても、簡単には本にはならない現実。出版後売れるまでの苦労。さらにそれが文庫になるためには…。私たちが平積みでなんとなく手にする一冊の本にはたくさんの人の思いが詰まっているのを教えられます。優等生の主人公が悔しさをバネに自分を省みながら成長していくところも良かったしのめり込んで一気に読みました。ずっと気になっていた伏線がラスト数行で回収されたときは思わず泣きそうになりました。大崎さんの人と人との繋がりを大事にされる、本にまつわるお話はどれも後味が良く好みです。
読了日:11月13日 著者:大崎梢
警視庁捜査二課・郷間彩香 特命指揮官警視庁捜査二課・郷間彩香 特命指揮官感想
このミス受賞作。警視庁捜査二課で数字を精査する日々を送る通称電卓女郷間綾香。彼女が突然銀行立てこもり事件の指揮官に任命され…。タイトスカートにピンヒール、ちょっとした仕草などがいかにもドラマにありそうな設定ではあります。前半はキャラのはっきりした魅力的な脇役に支えられ背景を想像しながらぐいぐいと読み進められました。事件の動機や結末などは、歴史問題を扱ったりコメディぽい軽さもあったりで中途半端な感じも受け、伏線もあからさまですので後半失速した感はあります。ですがこれがデビュー作、今後の作品が楽しみです。
読了日:11月13日 著者:梶永正史
どこの家にも怖いものはいるどこの家にも怖いものはいる感想
5つの怪談の短編集なのですが、それが作家と彼のファンの編集者のところへ偶然集まったどこか共通点のある5つ…実話?という構成が恐怖を煽ります。「赫眼」がめっちゃ怖かったのでこちらのひとつひとつのお話はそれほど恐怖は感じませんでしたが、最初のお願いと参考文献がやたら怖いです。ミッシングリンクらしきものを二人が追うミステリ仕立てになっていて、なんだかすっきりしないけれど踏み込みたくないというラストの展開と余韻が流石だと思いました。「残穢」と比べてる方が多いですね。私は「残穢」の方が怖かったです。
読了日:11月12日 著者:三津田信三
ねじまき片想い (~おもちゃプランナー・宝子の冒険~)ねじまき片想い (~おもちゃプランナー・宝子の冒険~)感想
玩具メーカーの敏腕プランナー富田宝子。彼女が片想いの相手のために密かに頑張るミステリ仕立てになっています。とても読みやすいのですが、片想い相手が柚木さんらしいダメ男なので好きになれないし、いくら恋は盲目とはいえカードを返却してもらう手段などあまりにも身勝手で宝子自身にもイライラしました。恋愛無しで仕事のピンチを救っていくようなお仕事小説じゃダメだったのかな。私には合いませんでしたが会社のメンバーや友人の個性的なキャラはとてもよかったので、そういうことを気にしない方は柚木さんらしいお話を楽しめると思います。
読了日:11月12日 著者:柚木麻子
特捜班危機一髪 警視庁特捜班ドットジェイピー特捜班危機一髪 警視庁特捜班ドットジェイピー感想
ドットジェイピー2作目。前作同様、くだらない、と思ってしまえばそれで終わり。でもこの馬鹿馬鹿しさがとても楽しいのです。前回ドットジェイピーに恥をかかされた形の都知事がメンバーの一部入れ替えを目論んで、新メンバーを投入します。もちろん都知事のもくろみ通りに事が運ぶわけもなく…。香連の描く同人誌(腐)の描写に爆笑しました。エピローグの一之瀬にも。全くの続きの話なので、前作を読んでからの方がいいと思います。作者には迷惑以外の何物でもないですが、あとがきから逆にジャーロの加筆修正前バージョンに興味が湧きました。
読了日:11月12日 著者:我孫子武丸
ナイト&シャドウナイト&シャドウ感想
エリートSP首藤がアメリカのシークレットサービスへ研修に出向いた間のひとつの事件の話です。彼はほとんど超人的で研修の身ながら現地のメンバーを超えるほどの活躍を見せ本当に格好良く、危機にも安心して読め、とても楽しいです。相棒のバーン捜査官が変わっていく所もいいですね。柳さんはこのタイプのお話は本当に上手いと思います。さて、まだ彼らが気づいていない黒幕の存在が読者には明かされていますが、これとラストの一行が意味するもの…時代も考えるとその件の続編があるのでしょうか。事件が大きすぎて読むのが恐ろしい気もします。
読了日:11月10日 著者:柳広司
伽藍堂の殺人 ~Banach-Tarski Paradox~ (講談社ノベルス)伽藍堂の殺人 ~Banach-Tarski Paradox~ (講談社ノベルス)感想
シリーズ4作目。人によっては嫌うであろう数学の薀蓄がトリックと無関係でないこともあって私は結構好きです。もうこの方のトリックは実現はどうなの?って形が多くて想像ができません。でも机上の空論を振りかざすのも味だと思うし、楽しんできました。今回はシリーズ通じて明らかにされるべき過去の事件や繋がりについて転換期に来ているようなのですが…ラスト、百合子によって指摘されたことにはそちらの方向に話が行くとは想像していなかったので唖然としました。ここまで楽しんで読んできたけれど今後続けて読むかはちょっと考えます。
読了日:11月9日 著者:周木律
アポロンの嘲笑アポロンの嘲笑感想
読み友さんからのご配慮で、この話が震災を扱っていることを事前に知りました。おかげでダメージは少なく済みましたが、やはり震災をエンターテイメントとして読むのはまだとても辛いです。話は混乱の時期に起きた殺人事件の被疑者が逃亡を図り、事故直後の原発へ向かう事から始まります。疾走中の彼の目から描写される立ち入り禁止区域の状況、原発で働く人の実態には震えが来ます。彼の目的は何なのか、徐々に明らかになっていく事情に一気読みさせられてしまいましたが、強烈なメッセージの込められた直球勝負の作品です。事前の覚悟が必須です。
読了日:11月9日 著者:中山七里
裏切りのステーキハウス (幻冬舎文庫)裏切りのステーキハウス (幻冬舎文庫)感想
ステーキハウスでのほんの数時間のお話。登場人物も限られ、それほど変わった展開が起こるとも思えないのですが、そこは舞台脚本を書いてきた木下さん、狭いステージの中を見事に振り回してくれます。後半は考える暇もないほど話はぐいぐい進みひっくり返され…ものすごいスピードで読み終わってしまいました。強烈なインパクトを残すようなラストではありませんが後味も悪くありませんし、何も考えずに本の世界にのめり込みたいときはピッタリかと思います。
読了日:11月8日 著者:木下半太
神様ゲーム (ミステリーランド)神様ゲーム (ミステリーランド)感想
ミステリーランドだけれど、あまり子供に勧めたくない展開…人が亡くなるシーンとかトラウマになりそうです。子供が主人公なのも重いですよね。小さな日常の出来事や名前もいちいち突っ込みたい。本当に学校の図書館にあるのかしら。そんなことを思いながら読み進めていったラスト。一瞬息を止めました。叙述トリック以外でこんなに驚かされるとは思ってもみませんでした。読後戻ったりして思わず納得できる答えを探してしまいました。どうやら読者である私が神様とのゲームに参加させられたようです。このインパクトはきっと忘れないでしょう。
読了日:11月6日 著者:麻耶雄嵩
文庫版 魍魎の匣 (講談社文庫)文庫版 魍魎の匣 (講談社文庫)感想
内容もみっしりの大変読み応えのある本でした。いくつかの事件がそれぞれ別の形で関わったメンバーの口から京極堂のもとに集まると、隠れたストーリーが現れてきます。「魍魎」の意味するところ。ちょうどよい「匣」。息を詰めるようにして読み進めたラストの対決の後に残ったのは哀しさとやりきれなさ。境界を超えてしまった人間の嫌な部分悲しい部分を見せつけられたのにも関わらずなぜかストーリーに美しささえ感じるのは、匣の少女を見せる冒頭シーンとラストシーンがとても印象的だからでしょうか。「人を辞める幸せ」に妙な説得力を感じます。
読了日:11月6日 著者:京極夏彦
銀翼のイカロス銀翼のイカロス感想
航空会社の再建。そして政界。読んでいてイライラするほどの保身と隠蔽、明らかなトカゲの尻尾たち。一気読みさせられる勢いは健在ですが、あまりにもドラマが印象的すぎて頭の中は堺雅人にミッチーに愛之助さんの姿と声が飛び交います。前三作を読んでいるときと違ってまるでドラマのシナリオを読んでいるようでした。そんな中今回は中野渡、富岡の二人が印象的です。黒崎も言葉だけでなく少しイメージが変わりました。これだけ綺麗な勧善懲悪だと、銀行の内部を知るというより完全フィクションとしか思えなくなってしまったのが少し残念です。
読了日:11月2日 著者:池井戸潤
うぶめ (京極夏彦の妖怪えほん)うぶめ (京極夏彦の妖怪えほん)感想
怪談えほん「いるのいないの」で強烈なインパクトをくださった京極さんが得意な妖怪をテーマにシリーズとして立ち上げた妖怪えほんシリーズの1冊目。弟か妹が生まれてくるのを楽しみにしていた主人公。ところが弟も妹も生まれてきませんでした。お母さんも戻ってきません…そして彼は夜、泣き声を聴くのです…母親という立場では読むのがとても辛いです。でも彼に対応するお父さんが切なくも素晴らしかった。挿絵の雰囲気にも圧倒されました。シリーズには楽しい話もあるようですので是非手に取ってみたいです。高学年~一般向けとのこと。
読了日:11月2日 著者:京極夏彦
かないくん (ほぼにちの絵本)かないくん (ほぼにちの絵本)感想
子供に死というものを説明するのは簡単ではありません。この絵本でいったい子供達は何を得るのか。わからないということを得るのかもしれません。着地は見事だと思います。でも現実として、小中学校時代に家族の死、病気によるクラスメートの突然死や自分で選んだ先輩の死まで経験した娘の時のことを考えたとき、これを読んでいたとして受け止め方に何かが違ったかと思ったらそれはない気がします。大人が初めて小さな子どもに死を説明するために考えるのには良いきっかけにはなるのかもしれません。大人でもいろいろな受け止め方があるはずです。
読了日:10月31日 著者:谷川俊太郎
私の嫌いな探偵私の嫌いな探偵感想
烏賊川市シリーズ七作目は短編集。短編だとページ数の都合か想像以上に鵜飼探偵が鋭くてパパッと事件を解決してしまいます。前作とは逆に、今回は戸村君の出番が少なくほとんど朱美が一緒に行動していました。戸村君のついてなさとか恋模様とか楽しかったのでそのあたりがないのは残念でしたが、どんなにゆるくても一つ一つちゃんと本格してるので安心して読めます。非現実ですが「死に至る全力疾走の謎」が好きです。他に「烏賊神家の一族の殺人」では、ゆるキャラ「マイカ」にすべて持っていかれましたがトリックも推理も巧みで良かったです。
読了日:10月27日 著者:東川篤哉
怪盗グリフィン、絶体絶命 (講談社文庫)怪盗グリフィン、絶体絶命 (講談社文庫)感想
元は「かつて子どもだったあなたと少年少女のため」のミステリーランド。法月さんはきっと怪盗ものを読んで育ち、今の少年少女にもその楽しみを味わってほしかったんだろうな、なんて読みながら思いました。「あるべきものを、あるべき場所に」が信条のグリフィンは実際は自分で言うほど完璧ではありません。題名どおり何度も絶体絶命に陥ります。そんな情けなさもここではかえっていいのだと思います。ワクワクドキドキというよりはテンポよくサクサクとですが思いがけないどんでん返しもあったりしてかつての少女である私もとても楽しめました。
読了日:10月26日 著者:法月綸太郎
七つの棺―密室殺人が多すぎる (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)七つの棺―密室殺人が多すぎる (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)感想
密室の大好きな黒星警部が七つの密室に挑戦。ところがなかなか綺麗にスパッと解決には至りません。特徴ある残念なキャラが楽しいです。7つの短編ほとんどが有名作をパロディ化したりパスティーシュされていて、元作品を思い出しながら比べて読む楽しさもありました。トリック自体は短編なのでそれほど凝ったものではありませんがラストに想像以上を一発持ってくる折原一らしさは健在です。好みは「ディクソン・カーを読んだ男たち」。「脇本陣殺人事件」は特にパロディとしてもとてもよくできています。軽めですがこんな折原一作品もいいですね。
読了日:10月26日 著者:折原一
密室殺人ゲーム王手飛車取り (講談社文庫)密室殺人ゲーム王手飛車取り (講談社文庫)感想
5人がネット上で殺人推理ゲームを行います。出題は持ち回り制。出題者=実際の事件の殺人者。倫理的にどうかということは置いておいて、一つ一つの出題がきちんと本格していて楽しく、頭狂人のパートから一連の繋がりや隠されているものを想像するのもワクワクしました。最初は記号だった彼らは読み進めるときちんと人格を持ったキャラになり、特に044APDには大胆さや繊細さに愛しさを感じるほどでした。話題に出る彼は誰かだろうとは思っていましたがそれがあんな形であんなことに!そしてさらにラストにも吃驚しました。続きを読まないと!
読了日:10月23日 著者:歌野晶午
戻り川心中 (ハルキ文庫―連城三紀彦傑作推理コレクション)戻り川心中 (ハルキ文庫―連城三紀彦傑作推理コレクション)感想
とにかく文章が美しいです。「花葬」シリーズの名の通り花の持つ役割もそれぞれ大きく、切り取られた情景は透明感を湛え花の色や香りまで運んできます。ミステリとしての技巧のうまさはもちろんですが表面に見えているものとは違う人々の強さや悲しさに一編ごとにため息をつきました。読み終わるのが勿体なかったです。好みは「桐の柩」「戻り川心中」「夕萩心中」。印象的だったのは「花緋文字」。このハルキ文庫版は光文社文庫版の「戻り川心中」に「夕萩心中」の中の三編を加えたシリーズ全てを集めた完全版だそうでこちらで読めて良かったです。
読了日:10月20日 著者:連城三紀彦
警視庁特捜班ドットジェイピー警視庁特捜班ドットジェイピー感想
警察がイメージアップのため5戦士の「.jp(ドットジェーピー)」を結成。別作家さんの某チームをちょっと思い出す、一癖あるが一応特技もある見栄えのいい人たち。戦隊ヒーローさながらにイベントで劇をしたりもします。表紙イラストの個々は私のイメージと違いますが内容はだいたいこんな感じです。彼らがコミカルに失敗をしながらひとつの事件に立ち向かう様子は、くだらない!と言ってしまえばそれまでなのですが、エピソードに笑い、個性的なキャラがなんだか愛しくて一気に読んでしまいました。最近出た続編も手に取ってみたいです。
読了日:10月19日 著者:我孫子武丸
倒錯の帰結 (講談社文庫)倒錯の帰結 (講談社文庫)感想
倒錯シリーズ完結編。前2作を読んでいなくても、とのことですが登場人物は被っているしネタバレ的な部分もあるので読んでいた方がより楽しめると思います。表紙絵のように前からと後ろからと系統の違う2つの話を読んで最後に中央の袋綴じを開くと2つの関連がさらにはっきりする(?)という作りは斬新で楽しいですが、開いても頭の中はメビウスの輪。完結編というのには納得ですが実際は翻弄されたまま、残ったのは袋綴じのラストで明かされた衝撃だけだったりします。しかし折原作品は頭がごちゃごちゃになるのに妙な中毒性がありますね。
読了日:10月18日 著者:折原一
本をめぐる物語 一冊の扉 (角川文庫)本をめぐる物語 一冊の扉 (角川文庫)感想
好みだったのは小路さんの「ラバーズブック」。沢木さんの「時田風音の受難」も良かったです。宮木さんのはシリーズとして既読で好みですがこうして一編を切り取られるとなかなか主人公がきついですね。原田マハさんの「砂に埋もれたル・コルビュジエ」も話の生まれた経緯まで含めてとても素敵なのですが介護が絡んでいる関係で私にはとても重かったです。同シリーズの「本をめぐる物語―栞は夢をみる」の方が、SFやファンタジー要素があったためかインパクトが強いですが、こちらは読後にじわじわと良さが伝わってくるものが多かった気がします。
読了日:10月14日 著者:中田永一,宮下奈都,原田マハ,小手鞠るい,朱野帰子,沢木まひろ,小路幸也,宮木あや子
○○○○○○○○殺人事件 (講談社ノベルス)○○○○○○○○殺人事件 (講談社ノベルス)感想
文章のリズムに慣れるまで苦戦しました。ミステリ好きに絡むような書き方とそこかしこに現れる違和感。それが解決編によりカチッとピースがはまった後の脱力感。あまり品の良くない部分と文章が人を選ぶと思いますが、意外にも伏線をきちんと張った緻密に計算されたミステリになっていました。いろいろインパクトが強くて誤魔化されましたが、あれ以外の部分も絶対騙されないと思います。とはいえこのインパクト、今後の作品をどんな切口であげてくるかかなり楽しみです。[追記]絶対受け付けない方もいると思うので手に取るのは十分ご注意下さい。
読了日:10月13日 著者:早坂吝
楽園のカンヴァス (新潮文庫)楽園のカンヴァス (新潮文庫)感想
美術館でじっくり時間をかけて向き合う絵は自分の好みの絵であり、○○派や時代程度は説明を読んでもその描いた人物の背景まで考えることはありませんでした。当然ながらそれぞれの絵には描いた人の人生がギュッと込められていることにあらためて気づかされました。スマホでその絵の画像を見ながら、イメージも膨らみます。ルソーの生活、ピカソとの交流、女神ヤドヴィガ。真贋鑑定というミステリ的な要素に加え、恋愛要素もあって夢中になって読みました。ティムのラストの囁きが何とも優しく美しかったです。すごく楽しい読書タイムでした。
読了日:10月11日 著者:原田マハ
倒錯の死角 (講談社文庫)倒錯の死角 (講談社文庫)感想
倒錯シリーズ第二弾。日記という手法、アル中。叙述が入っていることはわかっています。結構早めに展開が読めた!と思い、裏を想像しながら楽しんで読み進めていったのですが…全然あたってなかったどころかその後見えていた景色がぐるんぐるんと。あっという間に何度も景色を変えられたのでフェアかフェアじゃないのかも正直わかりませんが、これぞ折原一作品。袋綴じにするわけです。普通でない人ばかりで思い入れのできる登場人物がいなかったのに最後まで一気に読まされてしまいました。よく考えられていると思います。第三弾も楽しみです。
読了日:10月10日 著者:折原一
鴨川食堂鴨川食堂感想
京都の一画。暖簾も看板もない食堂の奥に、食を探してくれる探偵社。思い出の中の鍋焼きうどん、ビーフシチュー、鯖ずしetc。探してほしい食には、もちろんそれぞれドラマがありました。ふわりと優しい、でもちょっと苦くて切ない短編集。依頼から見つかるまでのプロセスが全く書かれていないこともあって、ミステリ的に読むには読者が手掛かりから答えを探すのは無理そうですが、どのお料理も美味しそうで読後感も悪くなかったです。好みは「とんかつ」と「肉じゃが」。しみじみと相手への愛の深さが伝わってきます。
読了日:10月8日 著者:柏井壽
スタープレイヤー (単行本)スタープレイヤー (単行本)感想
読み終えてみると、まるっきりRPGの世界ですね。何十時間もかけてやるRPGと比べてしまえば規模は第一章という感じですが、ゲームにどっぷりはまっていた若いころを思い出し楽しく読みました。私がプレイヤーだったらやはり、付け加えるものを練りに練って…いや、それはゲームだったらそうするってだけで、本当に異界に連れて行かれたら100日を過ごすために最低限の願いだけして待つとか消極的なことをするかも。さて、これはシリーズとのこと、次は視点が変わるのかな?今後驚くような展開が待っていると信じて続きを楽しみに待ちます。
読了日:10月7日 著者:恒川光太郎
山手線探偵3: まわる各駅停車と消えた妖精の謎 (ポプラ文庫)山手線探偵3: まわる各駅停車と消えた妖精の謎 (ポプラ文庫)感想
今作ではシホが霧村さんやミキミキさんと行動をともにするようになったきっかけのちいさいおっさんの妖精を巡ってお話は進みます。現代では見間違いとしか思えないこの小さいおっさんが、理路整然と説明されるといてもおかしくないかも、なんて思ってしまいます。滅茶苦茶な話のようできちんと伏線をちりばめ、回収されていて見事でした。最後にはおっさんに愛しさと切なささえ感じます。ラストの展開は少し寂しいです。ここで一区切りのようですが、どこか別のお話に彼らが出演したりシホが素敵なレディになったときのお話も是非読ませてください。
読了日:10月5日 著者:七尾与史
御子柴くんの甘味と捜査 (中公文庫)御子柴くんの甘味と捜査 (中公文庫)感想
長野県警から警視庁捜査共助課(地方との連絡係らしい)に出向を命じられた御子柴くん。仕事にかこつけて地方と東京との名産品を頼まれることがしばしばです。お菓子はどれも美味しそうなのに玉森刑事の度を超した甘味好きぶりに徐々に、病気になるって!と心配の方が勝る読書になってしまいました。連作短編の形ですがどの話もきちんと書かれていて事件はなかなか苦いものが多いです。長野時代の上司、小林警部補も各話で登場して楽しませてくれました。あとがきの裏話にも笑ってしまいましたが編集さんグッジョブです。是非続編もお願いします。
読了日:10月4日 著者:若竹七海
螻蛄(けら)―シリーズ疫病神 (新潮文庫)螻蛄(けら)―シリーズ疫病神 (新潮文庫)感想
これほど次々とページをめくっていける本も珍しいと思います。西から東へ次から次へと二人は本当によく頑張ります。どう贔屓目に見てもそれは違うだろう、という無理やりでなんとか儲けにしようとする桑原には呆れるを通り越して感心しました。(必要経費は絶対多すぎます!)滅茶苦茶なようでいてピンチには現れる桑原としっかりしていそうでやっぱり堅気の甘さが垣間見える二宮との相変わらずの掛け合いと無謀ゆえのスリルにどっぷり浸かりました。中川、嶋田の二人も健在です。楽しかった!さて次は…題名が「破門」?ええっ?
読了日:10月4日 著者:黒川博行
ふるさと銀河線 軌道春秋 (双葉文庫)ふるさと銀河線 軌道春秋 (双葉文庫)感想
現代小説になってもやはり高田さんらしさを感じます。もともとがコミックの原作として書かれたものをあらためてノベライズとのことで、小説として読んでいても絵として情景が浮かんでくることが多かったです。一番の好みは「車窓家族」。「ムシヤシナイ」もよかったです。「晩夏光」は辛かった…作中の息子と一緒に泣いてしまいました。ラストの余韻はほっとするものばかりでなく、現実的で苦い後味も引きずります。コミックは再編成されて再販されているとのことなのでそちらも読んでみたいです。
読了日:10月2日 著者:高田郁
名もなき毒 (文春文庫)名もなき毒 (文春文庫)感想
このページ数を一気に読ませる力はさすがです。今回はハウスシックや土壌汚染など自分でかなり勉強した話題もありましたが、土壌については売主にそれほどの負担がかかるとは知らず驚かされました。いろいろな人が出てきましたが基本みないい人で、起こってしまったことや結果を考えるといたたまれないです。そんな中、原田いずみだけは全く理解できず本当に恐ろしかった。何か彼女をこうした理由があったのだと思いたいです。サンダルでタクシーを追いかけながらの社長の叫び、美智香のすべてを飛び越えた犯人への言葉がとても印象的でした。
読了日:9月30日 著者:宮部みゆき
嗤う名医嗤う名医感想
「現役医師による、可笑しくて怖いミステリー」との紹介で手に取りましたがブラックな面も重たい部分もありました。好みは、医師の気持ちの変わっていく様子が手に取るようにわかった「至高の名医」と、相手のつく嘘がわかってしまう医師の話「嘘はキライ」。寝たきり老人視点の「寝たきりの殺意」は重すぎて読んでいてしんどかったし、最低の医師の話とか常識を超えて気持ち悪い話などもあり、それらは読んでいて楽しいものではありませんでした。著者にはもっと有名な作品があるようなので次はそちらを手に取ってみたいです。
読了日:9月29日 著者:久坂部羊
ST 警視庁科学特捜班 毒物殺人<新装版> (講談社文庫)ST 警視庁科学特捜班 毒物殺人<新装版> (講談社文庫)感想
シリーズ二冊目。キャラが魅力的なのでとにかく読みやすいです。STメンバー5人、というより百合根と菊川を含めて7人で1チームですね。一冊目を読んだときはドラマのイメージが先行していましたが、今回は青山くんを始め、少しずつ脳内で違うキャラになり始めました。今回印象深かったのはやはり山吹さん。翠と黒崎さんのポリグラフも。読んでいて楽しかったのでまだ続編がたくさんあるのが嬉しいです。それぞれのメンバーの活躍はもちろん、百合根がまだまだ頑ななので今後どのように成長していくかも楽しみです。
読了日:9月28日 著者:今野敏
怪談えほん (6) かがみのなか怪談えほん (6) かがみのなか感想
ページをめくりながら思ったのは、鏡って想像以上にどこにでもあるということ。カーブミラーもスプーンも。私も小さなころは得体のしれない怖さを感じていたものでした。具体的に恐怖を感じたのは鏡を落として粉々にしてしまったときのこと。大きい状態では一人しかいなかった鏡の中の私が、細かい破片すべてに分散したのを見た瞬間の妙な恐怖は今でも思い出します。この本では樋口さんの描く女の子がそもそも怖いし、蝶々の演出も怖さに拍車をかけます。小さい子供が読んだら絶対鏡が怖くなると思います。私もなんだか鏡に背を向けるのが嫌です。
読了日:9月27日 著者:恩田陸
リアクト (ハヤカワ文庫JA)リアクト (ハヤカワ文庫JA)感想
前2作「リライト」「リビジョン」を読んでいることが前提で、相当しっかりと考えながら読まないと混乱します。しかもそれまでに受けた衝撃と起きていると思っていたことがここで違った観点で覆され驚きました。それによってさらに混乱し、正直一部は分からないまま放棄…。読みなおすなら最初からだけれどそれでも理解できる気がしなくて。4冊で完結とのことなので完結巻が出たら、三冊を再読して挑むか、いっそ結末までわかってから4冊通して読むか、と考えています。こんな状況でも次作でどんな結末を持ってくるかすごく楽しみだったりします。
読了日:9月26日 著者:法条遥
魔女は甦る (幻冬舎文庫)魔女は甦る (幻冬舎文庫)感想
凄惨な死体の描写に始まり、読み終わってみればかなり巧妙に伏線は張られていました。なんとなく見えているものはあってもたどり着けません。もちろんミステリですが、途中からはむしろパニックホラー。何がどうなってこうなったのかは現実にも起こりえそうで恐ろしく、特にラストの戦いの描写は息を止めるようにして一気に読み進めていくしかありませんでした。若い古手川と渡瀬が坊や呼ばわりされたりしているところでちょっと息がつけますが、宮條や七尾が過去まで含めて印象的です。想像以上に悲惨な結末。ラスト一行の破壊力も凄かったです。
読了日:9月25日 著者:中山七里
プレゼント (中公文庫)プレゼント (中公文庫)感想
「御子柴くんの~」を読もうと思ったらこちらのスピンオフと聞いたので。短編集の形ですが御子柴君と上司の小林警部補が事件に関わる話と葉村晶が事件に関わる話とが交互に出てきて、最後のお話で両者が共演します。どのお話も人間の嫌な部分をすっと明らかにして後味もあまりよくないのですが、さすがどれもよくできています。中でも表題作は秀逸。思わず読み返しました。ラストの「トラブルメイカー」もラストの一行の破壊力が凄いです。構成も見事。完全に脇だった御子柴君、主人公になったらどうなっているのかとても楽しみです。
読了日:9月22日 著者:若竹七海
きのこ 森の妖精きのこ 森の妖精感想
図書館で目に留まった一冊。きのこというものがこんなにも妖しく美しく繊細な姿をしているとは思いませんでした。美しい数々の写真は森の妖精という言葉が確かにぴったりで思わず息を止めます。谷川俊太郎さんの詩や監修された数々のフレーズも本当に美しいです。「この目につきにくい美しさは このこわれやすい魅力は おもねりもせず媚びもせず 誰にも見出されずに朽ちていく~」私はこのページの詩が好きです。
読了日:9月22日 著者:谷川俊太郎
白虹(はっこう) (PHP文芸文庫)白虹(はっこう) (PHP文芸文庫)感想
白戸君や動植物管理係を思うと違いに驚くガッツリ読ませるミステリです。ワンゲル部だったという著者は山の情景も読ませますが、実際に事件を追うのは山を下りてからなので山岳より普通のミステリかもしれません。ある事件によって自分から警察官であることをやめた主人公。自信がなく自分のしたことに苦悩する彼が事件に関わっていく様子は元警官という事情からハードボイルドな面もあり、また登場人物が端役までみな魅力的で夢中で読みました。ラストが少し肩すかしで惜しかったですが、著者の書かれた他の山岳ミステリも読んでみたくなりました。
読了日:9月21日 著者:大倉崇裕
闇の華たち (文春文庫)闇の華たち (文春文庫)感想
乙川さんのお話は、必ずしもハッピーエンドではなく、どちらかというと暗くて陰鬱な印象を与えられるものもあります。でも読み終わってみるとどの話も気持ちに区切りをつけて一歩踏み出そうとしているのが救いです。一つ読むたびにどうしても時代に反発を感じてずにはいられず、読んでいて辛く投げ出したくもなりました。そんな思いをしながら読み終わった6編。好みは読後の優しい「悪名」その後を信じたい「冬の華」。でも一番印象的だったのは「笹の雪」のどうしようもない情けなさだったりします。
読了日:9月20日 著者:乙川優三郎
暗礁〈下〉 (幻冬舎文庫)暗礁〈下〉 (幻冬舎文庫)感想
二人の距離感が微妙に変わってきている気がします。二宮も余計なこと(?)を言うようになったりして強くなっているんではないかしら。結果としては相変わらずですが。刑事の中川も、便所コオロギセツオもいい味を出していて楽しいです。桑原のファッションもですね。しかし、桑原は今回こそ危なかった…主人公が死ぬわけないとわかっているから楽しんで読めますが、嶋田さんにご登場願って見つけた場所には驚きました。嶋田さんも本当に渋くてイイ男です。思いっきりキャラ読みの感想になってますが、ちゃんと内容も楽しんでます(多分)。
読了日:9月19日 著者:黒川博行
暗礁〈上〉 (幻冬舎文庫)暗礁〈上〉 (幻冬舎文庫)感想
二宮さん、イカサマ麻雀の代打ちなんて引き受けちゃって、そんなん無事で済むわけないじゃん、と最初に突っ込みを入れましたが案の定…。あれだけいろいろな目に遭ってきていてもなぜか変わりません。学習しないのか、それだけお金が魅力なのか…。決して桑原が怖いだけじゃないと思うのですが。絶対真面目に働いた方が儲かると思います。話は現実に起きた宅配業界の事件が下敷きになっているようです。バタバタと今回も一気読みで下巻へ。
読了日:9月19日 著者:黒川博行
時の罠 (文春文庫)時の罠 (文春文庫)感想
すごい豪華メンバーです。辻村さんのは最初母親の立場で父親の言動にイラつきましたが読み終わってみるとさすがという感じですし、万城目さんのも作者らしい世界観で楽しめましたが、期待が大きかったのか強烈なインパクトはなかったです。一方、何やらわけのわからない状況で始まった米澤さんのは、「時」の使い方に驚きました。いろいろな意見があるみたいですが私はこれ、大好きです。湊さんのは、子供たちの残酷さは相変わらずでもラストは意外にも…。らしくないのかもしれませんが私はこのタイプの方が好きですね。どれもとても良かったです。
読了日:9月18日 著者:辻村深月,湊かなえ,米澤穂信,万城目学
怪談えほん (7) おんなのしろいあし (怪談えほん7)怪談えほん (7) おんなのしろいあし (怪談えほん7)感想
正統派の怖さですね。最後まで読んでじわじわと怖さが伝わってくる感じです。つまらない意地や好奇心で踏み込んではいけないところに入ってはいけません。おばけを馬鹿にしてはいけません。ぺたぺたという擬音を加え、寺門さんの描くしろいあしが怖さだけでなく妙な艶めかしさも運んできます…がそれは私が大人だから思うのであって、子供が読んだら純粋に相当怖いでしょうね。
読了日:9月17日 著者:岩井志麻子
誰か―Somebody (文春文庫)誰か―Somebody (文春文庫)感想
近距離ですが自転車で通学する娘を持つ親としては、きっかけの自転車ひき逃げ死亡事故は、なかなかきつい恐ろしい部分です。主人公の三人家族の優しい雰囲気は素敵ですが、彼の実家との確執は読んでいてつらいし、なおかつ事件の謎を追って明らかになっていくことが思いがけなくかなり重いものでびっくりしました。そのうえ知らなくてもいいことを知ってしまった最後の後味の悪さときたら…。どこか悪いというわけではないのですが、とにかくもう少し楽しく読みたかったというのが正直なところです。シリーズのこの後に期待します。
読了日:9月15日 著者:宮部みゆき
双月城の惨劇 (光文社文庫)双月城の惨劇 (光文社文庫)感想
気になっていたのですが機会がなく…手に入れたときは訃報を聞いたときでした。思いっきり本格の古典ミステリ。どうも既視感があると思ったら、元はカーのバンコランのパスティーシュだったそうで、そのまま置き換えても違和感がありません。ああ、ミステリを読むってこういうんだったなと思い出させてもらえるようなガッツリ本格の密室とか密室とか密室とか…。ちょっと冗長に感じる部分はありますがよく練られていてトリックには感心します。ただ結末は私も、えっ?となりました。残念ながらもう作品は増えないのでゆっくり続きを楽しみます。
読了日:9月14日 著者:加賀美雅之
オー・ヘンリー傑作選 (岩波文庫 赤 330-1)オー・ヘンリー傑作選 (岩波文庫 赤 330-1)感想
過去にいくつか読んだものがありました。当時素直に感動するより皮肉を感じてしまった私ですが、今回こうして短編集の形で読んでみると、独特のウイットに富んだユーモアとちょっとしたもの悲しさがこの短いページに綺麗にまとまっているのを感じ、純粋に楽しむことができました。好みは「マモンの神とキューピッド」「緑のドア」「二十年後」「改心」「千ドル」。これらはいくらでも感想が書けそうで何度も読み返したいです。そして時々現れる美しい言葉に原文がどうなっているのかとても興味が湧いてきました。
読了日:9月11日 著者:オー・ヘンリー
国境 (講談社文庫)国境 (講談社文庫)感想
最初はちょっと冗長な感じがしたのですが、2度目の渡航あたりから一気に引き込まれページをめくるのがもどかしいほどぐいぐいとラストまで読み進めました。いくら闇世界のお話でもありえない、滅茶苦茶だなあ、と苦笑しながらなのですがこのページ数をラストまで一気に読ませるリーダビリティはさすがです。本当に現地で取材をされていたと読後知り、きっと現在も現地はこの詳しい描写と大差がないのだろうと悲しくなりました。二人の微妙な距離感と信頼度が何とも言えず好きです。ラスト1頁の描写で貰った優しい読後感にとても嬉しくなりました。
読了日:9月9日 著者:黒川博行
死ぬまでに行きたい! 世界の絶景死ぬまでに行きたい! 世界の絶景感想
図書館でお借りしてすぐ、娘がとても気に入って長い間見入っていました。私としては、もともとが著者がお撮りになったものではなくネットにアップされていたものという性質もあるかと思いますが、写真の美しさが想像以下だったのが残念です。高解像度のものをPCなどで画面いっぱいに見る方がやはりいいですね。facebookを遡るのは大変なのでまとまっているのは嬉しいですし、行き方や予算、注意点まで載っているので本当に訪れてみたい人には参考になると思いますが、私は死ぬまでに行くのは難しいので…。日本編を見てみようと思います。
読了日:9月9日 著者:詩歩
神鳥―イビス (集英社文庫)神鳥―イビス (集英社文庫)感想
イラストレーターとバイオレンス作家が夭逝した画家の描いた「朱鷺飛来図」の謎を追います。2枚の違った絵に見えるというこの絵の描写が物凄くリアルで本当に怖いのです。彼らは画家の足跡を追い、迷い込み、朱鷺の因縁と怨念に追われるのですが、モノトーンの世界の中にポンと入ってくる朱鷺のピンク色がおどろおどろしく一気に読まされてしまいました。鳥の嘴や爪がトラウマになりそうです。二人のキャラも良かったし、これで何もかも終わったわけではないというラストも悪くないです。ただもう少しこの先も読ませてもらいたかった気はします。
読了日:9月7日 著者:篠田節子
マスカレード・ホテル (集英社文庫)マスカレード・ホテル (集英社文庫)感想
連続殺人の捜査と防止のために警察官がホテルマンとして潜入。警察官新田のふてぶてしさが最初好きになれなかったのですが、言われてみればこれほど相手に対して別の感情を持って接する仕事もないですね。彼が凄い勢いで成長していく様子が読んでいてとても気持ちよく、ホテルマンとしての在り方や二人の距離感も読んでいて楽しかったです。最後まで読むと、こんなにもあからさまに伏線が目の前にあったとわかりますがそれを変に気にさせずに最後まで一気に読ませてしまう東野さんの筆力に驚かされます。実は有能な能瀬さんの今後も気になりました。
読了日:9月5日 著者:東野圭吾
満願満願感想
6つの短編ですが、とにかく上手いと思います。「夜警」のぞわっとした恐ろしさに始まり、どの話も背筋がすっと寒くなる読後感を運んできます。特に「万灯」が読みごたえがありなおかつラストも秀逸。「満願」の伏線の張り方も見事です。「柘榴」だけは既読で、その時はよくできているけれど好みではないという感想を持ちましたが、今回改めて読むとこの情景が恐ろしくも透き通ってなんだかとても美しかったのです。自分の感じたことの変化に驚き思わず読み返してしまったほどでした。6編すべて外れなしの完璧なミステリで、とても良かったです。
読了日:9月3日 著者:米澤穂信
幻想日記店 (講談社文庫)幻想日記店 (講談社文庫)感想
日記堂ファンタジーをそのまま文庫化ではなく、シリーズを意識して大幅改稿されたそうです。前2作とは少し雰囲気が違います。改稿によってできた郵便局とのリンク、特に気になっていた彼の秘密が明かされたり、とある彼女の日記と思われるものもあって楽しかったです。日記は確かに誰にも見せない前提のもので上手いところに目を付けたなと思います。古典や言霊の解釈が想像を超えて面白かったです。設定もメインのストーリーも悪くないと思うのですが相性が悪いのか前2作に比べ私には読みづらかったのが残念でした。
読了日:9月2日 著者:堀川アサコ
ルクエで3分弁当本ー簡単で旨い弁当レシピ厳選84 (TWJ books)ルクエで3分弁当本ー簡単で旨い弁当レシピ厳選84 (TWJ books)感想
出番の少ないペティートがお弁当に活用できないかと図書館で。「簡単で旨い弁当レシピ厳選84」とのことで、レシピ通りに作れば簡単に美味しくできるのは確かだと思います。ですが3年間毎日弁当を作り続けてきた私にはどのやり方も小さいフライパンと鍋二つを使って三口コンロでパパッと調理するより便利だとはとても思えませんでした。調理初心者さんならなおさらレンジは一度に一つの調理しかできませんし洗う手間もあり使いにくくないでしょうか。逆にお弁当以外の方が使えるかもしれません。特別変わったレシピもないので私は購入はないです。
読了日:9月2日 著者:小嶋貴子
キング&クイーン (講談社文庫)キング&クイーン (講談社文庫)感想
元SPの女性が引き受けた天才チェスプレイヤーの警護。最初は少し読みづらい部分があったのですが、現在と過去を行き来する話の作りに慣れてくるころにはしっかりとのめり込み畳みかけるような後半の展開に一気に流されて最後まで読んでしまいました。暗黙の連係プレーがすごく楽しかったです。例の部分は全く気付かなかったので驚きましたが、元SPの女性も天才チェスプレイヤーたちの逸話もとても魅力的に生き生きと描かれている分、結末が薄く感じてしまったのが残念でした。でも楽しめましたので「ナイト&シャドウ」も読んでみたいです。
読了日:9月2日 著者:柳広司
パラドックス13 (講談社文庫)パラドックス13 (講談社文庫)感想
状況がわかってくると楳図かずおさんの漂流教室が重なりました。現代の東京ですが天変地異も相まって状況はどんどん過酷になっていきます。現実世界の価値観が通用しない世界で誠哉の言う年配者を敬うということの意味が印象的でした。実際に何が起こってこんなことになったのか、そして最終的にどうなるかをとにかく知りたくてぐいぐいと引っ張られるように寝る間も惜しんで読み切ってしまいました。ラストは河瀬の状況だけが一回読んだだけでは理解できず何度か読み返しました。理解できたときは衝撃でした。しっかりと計算された世界に脱帽です。
読了日:8月30日 著者:東野圭吾
きのう何食べた?(9) (モーニング KC)きのう何食べた?(9) (モーニング KC)感想
小日向さんの食材を使った料理は新鮮でした。こんなときでもないと高級食材をシロさんが使うことはなさそうですね。呼ばれてささっと料理をしてしまう佳代子さんが素敵です。シロさんはまた一つ年をとりましたが老眼鏡に両親の介護と私も他人事ではありません。「今お母さんに聞いておきたいことってある?」と母親に言われておにぎりと肉団子のレシピを聞くシロさんに苦笑しました。さて今回はタブチくんのカルボナーラがパンチを繰り出してきます。小豆で炊いたお汁粉も懐かしい!やっぱり大事な人と一緒に頂く食事が一番美味しいのです。
読了日:8月28日 著者:よしながふみ
ちっぽけな恋 珈琲屋の人々ちっぽけな恋 珈琲屋の人々感想
前作と同様に行介が問題に関わりますが、訪れる客が抱えている問題は前作よりドロドロしたものになっている気がします。行介が関わることで事態は収束に向かうのですがそれぞれが迎える結末が必ずしも明るいものではなかったり、その後を読者にゆだねられたりと後味が良くないものも多かったです。子供が犠牲になる話は読んでいて本当に辛いです。最終話の「指定席」のラストもえっ?こんなところで…という感じでした。こんな終わり方はして欲しくなかったです。気持ちの良いラストにつながる続編が出ればいいのですが、どうなんでしょう。
読了日:8月28日 著者:池永陽
書店ガール 3 (PHP文芸文庫)書店ガール 3 (PHP文芸文庫)感想
理子は強くなりましたね。亜子の自宅へ歩いて帰れるという執着は同じ母親としてよく分かります。最良の選択をしたことが嬉しいです。今回は震災にスポットを当てていますが、被災者でなくても住んでいる場所によって受け取り方や思い出すことが全く違うという当然のことにハッとしました。忘れちゃいけないが思い出したくない、でも本にしておけば安心して忘れることができる、という言葉がとても深く印象的です。沢村を泣かせた理子の一言もとても重かったです。読まなくてはいけないとは思うのですが震災を扱った話を読むのは私にはまだ辛いです。
読了日:8月27日 著者:碧野圭
下戸は勘定に入れません下戸は勘定に入れません感想
題名と表紙絵からの想像と比べて中身が意外と暗い(主人公が自殺願望のある50歳准教授だし。)ので最初は少し戸惑いました。でも初期作品を思わせる西澤さんらしいミステリとSF的要素が混在している作品で、いつもの通りこのSF的事柄が起こるルールがきちんとしていて、普通にミステリとして軽く楽しんで読むことができました。連作短編のような顔をしていますが全体でほんの数日間の綺麗に繋がったお話です。伏線もしっかりしてますし後味も悪くないです。「もしくは尾行してきた転落者の謎」がちょっと他の章と違って切なくて印象的でした。
読了日:8月27日 著者:西澤保彦
リップステインリップステイン感想
ストーリーや謎解き、伏線の回収にさらにちょっとした仕掛けなど、この作家さんらしさは健在です。映像科の学生をメインに話が進んでいくところも同様です。しかしながら他の作品に比べてストーリーに入り込みにくく読み難さを感じていました。途中でファンタジーというかオカルトっぽい部分が出てきて納得しましたが。そのあたりが私の読みたかったものとは違ったからだと思います。決してどこか悪いとかではなく、むしろ良く計算されているとは思うのですが、人は選ぶ気がします。その後がとても気になりますが続編があるのでしょうか。
読了日:8月26日 著者:長沢樹
虚ろな十字架虚ろな十字架感想
読後「虚ろな十字架」という題名と表紙絵にずしりと重いものを受け取らずにはいられません。プロローグを気にしながらも、「死刑廃止という暴力」と「死刑は無力だ」というどちらも納得できる思いに揺さぶられながら読みました。小夜子が懸命に答えを探した結果がスイッチを押したと思うと本当にいたたまれないです。償ってきた年月を思っても、花恵のラストの叫びがそれはあなたが言うことではないし言ってはいけないだろうと、とても悲しくなりました。誰にでも納得できる答えなどどこにもない。残ったのは言いようのないやるせなさです。
読了日:8月25日 著者:東野圭吾
珈琲屋の人々 (双葉文庫)珈琲屋の人々 (双葉文庫)感想
珈琲屋のマスターは昔その珈琲屋で人を殺めたことのある行介。そこに集う商店街の人々に彼が「人を殺した手」で入れる熱々の珈琲。出戻りの冬子を始め集う彼らはそれぞれ事情を抱えていて…。かなり大人のほろ苦い切なさと温かさ、でも逆に受け止めかねる重さもあって読むのが辛い部分もありました。心に刺さってくる言葉が必ずしもマスターから発せられるものではないことも印象的です。ただ事情があっても周りが殺人を軽く扱いすぎの気がします。でも気になる部分があってもこの後の彼らが気になるので続編も読んでみたいと思います。
読了日:8月24日 著者:池永陽
はやく名探偵になりたい (光文社文庫)はやく名探偵になりたい (光文社文庫)感想
短編集でした。今回は事件に関わるのは基本鵜飼探偵と戸村くんのみ。短編のせいか鵜飼探偵は冴えていてあっという間に綺麗に事件の真相に迫っています。好みは「藤枝邸の完全なる密室」の思いがけないアプローチとラストの展開。「七つのビールケースの問題」も伏線も謎解きも見事でさらに犯人追跡のドタバタに大笑いしました。「宝石泥棒と母の悲しみ」は何かあると気づいていたのですがまさかの展開で驚きました。長編のシリーズ特有の笑いも楽しいのですが、ピリッと締まった短編集もいろいろな味が詰まっていてとても良かったです。
読了日:8月23日 著者:東川篤哉
ウィンター・ホリデーウィンター・ホリデー感想
スピンオフを読んで「ワーキングホリデー」とともにこちらも再読。大東はいいキャラだなあと最初から思っていましたがスピンオフを読んでからだとさらに厚みが増しますね。再読だと登場人物の小さな一言にハッとしたりします。とくに大和が少しずつ、でもきちんと父親になっていくところがとても印象的です。「でも、今だけは。もうちょっとだけ、ガキのままでいやがれ。頼むから。」
読了日:8月23日 著者:坂木司
ワーキング・ホリデー (文春文庫)ワーキング・ホリデー (文春文庫)感想
単行本では既読。スピンオフを読んでまた彼らに会いたくなり今度は文庫で。みんなが一生懸命で優しくて、このシリーズ本当に好きです。最初は現実味が薄いなんて思ったりもしましたがこれは斜に構えて読むような本じゃないです。文庫版には、「ワーキングホリデー」「ホテルジューシー」「先生と僕」の単行本刊行の際初版限定で書き下ろされたプレゼント作品「ホリデーとホテルと僕」の一部が収録されていました。他の2作品の文庫版も読んで楽しみたいと思います。
読了日:8月23日 著者:坂木司
ホリデー・インホリデー・イン感想
ホリデーシリーズのスピンオフ。大和以外の視点でいろんな時系でそれぞれの時間が語られます。衝撃だったのは大東が断れない人である理由。雪夜は彼視点になっても印象そのままです。ナナの過去は想像以上ですが現在の状況がわかるのが嬉しく、またジャスミンの器にもあらためて感激します。進がクラブに現れるまでの話、大和とジャスミンの出逢いもすごく良かったです。シリーズのこれだけで読めないわけではありませんが、それでは勿体ないです。時間が経って忘れてしまった方も、是非前2冊を読んで思い出してからどっぷり浸ってください。
読了日:8月22日 著者:坂木司
御子を抱く御子を抱く感想
新興宗教というわけではなく、カリスマ性を持ったある人物を慕い集う人々。本人星川はすでに亡くなっていて彼の三回忌のある事故を機会に事件が起き始めます。ストーリーは石持さんらしいと思います。それほどまでに皆を惹きつける星川の納得できるエピソードが物足りないのと、犯人が動機からも想像しやすいことであっさりした感じを受けますが、それでも最後の一気に真相にたどり着くスピード感を楽しめました。皆がいろいろな仮説を出して潰していくところも悪くなかったです。切れ者の探偵役がとても清々しく好感が持てました。
読了日:8月19日 著者:石持浅海
猫弁と魔女裁判猫弁と魔女裁判感想
百瀬が猫弁ではなく、強制起訴の指定弁護士として法廷に立つことになり、事務所を離れて奮闘します。その間の亜子、七重、野呂さん、テヌー。たくさんの百瀬を理解してくれる人たち。これまでの4冊があったからこその思いがギュッと詰まった一冊でした。ラストは思いがけなくドキドキしました。エピローグ直前の亜子の一行のセリフがとても印象的です。シリーズ5冊しっかり楽しませてもらいました。数年後の二人や事務所も覗いてみたいです。
読了日:8月17日 著者:大山淳子
伊藤くん  A to E伊藤くん A to E感想
伊藤くんと関わった5人の女性の連作短編。少しずつ重なっていて読みやすいのですが、この伊藤くん、本当に腹立たしいのです。なんでこんな男に執着するかなあ、と思いながら読んでいるのですが嫌だと思いつつ女性たちにどこか共感できる部分があるような気がするのに気づき自分にも腹立たしかったりします。ただEの矢崎莉桜パートだけはちょっと違いました。理解できない上に怖かった…。ちゃんと女性たちが彼を踏み台にして(?)変わっていくのにほっとします。なのに伊藤くんが同じステイタスのままで最後はむしろ感心してしまいました。
読了日:8月16日 著者:柚木麻子
蜂に魅かれた容疑者 警視庁総務部動植物管理係蜂に魅かれた容疑者 警視庁総務部動植物管理係感想
警視庁総務部動植物管理係シリーズ2作目。今回は長編ですが、須藤警部補薄巡査ともに前作より性格がデフォルメされていると感じました。特に薄巡査との言葉遊び的部分は楽しかったのですが少ししつこく感じてしまったのが残念です。ストーリーは蜂に関する薀蓄が大変勉強になり恐怖も感じながら読み進めました。薄巡査の知識は本当にすごいです。ギヤマンの鐘も絡んで最後まで一気に読まされてしまいましたが事件自体はあっさり目でした。新顔の田之倉刑事がいい味を出しているので是非彼も含めてシリーズの続きをお願いしたいです。
読了日:8月15日 著者:大倉崇裕
ST 警視庁科学特捜班 エピソード1<新装版> (講談社文庫)ST 警視庁科学特捜班 エピソード1<新装版> (講談社文庫)感想
なんとなく見たドラマがキャラの個性がものすごく強くコメディのようだったので逆に原作に興味が出てきて手に取ってみました。原作も個性の強いキャラでどちらかというと原作の方が好きですがドラマも悪くないです。でも先に原作でイメージができていたらドラマは受け入れられなかったかもしれず、どちらも別の形で楽しめそうで今手に取って良かったのかもしれません。シリーズの一作目だからか人物紹介がメインのようですが、細かいことを気にせずサクサクっとテンポよく楽しんで読むことができました。シリーズの続きも是非読んでいきたいです。
読了日:8月14日 著者:今野敏
天の梯 みをつくし料理帖 (ハルキ文庫)天の梯 みをつくし料理帖 (ハルキ文庫)感想
発売日からほんの数日遅れただけですが、登録されている人の多さにこのシリーズがどれだけみんなに愛されてきたかがわかります。発売が待ち遠しい反面読むのがこれほど勿体ないシリーズもなかったです。最終巻一冊、しっかりと楽しませていただきました。あれもこれも伏線だったのかと驚くほどのあまりにも綺麗なラストにため息をついたあと、さらにとじ込まれた最終ページの一枚に感嘆しました(これから読む方は先に見ないでね)。特別編、楽しみにお待ちします。
読了日:8月12日 著者:高田郁
晴天の迷いクジラ (新潮文庫)晴天の迷いクジラ (新潮文庫)感想
生きることに疲れてしまった三人それぞれのそこに至るまでの日々が読んでいてとても辛かったです。彼らの母親の行動はとても重く子供たちが可哀想で泣きたくなりました。正子の母親は既に病気だと思うし母親に寄り添う父も間違っていることは明らかなのですが、それでも自分自身が母親という立場なので、彼らの行動が全く理解できないというわけでもないことがとても辛いのです。「生きる」ことはとても難しい。でもとにかく「死なない」こと。正子が最後にきちんと言葉にできて本当にほっとしました。鯨の薀蓄にも考えさせられるものがありました。
読了日:8月11日 著者:窪美澄
おしまいのデート (集英社文庫)おしまいのデート (集英社文庫)感想
デートにまつわる短篇集。恋人同士のデートではないデートのお話は、それぞれさらっと読めるのにふわりと優しさを運んでくれます。中でも「ランクアップ丼」にはやられました。想像できていてもこのラストは反則です。「ファーストラブ」ではデートに誘われたほうがぐるぐるするのに誘った方は最後まであっさりのところに思わず笑みがこぼれました。おしまいは新しい出発。貰える少しの切なさとたっぷりの優しさに、解説の「上質な薬膳スープ」の表現がぴったりだと納得しました。
読了日:8月10日 著者:瀬尾まいこ
雨降ノ山 ─ 居眠り磐音江戸双紙 6 (双葉文庫)雨降ノ山 ─ 居眠り磐音江戸双紙 6 (双葉文庫)感想
納涼船の護衛、老人を騙して虎の子をむしり取る不届きものの征伐、そしてメインは今津屋の女将さんの里帰り。磐音も幸吉も本当に情に篤く一生懸命で、惹きつけられずにはいられません。大山詣での磐音には目頭が熱くなりました。釜崎との決着がちょっと意外。今後の伏線でしょうか。ラストの偽の大判が繋がっていくものに驚かされましたが、これもこれでお終いなのかしら?ちょっとあっさりの気もしますが毎回切りのいいところで締めてくれるのでのんびり追いかけられるのがありがたいです。
読了日:8月10日 著者:佐伯泰英
5分で読める! 怖いはなし (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)5分で読める! 怖いはなし (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)感想
5分で読めるということなので本当に隙間時間で読もうとしていたら思いがけずに本当に怖かったのでびっくりしました。5分程度と甘く見ていてすみません。柚木さん、中山さんはどっしりとした上手さで安心して読めます。平山さんは2編とも短編でもしっかり彼らしいお話で読後の余韻がすごいです。真梨さんのタイプはある意味彼女らしいのでしょうが私はあまり好きじゃないです。初読み作家さんで印象的だったのは倉狩聡さんの「美術室の実話」林由美子さんの「喉鳴らし」。収録されている他の短編もよかったので他の作品も読んでみたくなりました。
読了日:8月10日 著者:
誰の墓なの? 〔ハヤカワ・ミステリ文庫〕誰の墓なの? 〔ハヤカワ・ミステリ文庫〕感想
依頼した庭師が自宅の花壇から死体を2体も掘り出します。主人公が驚いたのは死体が見つかったことではなく、その死体が自分が埋めたものではなかったから…。ブラックサスペンスではありますが、いろいろな人物の思惑が絡んだドタバタコメディでもありラストの展開はスピード感もあり一気に読まされてしまいました。表紙絵の名犬テッサ視点がとても愛らしく事件に対してもいい働きをします。訳や視点の切り替え、話のメリハリやエピローグなど読みづらかったりもう少しと思う部分もありますが、テッサの愛らしさが全部持って行ってしまいました。
読了日:8月9日 著者:ジェイミー・メイスン
冷たい太陽 (ミステリー・リーグ)冷たい太陽 (ミステリー・リーグ)感想
初読み作家さんです。300頁以上ありますが登場人物の会話だけで進む部分が多く、そこはページの下半分が白紙のような状況でさらさらとどんどんページをめくってしまいます。そのためあまり考えずに一気にラストまで到達し、謎解きをされて初めてちゃんと伏線があったんだと気づくような状況でした。ミステリとしてきちんとしていて仕掛けもありますがそんな感じだったので驚きはあまりなかったです。これだけ短時間に読めてしまうと単行本1800円は勿体ない気がします。著者の作品は他に有名なものがあるようなのでそちらを読んでみたいです。
読了日:8月7日 著者:鯨統一郎
日本のお守り―神さまとご利益がわかる日本のお守り―神さまとご利益がわかる感想
テレビで紹介されていたので興味を持ったのですが、これが意外と面白かったです。県内でも知らないものがあり、行って買ってみたくなりました。旅行に行くときなども参考になると思います。静岡の実家には小さいころから祝鯛が飾られ(時々新しいものになった)ていましたが、当然のように見ていたそれが静岡を代表する縁起ものだったことも初めて知りました。トカラ列島の「ボゼ」という神様にもびっくり!日本とは思えない神様の姿形に日本が北から南まで長いことをあらためて感じました。写真が美しいので眺めているだけでも楽しめます。
読了日:8月7日 著者:
致死量未満の殺人致死量未満の殺人感想
15年前の毒殺事件。時効の日にその殺人を告白に来た友との会話に回想のように15年前の描写が入ることで話が進みます。メインのハウダニットはヒントがあるので中盤で想像ができたのですが、それでは終わりませんでした。二転三転していく真相…本当のラストが説明されるとき、あれもこれも伏線だったのかと唖然としました。よくできていると思いますがひとつ…登場人物がなんだか機械的で血が通った感じがしないのが残念です。ちょっととっつきにくい文章の癖のせいもあるのかな。これがデビュー作とのことなので今後の作品に期待しています。
読了日:8月6日 著者:三沢陽一
風ヶ丘五十円玉祭りの謎風ヶ丘五十円玉祭りの謎感想
裏染天馬シリーズの3冊目。短編集のせいなのか、題名が~館の殺人じゃなかったので手に取るまでシリーズであることに気づきませんでした。思いがけず彼が日常の謎に関わってさらさらっと謎を解き明かしています。気になっていた特殊な趣味とか金銭への執着など偏屈な部分がこの本ではとても薄くなっていて読みやすいです(物足りないかも?)。本格の殺人もいいですがこちらも上手くはまりますね。天馬の妹の回があったり、おまけで思いがけない人が出てきたりして十分楽しめました。デビュー作からまだ3作目なんですね。今後も楽しみです。
読了日:8月5日 著者:青崎有吾
まるまるの毬まるまるの毬感想
表紙絵だけでも惹かれます。江戸の小さな菓子店。店は店主と出戻りの娘と孫で切り盛りしているのですが、彼には公にできない事情があり…その出自もあって起きる問題を乗り越えようと頑張る彼らを夢中になって追いました。家族の愛情はもちろんですが、彼の弟との兄弟愛がとても素敵なのです。会話に何度もほっこりしました。全国の銘菓が紹介されるのも材料や作り方が出てくるので具体的に想像できてとても美味しそうです。もちろん一番食べてみたいのはオリジナルの南天月ですが。
読了日:8月5日 著者:西條奈加
アコギなのかリッパなのか―佐倉聖の事件簿 (新潮文庫)アコギなのかリッパなのか―佐倉聖の事件簿 (新潮文庫)感想
全く知らない分野の話なので新鮮でした。主人公は元大物国会議員の事務所で事務員をしている21歳の大学生佐倉聖。ある事情を抱えた彼が大事にされながらも便利にアコギなのかリッパなのかわからない政治家たちに使われて、ちょっとした事件を上手く謎解きして収めていきます。途中出てくるあわよくばうまく立ち回って政治家に、という大学生たちの方がなんとなくありそうですが、そうではない聖に好感が持てました。畠中さんの現代ものは初めて読みましたが特別なインパクトはなくても違和感はなく優しい雰囲気で読みやすかったです。
読了日:8月4日 著者:畠中恵
おかんメールおかんメール感想
私も打ち間違いや変な予測変換って結構やります。直そうとしてうっかり送信してシマッタ!なんてことも。でもこれはそんなレベルでなく、顔の筋肉がおかしくなるほど笑ってしまいました。外出先では読めません!ネット上にアップされたものがほとんどのようですが、子供側から母親への愛情もこのメールを晒して笑うことで伝わってくるのがなんだか嬉しいです。ちゃんとLINEもメールも子供達はしっかり返信してるんですね。中でも町内へ一斉送信された「結婚します」メールが最強でした。ひとつだけその後の気になる怖いメールがあったのが残念。
読了日:8月4日 著者:
五覚堂の殺人 ~Burning Ship~ (講談社ノベルス)五覚堂の殺人 ~Burning Ship~ (講談社ノベルス)感想
今回のテーマとなるフラクタルの薀蓄は綺麗なだけで読みやすいですが数学としての必然性は薄いですね。トリックは凄く分かり易かったり、想像の範疇を超えて、可能なの?って感じだったり。伏線が分かり易いので犯人も同じく。なんだか勿体ないです。今回はどうしてもリスペクトされている某シリーズのトリックと某シリーズのキャラクターを思い浮かべずにはいられなくなりました。綾辻さんと森さんの凄さをあらためて感じます。シリーズとしての話は進んできているので今後どのように展開していくか作者の成長も期待して続きを待ちたいと思います。
読了日:8月2日 著者:周木律
プリズム (幻冬舎文庫)プリズム (幻冬舎文庫)感想
これだけの特殊な設定を、分かり易く一気に最後まで読ませてしまう筆力はさすがだと思いますが…。「実際には存在しない男」との感涙必至の長編恋愛サスペンスということでしたが、夫婦間に事情があるにせよ主人公の聡子が大変身勝手で全く好きになれず、一つの人格との恋云々以前に彼女の恋愛を全く応援する気になれませんでした。しかも恋愛は「理想」の部分とだけだし。なぜ不妊だの不倫だのという設定が必要だったのかもわかりません。ラストシーンも作者がどうしても書きたかったという事でしたが私はあまり好きになれず残念でした。
読了日:8月2日 著者:百田尚樹
二歩前を歩く二歩前を歩く感想
「三階に止まる」と雰囲気が同じ短編集、と思ったら謎解きをしてくれる小泉さんが共通なのでした。不思議なものを相手にするのですが、小泉さんは出来事を論理的にとらえ超常現象としての理屈と説明をつけてしまいます。「発見されていないことと、いないことは同一ではない」として幽霊の存在を理系として否定しないところが印象的です。背筋がぞわっと寒くなる物がばかりかと思っていましたがラストの書下ろしは意外にも後味が優しくて嬉しくなりました。不思議な魅力の小泉さん。話が進むと彼の生活が垣間見れたりするところも楽しかったです。
読了日:8月1日 著者:石持浅海
蟲の神蟲の神感想
ゴーリーの新刊ということで飛びついてしまったのですが、虫が苦手な私は、途中で物語の状況描写に耐え切れず泣きそうになりました。ゴーリーらしい理不尽な可哀想な子供のお話ですが、とにかくこれはそういうわけで今まで読んだゴーリー本の中で一番しんどかったです。…まあ題名と表紙絵見た時点でやめとくべきだったということなんですが。(表紙絵がなんだか変だと思ったら、虫のくせに足の数が!)七五調の訳は相変わらず素晴らしいです。散文訳もあとがきに載っていますし、虫が大丈夫な方は是非ゴーリーらしい世界を楽しんでください。
読了日:7月30日 著者:エドワードゴーリー
聖なる怠け者の冒険聖なる怠け者の冒険感想
「ぽんぽこ仮面」に関わる人々の宵山の一日を描いた森見さんらしい長編でした。著者の世界観が好きな方なら何も考えずにどっぷりと世界に浸かって楽しめると思います。フジモトマサル氏の人物紹介のイラストが妙にツボで世界を補足してくれました。小和田くんの趣味(?)の”「将来お嫁さんを持ったら実現したいことリスト」の改訂”がなぜか妙に印象的です。途中で「有頂天家族」とのリンクに気づき、積読の「宵山万華鏡」を先に読んでおくべきだったか、とちょっと後悔。そちらを読んでからまた手に取ってみたいです。独特の世界を楽しみました。
読了日:7月30日 著者:森見登美彦
「サバを読む」の「サバ」の正体: NHK 気になることば (新潮文庫)「サバを読む」の「サバ」の正体: NHK 気になることば (新潮文庫)感想
NHKの番組「気になることば」からの書籍化→文庫化だそうです。何回か見たことのある番組で楽しんで見ていました。後書きにもありましたが、言葉の正誤やルーツにおいても完全にこうだ、というのではなくこのような説がある、というものが多いですね。良くも悪くもNHKらしいというところでしょうか。扱っていることも意外と知っていたり話題にしたことがあるものが多いのでさらさらっと最後まで読んでしまいました。一つの話題が2ページ程度なので忙しい時の隙間時間に読むのにはぴったりでした。
読了日:7月27日 著者:NHKアナウンス室
お待ちしてます 下町和菓子 栗丸堂 (メディアワークス文庫)お待ちしてます 下町和菓子 栗丸堂 (メディアワークス文庫)感想
よくあるタイプの話なんだろうな、と思いつつ和菓子に惹かれて手に取ってみましたが、思いがけず楽しく一気に読んでしまいました。日常の謎ときというよりちょっとした謎にまつわる人情ものという感じで下町の人々の繋がりが素敵です。ここで終わりなのはせっかくの設定が勿体ないと思っていたら、探偵の彼女に関しての謎がはぐらかされたままなのでシリーズになるのかもしれません。和菓子の細かな制作工程などが出てくるので否応なしに味や香りを想像して本当に食べたくなりました。私も上等な和三盆の干菓子でコーヒーが飲みたいです。
読了日:7月26日 著者:似鳥航一
松谷警部と目黒の雨 (創元推理文庫)松谷警部と目黒の雨 (創元推理文庫)感想
読み始めて文章やミステリの作りがすごく綺麗だと思いました。主人公の松谷警部が、まったり警部と呼ばれるほどなのと、相棒になった白石巡査も常識的なので殺人を扱っているのに殺伐とした感じはなく、すーっと物語が進んでいく感じです。もうちょっとメリハリがあった方が好きですが(実は途中で何度も眠くなって読むのに時間がかかってしまった)最初から見えているところに伏線があったのことに気づかされたり、読み終わってみると綿密に計算されているミステリだと感じました。今作が著者の初読みだったので別作品を読んでみたいです。
読了日:7月26日 著者:平石貴樹
(002)バカボンのママはなぜ美人なのか (ポプラ新書)(002)バカボンのママはなぜ美人なのか (ポプラ新書)感想
辛口ご容赦/題名の勝利なのでしょう。題名に惹かれてうっかり手に取っちゃいました。バカボンのママの件なんて最初と最後にちょこっとだけしか出てきません。嫉妬とは何かという柴門論。女性はこんなだよ、男性はこうなんだよ、と実体験を元に決めつけて分類しています。読んでいて私は全く共感できません。彼女の論理に当てはめると私は嫉妬の面では男性的なのかも。不妊治療も経験してるけどあんな横並びで書かれてもねぇ。普通は周りの妊婦妬むより神様を恨むでしょうよ。柴門さんって東京ラブストーリーのリカみたいに激しい人なんでしょうか。
読了日:7月24日 著者:柴門ふみ
工場工場感想
最初は一段落分、改行が全くない文章が読み辛かったのですが、途中でこれが「工場」内での格差による仕事や扱いを描いた物だとわかってきたら漸く楽しくなりました。正社員、契約社員、派遣社員、と上手く描き分けていて、なかなか面白い試みだとは思います。三話目の「いこぼれのむし」は虫が嫌いな私には描写が読んでいてとても辛かったので虫描写を斜め読みした結果よく把握できず…ごめんなさい。選ぶとしたら二話目の「ディスカス忌」が好みです。でも正直私には合わないタイプのような気がします。とりあえず話題の「穴」も読んでみます。
読了日:7月24日 著者:小山田浩子
9の扉 (角川文庫)9の扉 (角川文庫)感想
リレー短編集とのことですが、次の方を指名してお題を出すという形なので特に縛りがあるわけではありません。一話だけで十分楽しめるのに、ちょっと遊びで前の作品と絡めたりガッツリ設定を引きずったりと本当に楽しいリレーになっていました。バトンを渡すときの一言も楽しかったのですが、アンカーから順に戻ってくるあとがきのリレーもとても良かったです。この作家陣ですからもちろんはずれなし!ラストの重責をきっちり果たした辻村さんに拍手!好みは貫井さんからの歌野さん。鳥飼さんだけは初読みだったので是非他の作品も読んでみたいです。
読了日:7月24日 著者:北村薫,法月綸太郎,鳥飼否宇,竹本健治,歌野晶午,殊能将之,辻村深月,貫井徳郎,麻耶雄嵩
光待つ場所へ (講談社文庫)光待つ場所へ (講談社文庫)感想
単行本とノベルス版では既読です。ノベルスで「アスファルト」が追加されていましたが、文庫版では更に「冷たい光の通学路」が書下ろしされていると聞き、改めて文庫版も手に取りました。読み始めて気づいたのですが、元作品を読んだのがすでに2年以上前。このお話の彼らはもちろん元作品でも重要人物達でしたが彼らに関するエピソードがすでにうろ覚えになっていました。改めて「冷たい校舎~」を引っ張り出しそのエピソードを確認することになり十分楽しめなくて残念。「ロードムービー」にもリンクがあったと思うのでそちらも確認してみます。
読了日:7月23日 著者:辻村深月
疫病神 (新潮文庫)疫病神 (新潮文庫)感想
直木賞受賞作「破門」のシリーズ一作目。普段はあまり手に取らないノワールタイプの小説なのですが建設コンサルタントの二宮と二蝶会のヤクザ桑原のコンビのテンポの良い応酬によくわからないうちにぐいぐい引っ張られ最後まで一気読みしてしまいました。産廃処分場の建設という利権に絡んだ裏社会の経済事情がとても興味深いです。二宮のやたら強いのではなくて痛めつけられながらの駆け引きに苦笑しながらもその信念に惹かれます。桑原のキャラも最高。まさしく題名通りの疫病神(どっちが)。受賞作までコンビを追いかけたくなりました。
読了日:7月23日 著者:黒川博行
セブンセブン感想
7にちなんだ7つの短編集です。ゲームやタイムリープなどのルールは複雑でもきっちりしていて矛盾もありません。登場人物たちの試行錯誤についていくことは頭の体操をやっているようで私は楽しかったのですが人を選ぶ気がします。数学専攻の乾さんらしいお話かとも思いました。勝てる方法と駆け引きを探していくお話ばかりですがスピード感ある展開の「TLP49」がとても好きです。ラストの「ユニーク・ゲーム」だけは必勝法を理解するより先にラストに何が起こるかだけは想像がついてしまい、その通りだったのが残念でした。
読了日:7月21日 著者:乾くるみ
ふがいない僕は空を見た (新潮文庫)ふがいない僕は空を見た (新潮文庫)感想
登場人物はみんな「ふがいない」かもしれない。でも彼らは決して特別ではないのでしょう。ほんの少しの弱った心、あるいは心のゆるみやすき間にすっと忍び込んできた誘惑に絶対に負けないと誰が言いきれますか?「セイタカアワダチソウの空」がとても好きです。良太に持っていかれたのはもちろんですが、田岡が自分をとんでもないやつだとわかっていて他で帳尻を合わせようとするところが何とも哀しいのです。普通に生きるのは想像以上に難しい。誰もが「やっかいなもの」と上手く折り合いをつけて生きていくしかないのです。空には何が見えますか。
読了日:7月21日 著者:窪美澄
リビジョン (ハヤカワ文庫JA)リビジョン (ハヤカワ文庫JA)感想
母親が子供を助けるために見えた未来を捻じ曲げようとして起こるパラドックス。前作「リライト」を読んでいることが前提です。その「リライト」のインパクトが強すぎたのでこちらの方がさらにえげつないことになっているのに、さらっと読み進めてしまい後悔しました。正直、しっかりと考えて読んでいないと相当分かりにくいです。ラストを何度か読み返してようやく理解しましたが、シリーズ4部作ということなのでこの一冊は途中の一冊として読むのが正しいのかもしれません。どんな結末が待っているのかシリーズの続きも読んでみます。
読了日:7月20日 著者:法条遥
まだ遠い光―家族狩り〈第5部〉 (新潮文庫)まだ遠い光―家族狩り〈第5部〉 (新潮文庫)感想
膨大な物語をラストまできっちり読ませてもらいました。犯人と動機は予想がついても理解できるものではありませんでした。油井と犯人の結末に少し思うところがありますがそれ以外の全てのキャラの行く末をきちんとまとめてしまったのに感服しました。自分の今の立場から家族というものを考えずにはいられません。拗れるきっかけはどこにでも転がっているものなのかもしれない。どれだけお互いが愛していてもそれぞれが個である以上いつもうまくいくとは限らないのかも。母親の立場として、研司の手のひらとラストの玲子がとても胸に刺さりました。
読了日:7月20日 著者:天童荒太
巡礼者たち―家族狩り〈第4部〉 (新潮文庫)巡礼者たち―家族狩り〈第4部〉 (新潮文庫)感想
思いがけない繋がりなどもあり、目が離せない展開で一気に読まされてしまいました。誰もが一生懸命なのに上手くいきません。でも今回は特にある人物の行動にものすごくイラついてずっと嫌な気分で読み続けました。どうしてこんな風にしか家族と向き合えないんでしょう。彼女は確かに被害者で守るべき人かもしれないけれど、これはちょっと違うと思うのです。女性の方も甘えるにしてもやり方ってものがあるはず。男性目線だと共感できるんでしょうか。前巻からずっとこんな気持ちです。その結果のラストの展開がとても悲しいです。
読了日:7月17日 著者:天童荒太
もういちど生まれる (幻冬舎文庫)もういちど生まれる (幻冬舎文庫)感想
少しずつ登場人物も時系列も重なっている連作短編集です。同じ人物が視点が変わると全く別のことを考えていたり見えなかった事情を抱えていたりと新しい発見があるのが嬉しいです。本当に見事に二十歳前後の若者たちの甘酸っぱさやどうしようもない葛藤を描いていて、この時期をかなり前に通り過ぎた私としてはこの葛藤が眩しいくらいです。瑞々しい文章と言われますが、その表現がこれほど似合う作家さんもいないでしょう。この若い感性に同じ年代として出逢い、堪能できる読者を羨ましく思います。
読了日:7月16日 著者:朝井リョウ
贈られた手―家族狩り〈第三部〉 (新潮文庫)贈られた手―家族狩り〈第三部〉 (新潮文庫)感想
巣藤がケートクとの交流で変わっていくのには好感が持てます。民間相談員の山賀は間違ってはいないのでしょうが不気味でなんだか怖いし、馬見原も最初に持っていた印象とはいろいろな面でかなり違った印象で…。シロアリ駆除の大野を素直に受け止めていいのかも気になります。家族というものは家族だからこそ上手くいかない部分があるのはわかります。綺麗ごとや建前なんて言っていられない。読み辛いことはないのですが、読んでいてイラついたり重苦しかったりする部分があり一気読みをためらって他の本を間に挟みながらゆっくり読み進めています。
読了日:7月16日 著者:天童荒太
まっすぐ進め (河出文庫)まっすぐ進め (河出文庫)感想
日常の謎を解いていく連作短編で、こういうお話は大好きです。でも謎が日常のものにしては少し重いですね。この物語は実は綺麗なラブストーリーでもあります。彼女が隠していることが気になって、一気に読んでしまいました。二人が幸せにまっすぐ進んでいくために、それがたとえ正しい答えでなかったとしても、彼は必要な答えを出してくれるにちがいありません。解説が東川篤哉さんなのですが、鵜飼探偵と朱美の会話で進むショートストーリー仕立てになっていてとても楽しく、得をしたような気持ちになりました。
読了日:7月14日 著者:石持浅海
遭難者の夢―家族狩り〈第2部〉 (新潮文庫)遭難者の夢―家族狩り〈第2部〉 (新潮文庫)感想
登場人物みんながそれぞれ違った問題を抱え、それでもなんとか向き合いもがきながら頑張ろうとしています。ドラマでは現代社会を鑑みて設定を変えているところがありますね。話は登場人物たちを複雑に絡めながら少しずつ展開していきます。途中亜衣がホームレスの病人と出会い、心の中で絞り出すように叫ぶ「地理の先生、どうすんのよっ。」という言葉が印象的でした。ラストにはまたここではやめられない気になる展開が…。脇役の一人だと思い込んでいたある「彼」がここへきてやたら気になってきました。
読了日:7月14日 著者:天童荒太
どんでん返し (双葉文庫)どんでん返し (双葉文庫)感想
もう十数年ぶり、いやもっとでしょうか。本当に久しぶりに笹沢さんの作品を手に取りました。会話だけで成り立っている短編が6編。ちょっと変わった試みです。私はそれほど読みにくいとは感じませんでしたし、すんなり話に入っていけました。しかしながらどの短編もラストまでさらさらと読めてしまい、どんでん返しも想像できてしまってインパクトのあるものはなく残念です。1981年刊行の再販なので刊行当時読めばもっと楽しめた気がします。たくさんのミステリを読み漁ったせいとは思いたくないですが慣れもあるのかもしれません。
読了日:7月13日 著者:笹沢左保
災厄災厄感想
テロなのかパンデミックか。突然起こった謎の集団死。同様の集団死が付近の集落に爆発的に広がっていき、四国は全滅か…。少し前に読んだ「生存者ゼロ」を思い出しましたが、これはラスト近くまで謎を引きずって、得体のしれない恐怖とともに政治家や警察のエゴと頑なさも絡み一気に読ませてくれます。展開もパニック小説ではなくしっかりとミステリです。~堂のシリーズは好みではない方もきっとこちらは読みやすいでしょう。全てが片付いて収束したと思ったとき、更にその先がありました。でもそこまではさすがに想像したくなかったですね。
読了日:7月12日 著者:周木律
幻世(まぼろよ)の祈り―家族狩り〈第1部〉 (新潮文庫)幻世(まぼろよ)の祈り―家族狩り〈第1部〉 (新潮文庫)感想
ドラマの第一話を見たらどうしても原作が読みたくなりました。95年の作品を2003年に時代を踏まえて書き直したのが本作のようです。文庫で5分冊。独立しても読める作品の質を目指したとのことですがそれでも途中一冊読むなんてのは無理でしょう。一冊目のラストの展開でこれでやめる人もいないでしょうし。まだ一冊目は序章なのでしょうね。たくさんの人たちが複雑に関わり合い始めていくところです。実は脆い家族の絆。そして犠牲になる弱者の子供たち。続きが気になり一気にラストまで読みたいところです。
読了日:7月11日 著者:天童荒太
翔ぶ梅 濱次お役者双六 三ます目 (講談社文庫)翔ぶ梅 濱次お役者双六 三ます目 (講談社文庫)感想
シリーズ三作目。安心して読めます。今回思ったのが所作の描写の美しさです。煙管に良く似合った指がすっと伸ばされる様子など、美しい指と手の所作が映像で想像できてため息をつきました。芝居さえできればどんな状況でも構わないと思ってしまう濱次ですが、とうとう周りが放っておかなくなってしまいました。紀十郎、平九郎、そしてもちろん勘弥。脇の彼らがとても素敵で、そろそろ濱次も気づいて少しずつ変わっていくのではないかと思えます。ラストの若かりし頃の香風と仙雀のお話「翔ぶ梅」も良かったです。香風はやはり凄い人です。
読了日:7月10日 著者:田牧大和
笑う怪獣 (実業之日本社文庫)笑う怪獣 (実業之日本社文庫)感想
いきなりの怪獣登場になんとハチャメチャな!と思って読み進めていた一編目ですが、ラストで思わず、あれが伏線だったとは!と苦笑しました。ナンパがきっかけておかしなものに関わる3人組が何とも情けないのですが、読み進めるうちに話はどんどん本格ミステリになっていき、それとともに彼らもどんどん頼もしくなってきていつの間にかしっかりと楽しんで読み進めていました。怪獣の登場が完璧な「怪獣は密室に踊る」とアタルに同情してしまった「書店、ときどき怪人」安楽椅子探偵として秀逸で最終話にぴったりな「女子高生幽霊綺譚」が好きです。
読了日:7月9日 著者:西澤保彦
現代短篇の名手たち3 泥棒が1ダース (ハヤカワ・ミステリ文庫)現代短篇の名手たち3 泥棒が1ダース (ハヤカワ・ミステリ文庫)感想
イベント<ドナルド・E・ウェストレイク誕生日読書会>に参加しました。最初は翻訳が合わなかったのかとても読みづらかったのですが、泥棒ドートマンダーの人となりと必ずと言っていいほど災厄に見舞われることを理解するころにはすっかり世界に入り込んで楽しんでいました。彼は運が悪いだけで頭はいいんですよね。周囲のキャラも立っています。好みはトンネルを掘って銀行の金庫に潜り込んだらそこにいたのは人質だったという「悪党どもが多すぎる」これでもかと災難が次々降ってくる「今度は何だ?」。シリーズの長編も読んでみたくなりました。
読了日:7月8日 著者:ドナルド・E・ウェストレイク
人喰いの家 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)人喰いの家 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)感想
一時話題となった女性芸人と占い師の事件を思い出します。題名と「その家からは出られない」という帯から相当なグロイ描写を想像しましたが、そういう描写はほとんどなく、むしろ主人公の家族内での立ち位置や、最低な母親に憤りを感じそればかり気にしながら読んでしまいました。他にも悲しい家族関係が出てきました。そういうところに彼らは上手く潜り込んでいくのですね。ミステリですが理詰めで説明できない怪奇部分もあり、中盤以降一気に惹き込まれて最後まで持っていかれました。好みは分かれそうですがラストまでよくできていると思います。
読了日:7月8日 著者:塔山郁
赫眼 (光文社文庫)赫眼 (光文社文庫)感想
ノンシリーズのホラー短編集ですが、シリーズの登場人物が出ていてスピンオフでもあるようです。基本、ホラーは平気なのですが、物語として読むから楽しめるのであって、自分に降りかかることを思ったらのんきに楽しんでいられないものですね。表題作のラスト一行で横っ面をたたかれた気がしました。怖かった…。全部で8編ありますが、なんと途中に実話?が4つ挿入されていてそれがまた怖いのです。実は著者のシリーズが積読で腰が引けたのですが皆さんの感想を拝見するとこれほど怖くはないようなのでほっとしています。積読解消しなくちゃ。
読了日:7月7日 著者:三津田信三
怪談 (講談社文庫)怪談 (講談社文庫)感想
小泉八雲の怪談のオマージュで、各話の題名もそのままです。現代風にアレンジしたホラーだと思い込んで読み始めたので理路整然とミステリとして展開するのに驚きましたが原作を綺麗に残し上手くアレンジされていると思いました。印象的だったのは「ろくろ首」の噛みついた首に当たる部分と、原作より執念が強く感じられて不気味で怖かった「鏡と鐘」。他に「食人鬼」のアレンジが好みでした。元のお話を読んでいなくてももちろん楽しめますが、ラストのすっと背筋が寒くなる部分などは原作を知っていた方がより楽しめるのではないかと思います。
読了日:7月6日 著者:柳広司
リライト (ハヤカワ文庫JA)リライト (ハヤカワ文庫JA)感想
「SF史上最悪のパラドックス」だそうです。最初は甘酸っぱい青春ミステリの雰囲気ですがもちろんそれでは終わりません。10年前と現在が交互に現れることで違和感や起こったことに多少想像がついたのですが、畳みかけるように説明されるラストには圧倒され、想像していたことが想像以上だったことにも驚かされました。大事な部分でちょっと突っ込みたい部分があるのが残念ですが最後まで一気に読ませるリーダビリティはなかなかのものだと思います。「時をかける少女」をオマージュされていますが私はやはり西澤さんの初期作品を思い出しました。
読了日:7月4日 著者:法条遥
女子会川柳 (一般書)女子会川柳 (一般書)感想
上手いなぁ、と思えるものが多かったです。面白かったけど本人は面白いより切実な日常だったりしますね。「作品を考えている時間がとても幸せでした」というコメントにちょっと苦笑。「『至急でね』頼んだおまえがなぜ帰る」OL時代、何度こう思ったことか!あっという間に読めるので…2も図書館でお借りします。
読了日:7月2日 著者:シティリビング編集部
迫りくる自分迫りくる自分感想
動物園シリーズのような雰囲気を想像していたので、読み始めて違いに驚きました。自分とそっくりな人が現れて、どうやら強姦の濡れ衣を着せられたらしい。そして始まる逃亡劇。サスペンスミステリの分類でしょうね。でも読んでいくうちに似鳥さんらしいライトな雰囲気も出てきて、どんどん読み易くなっていきました。全くリアリティのない部分もあったりしますがきっと気にしてはいけないのでしょう。結局後半はラストまでぐいぐいと引っ張られ一気読みさせられてしまいました。朴さんや佐伯さんのキャラも良かったし、あとがきも楽しかったです。
読了日:7月2日 著者:似鳥鶏
校閲ガール校閲ガール感想
校閲の仕事はとても魅力的で、やってみたいのですが本好きには残念ながら向いていないようですね。お話はとても面白かったです。お仕事小説としてはできる新人が陥りやすい自分の範囲外のことに手をだしちゃってハラハラしたり彼女がきちんと学んで成長していくのを嬉しく思ったりしました。6人の女子(?)それぞれのキャラがしっかり立っているのが最高です。女子トークは楽しかったしなんだか微笑ましく思えるラストも良かったです。貝塚が想像より残念な人だったのがちょっと意外でした。更にパワーアップする今後の彼女たちも読んでみたいです
読了日:6月30日 著者:宮木あや子
漁港の肉子ちゃん (幻冬舎文庫)漁港の肉子ちゃん (幻冬舎文庫)感想
肉子ちゃん、大好きです。でもきっと彼女のように生きるのはとっても難しい。娘のキクちゃん視点で話が進むので小学校のクラスの女の子同士のいざこざがガッツリ絡んできたりしますがいろいろな経験を経て彼女がきちんと成長していくのがとても微笑ましいです。二宮君もいい味出してます。「かーえそー」の一言でキクちゃんの拘りを溶かしてしまいました。ほのぼのと読み進めた後の、みうとだりあのエピソード。そしてサッサンの叱責。完敗です。満足して読み終えた後のあとがきから伺える西さん自身もとても素敵でした。
読了日:6月29日 著者:西加奈子
スタッキング可能スタッキング可能感想
始めに人物を読み分けようとして失敗し、ABCDがいろんな形で出てくるところでようやく題名の意味が分かりその後はするすると…。女性特有の、男性特有の、ゆとり世代の…もうあらゆる部分で「なんかわかる」「あるある」がありました。題名が秀逸ですね。手法の勝利だと思います。表題作以外も妙にインパクトのある作品で「ウォータープルーフ~」はもちろん、「マーガレットは植える」も「もうすぐ結婚する女」も嫌になるくらい女性を捉えていてやたら印象に残りました。ただこれ、絶対人を選ぶと思います。途中で諦める人も多いでしょうね。
読了日:6月28日 著者:松田青子
ちがうねんちがうねん感想
「どこいったん」がなかなか衝撃だったのでこちらも手に取ってみました。大きなさかなから帽子をとってきちゃった小さなさかなくん。見つからないように一生懸命逃げますが…。私は関西人でないので上手くできませんでしたが、大阪弁のちいさなさかなくんの独り言にいちいち大阪弁で突っ込みながら読むのが正しいような気がします。ラストは身構えて読んでしまったので大きな衝撃はありませんでしたが、それでも文字のないラストの数ページが訴えてくるものは大きいです。やっぱりやってはいけないことをしてはいけません。
読了日:6月27日 著者:ジョン・クラッセン
おじさん追跡日記おじさん追跡日記感想
前作はおじさんたちを分類されていましたが、今回は筆者が特徴のあるおじさん24人に会って彼らを丁寧に紹介しています。きちんとお知り合いを通じて紹介していただく形で出会っていくので取材を受けてくださっているおじさんはみんないい方ばかり。もちろん筆者のなかむらるみさんのお人柄の成せる技もあると思いますが。皆さん人生を楽しんでいらっしゃって、一緒に飲んでみたい気になります。インパクトが強かったのは文芸春秋社の社長。個性のあるおじさんの紹介も悪くないですが、私はおじさんを「分類」してしまった前作の方が好みでした。
読了日:6月26日 著者:なかむらるみ
さようなら、オレンジ (単行本)さようなら、オレンジ (単行本)感想
母国以外の国で暮らすためにその言語を覚えることは絶対条件。これに人種の差別が絡むとどれだけ生きにくいことか。決してフィクションではなくきっとどこにでも同じような人達がいて戦っています。どんな状況でも子供を守るためだったら女は何でもします。どれだけ打たれても悲しいことがあっても強くなければならない。近い現実を知っていると簡単に共感したり感動したりできるものではなかったけれど、ちゃんと前向きに歩ける彼女たちと理解してくれる人達にほっとしました。この物語にオレンジを持ってきたのが印象的ですごく上手いと思います。
読了日:6月25日 著者:岩城けい
ルピナス探偵団の憂愁 (創元推理文庫)ルピナス探偵団の憂愁 (創元推理文庫)感想
少女文庫かららしい作品から始まった前作と違って、今作はショッキングな内容から始まりました。謎解きは完全に彩子から祀島君に移っていて、今作ではミステリ部分より人物像がくっきりと浮かんできます。最後の事件と銘打った一話目から一話ずつ時系列が過去へとさかのぼっていく構成が実に上手く計算されていて、友情を、それぞれの人物の人となりをしっかりと描き切っています。そんな状況からの高校卒業時のラスト。この構成だからこそ伝わってくる美しさと切なさと愛おしさ。短編集ですが手に取られるならぜひ前作から読んで浸ってください。
読了日:6月25日 著者:津原泰水
給食のおにいさん (幻冬舎文庫)給食のおにいさん (幻冬舎文庫)感想
シェフとして成功するはずだった主人公のささめくん。とある事情で一年間給食のおにいさんをやることになりました。彼は自分の持っている常識をぶっ壊されることで自分自身も少しずつ心を開きながら、給食を通じていろいろな問題に取り組んでいきます。子供たちと少しずつ心を通わせて彼自身が変わっていく様子がとても良かったです。栄養士の毛利さんの強烈なキャラもいいアクセントでした。現代の給食というのは昔とは違うんですね。大阪の問題などニュースで見ていると哀しくなります。自校食を頂けるのはそれだけでとても幸せなことなのですね。
読了日:6月23日 著者:遠藤彩見
絵本「旅猫リポート」絵本「旅猫リポート」感想
小説版のあの長さを絵本にするということで、かなり端折ってあらすじみたいな感じかな、と思いながら読み始めたのですが、あらすじだなんてとんでもない、全編ナナの語りにすることで選び抜かれた文章に村上勉さんの絵が補って余りあるほどのナナとサトルを描き出していて、もう一度どっぷりと物語の世界に浸かりました。本当に素敵な挿絵です。絵本でもまた同じシーンで泣いてしまいました。絵本にしては字が多いので児童書の部類かと思いますが、これを読んだ子供たちにはきっと残るものがあると思います。
読了日:6月23日 著者:有川浩
埼玉のおきて サイタマを楽しむための52のおきて埼玉のおきて サイタマを楽しむための52のおきて感想
埼玉ルール、うんちく埼玉、といったご当地本を読んだ後だったので重なっているものが多く、さらさらと読んでしまいましたがこちらの方が細かいかもしれません。おきてごとにおきて1ページ、文章の説明2ページ、最後に漫画1ページ、という形がとても読み易いです。知らないことも多くて、驚いたのはさいたま市の正式表記。「さ」は三画ではなく、二画で書くんですって。あとは方言ですね。「なにげに(実は)うちんち(私の家)って~」なんて東京の若者言葉は埼玉の言葉が伝わったという説も。東京に進出したのかーなんて感慨深かったりします。
読了日:6月23日 著者:
ロスト・ケアロスト・ケア感想
近い将来やってくる日々を当たり前に受け止めて、在宅で介護をやろうとしている自分は空いている穴や介護の何たるかが、わかっていないのだと感じました。逆に自分自身は子供のために必要以上に生きていたくないという気持ちもあるのです。「20年前から分かっていたはずなのに」の言葉がとても重かった。何が正しいのかわからなくなりそうな自分に寒気がしました。ミステリではありますが読んだ人はきっと自分の将来を考えずにはいられないだろうと思うほどメッセージ性が強かったです。
読了日:6月23日 著者:葉真中顕(はまなか・あき)
盲目的な恋と友情盲目的な恋と友情感想
まさしく題名通りのストーリーでした。女の敵は女。これも見事に「女」の嫌な部分を書き込んでいて感心します。ラストの展開なんて意表を突かれたもののわかる気がしてしまうのが何とも苦いです。女性の友情は近すぎるとかえって難しい。これに男性が絡んだらなおさらです。それでも女性読者は共感できる部分もあってそれなりに楽しんでしまうのかもしれませんが、男性はこれを読んで楽しいのでしょうか。黒辻村も好きですが、正直私には長々と行き過ぎたドロドロを読まされだけのようで、楽しむところまでは行かずに残念でした。
読了日:6月23日 著者:辻村深月
新装版 瞬間移動死体 (講談社文庫)新装版 瞬間移動死体 (講談社文庫)感想
旧版では読んでいるはずなのですが余りにも昔でほとんど覚えていなかったので初読のように楽しめました。テレポーテーションできる主人公が完全犯罪を目論むのですが、このテレポーテーション、身一つ(服は脱げる)で飛ぶとかアルコールが要るとか…とにかく設定がものすごくしっかりとできていて笑えます。最後まで読めば事実はそうでしかありえないんですが途中はそんなことを考える余裕もなくアクシデントが起こるんじゃないかとハラハラ読み進めていました。こういう特殊設定や特徴あるキャラの変な愛憎劇の絡む著者の初期作品、結構好きです。
読了日:6月21日 著者:西澤保彦
ここに死体を捨てないでください! (光文社文庫)ここに死体を捨てないでください! (光文社文庫)感想
シリーズ5作目。殺人を扱っていることをうっかり忘れてしまうほどの期待を外さないユーモアミステリです。探偵パートよりも香織と鉄男の弥次喜多コンビパートがありえな過ぎて楽しんでしまいました。しっかり伏線もある本格ミステリにはなっているのですが、今回のトリックは物理的に現実にはかなり難しい気がします。でもラストの映画のような展開といい、いつも通り完璧な計算で綺麗に伏線を繋げて回収していくのに感心します。このシリーズは深く考えずにどっぷりつかって楽しむのがいいんでしょうね。次も楽しみです。
読了日:6月21日 著者:東川篤哉
ボランティアバスで行こう!ボランティアバスで行こう!感想
「恩送り」とは素敵な言葉ですね。震災をエンターテイメントとして扱うのは私にはまだ受け入れ難い部分がなくもないのですが、読み始めて扱っていることの細やかさに驚きました。実際にボランティアとして足を運んだ作者ならではなのでしょうね。いろいろな事情を持った参加者のそれぞれの視点で語られる一日。ひとつひとつをミステリとしてより人間模様として噛みしめながら読んでいきましたが、最終章を読み進めているとき初めて気づき、ヤラレタ!と思いました。凄く良くできています。エピローグがとても優しくて読後感も良く楽しめました。
読了日:6月20日 著者:友井羊
質草破り 濱次お役者双六 二ます目 (講談社文庫)質草破り 濱次お役者双六 二ます目 (講談社文庫)感想
シリーズ2作目。濱次が長屋を移ることになったので、登場人物がかなり増えるのですがキャラクターの書き分けが上手くて誰が誰だかわからなくなることもありません。前作からの登場人物もすぐに思い出すことができました。表紙絵も秀逸ですね。濱次は相変わらずで、時々尻を叩きたくなりますがそれもまたよし。おるいが強すぎてちょっと引いたり豊路が本当に最低でイライラしたりしましたが、そんな状況からでも気持ちよいラストで嬉しくなりました。仙雀さん、先代香風も相変わらずでこの先もゆっくり濱治の成長を見守っていきたいです。
読了日:6月20日 著者:田牧大和
ルピナス探偵団の当惑 (創元推理文庫)ルピナス探偵団の当惑 (創元推理文庫)感想
もとは少女小説文庫に書き下ろしたものだったそうですが、しっかり本格です。視点の女子高生の姉が破天荒な警察官という事情もありますが、高校生探偵団が扱うのは学校内の事件ではなく普通の殺人事件。視点の女子高生が実は探偵役だったのが新鮮でした。探偵視点って珍しい気がします。姉だけでなく探偵団となる友人二人と化石しか頭にない主人公が思いを寄せる祀島くん、姉の上司までキャラは全部個性的で(少し抜けていて)インパクトがあります。これがガッツリ本格なのが嬉しい。特に最終話は最後の一行まで素晴らしかったです。楽しみました。
読了日:6月19日 著者:津原泰水
ランチのアッコちゃんランチのアッコちゃん感想
気にはなっていましたが機会がなく、初柚木作品でしたがとても良かったです。新感覚ビタミン小説という帯は素晴らしいです。本当に元気が出ました。アッコさんが本当に格好よかった。彼女に会ってみたいのはもちろんですが美智子がなんとなく与えられたことをこなすのではなくそこからひとつひとつきちんと吸収してぐいぐいと成長していくところが本当に気持ちよかったです。後半の二話は特に共感するというより元気をもらえる話ですね。私もきちんと前を向いて顔を上げて歩いていこうと思えます。これから柚木さんの他の作品を読むのが楽しみです。
読了日:6月19日 著者:柚木麻子
どこいったんどこいったん感想
読メで教えていただかなければ出会わなかった本。人気のようで図書館予約で4か月も待ちましたが待った甲斐がありました。帽子を失くしたくまさんが、僕の帽子どこいったん?と出会う動物たちに聞いて回ります。関西弁の訳がリズムも作ってほのぼのと読み進められます。ねずみくんシリーズを彷彿とさせるような作りですが、ラストページの長い文章をさらさらと読み…うん?改めてじっくりと読み、目をむきました。叫んでいいですか?
読了日:6月18日 著者:ジョン・クラッセン
([な]9-1)きみはいい子 (ポプラ文庫)([な]9-1)きみはいい子 (ポプラ文庫)感想
母親という立場で読むにはこの本は重すぎます。哀しくて辛くて心が痛くて涙さえ出ません。子供たちをあなたが悪いわけでは絶対にない、と抱きしめてあげたくて仕方がありませんでした。「こんにちは、さようなら」のひろやくんのしあわせの定義が胸に刺さります。子育てに悩んでいるときは客観的に自分を見ることができなくなっているもので虐待こそしませんでしたが私にもどうしていいかわからなくなった経験はあります。私は正しく子育てをしてきたでしょうか。かなり大きくなった娘ですがこれからもきちんと愛していることを伝えていきたいです。
読了日:6月18日 著者:中脇初枝
私に似た人私に似た人感想
確かに、どんなに頑張ってもどうにもならないことはあります。社会のせいだと思うのもわからなくはない。今のままじゃいけないのもわかるし何かしなければいけないけれど何ができるかもわからない。でもどうしても一線を超えていく気持ちがわかりません。罪のない人を巻き込むテロに結び付けるのは絶対に違うでしょう。社会的メッセージを受けてこの中に自分に似た人がいると思うことはちょっとできませんでした。しかしながらミステリとしての要素はきっちりしていて驚かされましたし一気に読ませるリーダビリティはさすがだと思います。
読了日:6月17日 著者:貫井徳郎
埼玉ルール埼玉ルール感想
県民にはあるあるで楽しめますが、全く埼玉にゆかりのない方には何のことやらで全くわからない部分も多いかもしれません。さらっと読めてさらっと楽しめます。笑って納得したのは「基本、北上しない」ですね。人を呼べるようなものは確かにないかもしれませんが、モノづくり県でたくさんの食品やハイテク商品の関連工場があり、農業県でもあり埼玉産の野菜は関東各地に出荷され、最近は大型ショッピングモールなどの出店で都内に出なくても何でも手に入ります。地元愛が薄いと言われますが、私を含め家族も友人たちもみんな埼玉愛してますよ。
読了日:6月17日 著者:都会生活研究プロジェクト[埼玉チーム]
本をめぐる物語 栞は夢をみる (角川文庫)本をめぐる物語 栞は夢をみる (角川文庫)感想
読むのをとても楽しみにしていたのですが、未来の話などのSFやファンタジーがメインでしたので期待していたものとはちょっと違いました。好みは最初の大島真寿美作「一冊の本」。中山七里氏「『馬及び他の動物』の冒険」は、また変わったものを…と思いながら読み進めていったのですが、この長さでちゃんと伏線もしっかりとしたミステリだったので驚きました。やはり上手いですね。紙の本のない未来を描いた雀野日名子作「僕たちの焚書ものがたり」もインパクトが強く、そんな未来に哀しくなりました。ラストの北村薫作「解釈」も面白かったです。
読了日:6月15日 著者:
ケモノの城ケモノの城感想
予備知識なく読み始めたので、途中の描写があまりも凄くて投げ出しそうになりました。あの事件がモデルなんですね。ミステリとしてもちゃんと読めてしっかりできているのだとは思いますが執拗な描写に辟易しました。実際の事件はまた違うしこういうものとして読めばこれはこれでいいのだと思いますが正直私は読まなくても良かった、という感じです。読後あまり考えずに表紙絵(帯下)に戻って思わずびくっとして手を放しました。読後にこれはキツイ。Amazonの表紙絵は私の読んだものと違ってまっさらなタイルですが、変わったのでしょうか?
読了日:6月14日 著者:誉田哲也
ヴァン・ショーをあなたに (創元クライム・クラブ)ヴァン・ショーをあなたに (創元クライム・クラブ)感想
タルト・タタンの続編になりますが今回は少し謎の真相が哀しいものだったり苦いものが混じったりします。三舟シェフが最後に動揺する話は笑ってしまいましたが、この女性は個人的に私は好きになれません。でも美味しいお料理と謎解きに夢中になって読みました。今回はシェフのフランス時代のお話が2編入っていて、もちろん視点も変わるのですがこれがとても良かったです。特に表題作は本当に優しい気持ちになれました。志村さんが三舟シェフに傾倒したきっかけとか、金子さんのお話も読んでみたいので是非続きをお願いします。
読了日:6月11日 著者:近藤史恵
交換殺人には向かない夜 (光文社文庫)交換殺人には向かない夜 (光文社文庫)感想
いつも通りのシリーズキャラを楽しみながら、それぞれの線がどのように繋がっていくのか明らかになっていくことを積み重ねおよその輪郭は見えたつもりでいたのですが…突然騙されていたことに気づき固まりました。これはわからない!もう一つの方も違和感は感じていましたがそれも想像以上でした。なんともよくできていますね。無駄なものが全然ないです。ミステリとしてガツンとやられたのにシリーズものとして笑いはきちんと押さえてあり、楽しく一気に読まされてしまいました。強烈なインパクトを残した彼女はこの先も登場するのでしょうか?
読了日:6月10日 著者:東川篤哉
幸福な生活 (祥伝社文庫)幸福な生活 (祥伝社文庫)感想
1冊に19編の短編なので一つ一つは本当に短いです。それにきちんとオチを付けてしかもラスト一行が全ての短編でページをめくると一行ぽつんと現れるというつくりはさすがです。ただ残念ながら私には読んでいるうちにオチはほとんど見えてしまい、途中から消化試合のように淡々と読み進めることになってしまいました。同じようなテイストの米澤穂信氏の「儚い羊たちの祝宴」がすごく好みだったのでつい比べてしまったのもあります。そんな中印象深かったのは「のこりもの」と「ビデオレター」。一番好きなのは想像できなかった「痴漢」です。
読了日:6月10日 著者:百田尚樹
龍天ノ門 ─ 居眠り磐音江戸双紙 5 (双葉文庫)龍天ノ門 ─ 居眠り磐音江戸双紙 5 (双葉文庫)感想
前巻を読んでからかなり経っていたのですが全く気にならずに一気に物語の続きに入っていけました。とにかく読み易い時代小説です。4巻ではほとんど江戸を離れていた磐音ですが、今回は江戸でのお話。長屋の皆さんを始め、周りの人たちとのいつものやり取りがあるとほっとし、彼らまで含めてのこのシリーズなのだと改めて感じます。奈緒さんとのことは今回は大きな進展はありませんが一つ一つ事件を片付けていきながらも藩にとっての大事な役目もこなし、彼は本当に変わらず頼もしく更に強くなっている気もします。シリーズのこの先も楽しみです。
読了日:6月9日 著者:佐伯泰英
五年の梅 (新潮文庫)五年の梅 (新潮文庫)感想
テレビで紹介されていて興味を持ちました。5編の時代短編。最初の「後瀬の花」はラストの展開に驚きながら読みましたが、2編目の「行き道」が自分が女性であるゆえか生々しくて読んでいて辛く少しも楽しくなかったのでそのまま投げ出しそうになりました。ところがその後の「小田原鰹」「蟹」がとても良かったのです。投げ出さなくてよかった。時代ならではのお話ですが想像させるラストまでじわりと心に染み込んできました。表題作も悪くなかったです。全てが再出発の話だと考えたとき1話目のラストもぐっと心に残るものになりました。
読了日:6月8日 著者:乙川優三郎
タルト・タタンの夢 (創元クライム・クラブ)タルト・タタンの夢 (創元クライム・クラブ)感想
ビストロフレンチという小さなお店の設定がとても素敵です。お店の名前もシェフの風貌まで。とても美味しそうなお料理とその料理にまつわる謎がシェフによってするんと解かれていく様は見事です。謎を解いてもらった方たちそれぞれの先がきっと明るいだろうと想像できるところも好みです。北森鴻さんの香菜里屋を思い出しましたがあちらの方が少しビターで大人な味ですね。こちらはとても優しい気持ちで読ませてもらいました。時間の流れを気にせずゆっくりとコースを頂いて、スパイスとフルーツの香りを利かせたヴァン・ショーを飲みたいです。
読了日:6月7日 著者:近藤史恵
トッカン the3rd おばけなんてないさ (ハヤカワ文庫JA)トッカン the3rd おばけなんてないさ (ハヤカワ文庫JA)感想
ぐー子はしっかり成長していますね。サラリーマン家庭しか知らない私には大見謝家のようなケースがよくあるということに驚き勉強になりました。お金に良い悪いはない。でも差し押さえる時にどこから差し押さえるか考えてくれていることがわかり少し救われた思いです。国家公務員の職務上の守秘義務は知ってはいましたが死体があっても通報できないとまでは思わず驚きました。ラストに明らかにされた鏡特官の気持ちがとても切ないです。彼が救われる日がくるのか、短い期間で異動をしていく彼らなので二人の関係も含めこの後がとても気になります。
読了日:6月7日 著者:高殿円
七つの会議七つの会議感想
場所も人も議題も違う7つの会議。それぞれが全く違うものを議論していながら事態はひとつの事件を炙り出していきます。八角が気になり、新田をひたすら嫌悪し、少しずつ明らかになっていくことに夢中になって一気に読まされてしまいました。登場人物たちの性格の描き分けが抜群に上手いです。同じことに直面しても人によって感じること起こす行動は本当に違うのだとはっきりわかります。ただ、自分がその中に置かれたときどう動くかというのを考えると少し苦い気持ちにもなります。重い話の中ドーナツの話が後味も良くて楽しかったです。
読了日:6月7日 著者:池井戸潤
ないもの、ありますないもの、あります感想
「注文の多い料理書」で知ったクラフト・エヴィング商會。こちらは扱っている商品の目録と言っていいもので、よく耳にするけれど目にしたことのないものが説明とイラストでカタログ形式で語られています。私が印象深かったのは「地獄耳」と「相槌」。欲しいのは「自分を上げる棚」かな。今皆さんの感想を拝見していると気に入ったものや印象深かったものにそれぞれ違ったものをあげられていてなんだかそれも楽しいです。赤瀬川原平氏のエッセイ「とりあえずビールでいいのか」も続きのように楽しめました。
読了日:6月5日 著者:クラフト・エヴィング商會
探偵・日暮旅人の探し物 (メディアワークス文庫)探偵・日暮旅人の探し物 (メディアワークス文庫)感想
目に見えないものを視ることのできる探偵さんが探し物を探してくれるお話です。大きな依頼もあるようですが基本は日常ミステリですね。一話目はふわんと優しく、そっと探偵さんの事情も語ります。2話目以降は少しずつ探偵さんの周辺の個性的な人たちに触れながら、保育士の陽子視点で探偵が探し物をする様子が語られ、彼の不思議な魅力にすっかり夢中になっていたのですが…最終話で突然探偵さんの色が変わって驚きました。彼の過去になにがあったのか魅力的な彼の周りの人たちを含めてこの先が大変気になります。是非続きを読みたいと思います。
読了日:6月4日 著者:山口幸三郎
変身 (講談社文庫)変身 (講談社文庫)感想
人格というもの、その人がその人たるゆえんとはいったい何でしょうか。そして改めて思う脳死とは何かということ。脳の仕組みなんて科学がいくら進んだところで絶対に解明できない部分があるでしょう。脳移植は人類が手掛けてはいけないものでいわば神の領域だという思いを読んでいる間中ずっと持っていました。感じたのは切なさや悲しさよりもこうなることを予想できなかったのかという不快感と理不尽さ。ラストの戦いは読んでいて苦しいほどでした。正直読後考えさせられるというより読み終わったことでようやく解放されたような気がしています。
読了日:6月3日 著者:東野圭吾
片眼の猿―One-eyed monkeys (新潮文庫)片眼の猿―One-eyed monkeys (新潮文庫)感想
明らかにミスリードされているのは分かるのですが真実が何なのかはわからないのです。中盤まで、画面の上半分を隠されたテレビを見ているように見たいところが見えない、下から覗き込みたいのにできないという非常にじれったい状態で読み進めました。ところが後半はあれよあれよという間に気づかなかった伏線までも綺麗に回収されてしまいました。すべてがクリアになってみるとローズ・フラットに住む人々がみなとても愛おしく読後感も爽やかです。ですがテーマは重く、自己を振り返って考えさせられます。また改めてゆっくり読み返したい作品です。
読了日:6月1日 著者:道尾秀介
完全犯罪に猫は何匹必要か? (光文社文庫)完全犯罪に猫は何匹必要か? (光文社文庫)感想
烏賊川市シリーズ3作目です。表紙からしてラノベ風ですし、そこここにギャグ要素が潜んでいるのですが中身はしっかりきっちり本格です。ニャーネルニャンダースのトリックのくだりはちゃんと読者にもわかるように上手く導いてくれていてそれも楽しかったし、笑わせる要素の一つとしか見えていなかったものが実は伏線で事実が明らかになって初めて気づいたりするのも楽しかったです。読み終わってみると題名もちゃんとしてるのがわかって笑えます。シリーズの続きも楽しみです
読了日:5月30日 著者:東川篤哉
波形の声 (文芸書)波形の声 (文芸書)感想
「傍聞き」がとても良かったのでこちらも手に取ってみました。同じように30~50ページほどの短編集なのですがこちらの方が人の心の闇に切り込んでいる印象を受けました。「黒白の暦」や「準備室」などはそれに加えて主人公視点で同じように考えて同じように思いがけない驚きを受けたのでまるで自分自身の心の闇を暴かれたような気がして後味がとても苦いものとなりました。「傍聞き」の方が好みですが、こちらも7編もあるのにどれもちゃんと伏線を回収する謎解きになっていて人々の心まできちんと読ませてくれるところはさすがです。
読了日:5月28日 著者:長岡弘樹
疾風ロンド (実業之日本社文庫)疾風ロンド (実業之日本社文庫)感想
文庫書下ろしだからということもないでしょうが、想像していたよりもかなり軽いタッチです。白銀ジャックに出てきた彼らは相変わらずで好感が持てるのですが、生物兵器を作ってしまった会社の関係者たちがみんな最低で、さらに仕事を任された男は器が小さいし本当にイライラしました。そんな中で子供たちがなかなかいい味を出していたと思います。ラストに伏線がきれいに回収されていき、さらに二転三転する展開は爽快で気持ちよく一気読みでした。東野作品はもっとどっしりしたもののほうが好みですがたまにはこういう軽さも悪くないです。
読了日:5月27日 著者:東野圭吾
漫画・うんちく埼玉 (メディアファクトリー新書)漫画・うんちく埼玉 (メディアファクトリー新書)感想
書店に平積み(県民です)になっていたので読んでみたのですが、これは漫画なのに本当に詳しくてびっくりしました。私は埼玉都民の妻として引っ越してきたので出身が埼玉ではなく、県の歴史や地理的な部分は全く知らなくてとても勉強になりました。中途半端に知っていたことを詳しく知る機会にもなりました。浦和と大宮の確執が大きいのは歴史を考えると仕方ないのかななんてことも思ったりしました。一番びっくりしたのがさいたま市がひらがなになった理由です。埼玉(さきたま)は確かに歴史を考えると行田のものかもしれません。
読了日:5月26日 著者:比古地朔弥
サムライカアサン (クイーンズコミックス―コーラス)サムライカアサン (クイーンズコミックス―コーラス)感想
お気に入りさんが読まれていて気になっていた本です。電子書籍でですが期間限定で一巻が無料だったので試してみました。基本はカアサンと高校生の息子とのやり取りで話が進みますが、この一見アホなカアサンが最高で…。そんなカアサンに育てられた息子もまた素敵なのです。本当に笑えてほっこりするお話です。我が家にも一人娘がいますが気づけば普通に親をうるさがる世代になっていました。難しいことはいっぱいありますし、うまく子育てをしてきたとも思えませんが、それでも私も自分が母からもらった愛情をきちんと娘に受け継ぎたいと思います。
読了日:5月26日 著者:板羽皆
冬空トランス (樋口真由“消失”シリーズ)冬空トランス (樋口真由“消失”シリーズ)感想
シリーズ三作目。時系列の違う3つの話なのですが真由が転校したこともあって登場人物が多すぎて全く思い出せなかったため前2作を再読してから読みました。今回も前2作のネタバレをしないように書かれていますが、前2作の前後だったり重要人物のその後が出てきたりするので順番に読む方がいいと思います。補完的な意味でも楽しめます。やはり読みにくい部分はありますが今回は「消失」シリーズだということをあらためて思い出させられた本格トリックが印象的でした。登場人物をきちんと把握して読むと青春ものだということも改めて感じますね。
読了日:5月25日 著者:長沢樹
夏服パースペクティヴ (樋口真由“消失”シリーズ)夏服パースペクティヴ (樋口真由“消失”シリーズ)感想
3作目を読むにあたって登場人物の復習にシリーズを再読。こちらも一作目と同様にあることがわかっていると登場人物たちの行動の不自然な部分に理由がきちんとついて再読ならではの楽しみ方ができました。ただもし4作目が出たとしてその時私はやっぱり登場人物それぞれの特徴を覚えていなくてまた再読することになりそうな気がします…。前半のまどろっこしい感覚は再読でもそのままで、それも読者を翻弄するのに上手く作用しているのだと思うのですがやはり読み返すのは少し労力が要ります。よくできた本格トリックだと思うので惜しいです。
読了日:5月25日 著者:長沢樹
消失グラデーション消失グラデーション感想
シリーズ三作目を読もうとしたのですが、登場人物が誰が誰でどんな役割だったのか全く思い出せなくて話に入っていけなかったので途中で諦めてこちらを再読することにしました。ラストに明らかになる部分がわかった状態で読むといろいろな細かい部分が違う理解ができて全く別の映像が見えてきます。やはりどうしても粗さは感じてすらすらと読めるわけではないのですが、それでも凄く良く計算されていることがわかり再読ならではの楽しみ方ができました。
読了日:5月25日 著者:長沢樹
砕かれた鍵 (百舌シリーズ) (集英社文庫)砕かれた鍵 (百舌シリーズ) (集英社文庫)感想
一作目から二作目でガラリと変わった美希の印象はまたここでも変わります。三人の複雑な距離間も読みどころの一つですね。今回の事件は前2作と直接つながっているわけではありませんが時系列の関係で前作のネタバレもあるため是非シリーズは順番に読んで欲しいです。いくつかの事件が複雑な絡みを見せ真相がするすると明らかになっていく様は一気に読まされてしまい、読み終わってみると納得させられ無駄な部分もないと感じて感嘆します。でもさすがにラストに起こったことには唖然としました。さてこの先はどんな展開になるのでしょう。
読了日:5月24日 著者:逢坂剛
幻の翼 (百舌シリーズ) (集英社文庫)幻の翼 (百舌シリーズ) (集英社文庫)感想
ドラマを見た後でしたので、キャラがみな俳優さんたちのイメージと声で動き回り凄い勢いで読み切ってしまいました。でもそうでなくてもリーダビリティはさすがだと思います。前作同様血生臭いシーンがたくさん出てきますがそれでもすごく面白かったです。その勢いのままあまり考えずにラストに突入したので真実が大杉の前に現れたとき一瞬なにを言っているのかわかりませんでした。思わず戻って確認してしまったほどです。その後噛み砕いて読むのも楽しかったです。それにしても…ここで?こんなときに?と目を疑ったのは私だけじゃないですよね。
読了日:5月22日 著者:逢坂剛
花合せ 濱次お役者双六 (講談社文庫)花合せ 濱次お役者双六 (講談社文庫)感想
田牧さんの作品を読むのはこれが3作目となります。先に読んだ二作がとても良かったのでこちらも手に取ったのですがデビュー作なので正直あまり期待していなかったのです。ところがこれは驚きました。キャラがひとりひとりとてもしっかり立っていて魅力的で、色のついた情景で浮かんで生き生きと動きます。濱次の踊りの部分など読んでいてゾクゾクしました。ミステリ部分は軽いものではありますが十分楽しめましたし最後の章がまたいい後味を作っています。是非続きを読んで濱次の成長を見届けたいと思います。
読了日:5月20日 著者:田牧大和
注文の多い注文書 (単行本)注文の多い注文書 (単行本)感想
注文すればないものですら取り寄せてくれるという「クラフト・エヴィング商會」。注文書、納品書、受領書という形で小川さんとクラフトエヴィング商會が交代で綴ることで物語が進みます。それぞれのケースが実在する本に関するものとなっているのが楽しいです。印象的だったのはラストが切ない「人体欠視症治療薬」余韻が大きい「冥途の落丁」。実際にクラフトエヴィング商會はテキストとイメージで独創的な作品を作られているそうで、独特の静謐な雰囲気は装丁も手掛ける彼らならではなのかもしれません。是非別の作品も読んでみたいです。
読了日:5月19日 著者:小川洋子,クラフトエヴィング商會
林 修の「今読みたい」日本文学講座林 修の「今読みたい」日本文学講座感想
ほとんど読んだことのある話だったからなのか、途中何度も単語の右肩に現れる*(注釈マーク。解説は真下にあり)が気になってつい下を見てしまうため、リズムが中断されて慣れるまで少々イラッとしました。でもその注釈が必要な中高生や純文学をほとんど読まない方には入門としてとてもいいと思います。林先生がどう読んだかという解説はとてもわかりやすく、自分の解釈と違っているものもありとても楽しかったです。私自身改めてこれだけのものを読むことはなかなかできないのでこれはとてもよい再読の機会となりました。
読了日:5月19日 著者:
貘の檻貘の檻感想
自分自身の現在が危うくなっている主人公と完全には理解できていない過去の事件。途中に何度か挟まれる夢の描写と、時代に取り残されたような村の様子が方言もありおどろおどろしい雰囲気を醸し出しています。そんな中に沢山の伏線が張り巡らされ、ラストに一気に回収していく様は見事で本当によく計算されていると感じました。この作品にも、いくつかの親子関係が紡がれていていろいろな意味で道尾さんらしい作品だと思います。事件の真相と繋がりはなんともやるせないものでしたがラストの数ページが優しく、救われる思いがしました。
読了日:5月18日 著者:道尾秀介
オニキス (ハヤカワ文庫 JA シ 8-1)オニキス (ハヤカワ文庫 JA シ 8-1)感想
ハードディスクに上書きされるように過去が突然書き換えられる世界で記憶保持装置のモニターとなった男。設定だけでも面白いのに、途中で少しずつ雲行きが怪しくなり、翻弄された揚句ふっと自分の現実を確かめずにはいられなくなるほどどっぷり浸かっていました。この表題作「オニキス」をはじめ「神の創造」「猿が出る」「三千世界」までどれをとっても満足いくものです。ラストの「満月」の優しい収束がまた上手いですね。デビュー作とは驚きです。普段SFはあまり読まないのですがこれは素直に面白かったです。今後の作品も楽しみです。
読了日:5月16日 著者:下永聖高
CUT (単行本)CUT (単行本)感想
帯に惹かれて読んだのですが、帯のおかげで逆にいろいろと考えながら読んでしまい変な深読みをしたりいろいろ想像がついてしまったりとちょっと残念な読み方をしてしまいました。純粋に楽しんで読みたかった。しっかりと本格ミステリで物語自体は良く考えられていると思うのですがグロテスクな描写があるのに恐怖が伝わってこなかったり言葉の選び方が若いなあと思ったりミスリードなのか余計なものを感じたり全体に薄い印象は受けました。もう一歩という感じなので今後の作品に期待しています。賞を取られたデビュー作も読んでみたいです。
読了日:5月15日 著者:菅原和也
いつもが消えた日 (お蔦さんの神楽坂日記)いつもが消えた日 (お蔦さんの神楽坂日記)感想
シリーズ二作目。突然消えてしまった「いつも」。両親と姉の姿はなく残されたのは血溜り。当事者である少年が心憎いほどいい子で一生懸命で読んでいて切なく、先が気になって一気に読んでしまいました。今回は長編でこの事件に二人は関わっていくわけですが二人のスタンスは一作目と変わらずお蔦さんは凛と美しく、望は相変わらず料理でみんなの気持ちを救っています。話のテーマは前回以上に重く、過去も絡みいろいろな意味で辛いのですが二人の人柄ゆえなのか素敵な人ばかりの神楽坂の住人が優しい気持ちを運んでくれました。
読了日:5月15日 著者:西條奈加
コモリと子守りコモリと子守り感想
舞田ひとみシリーズ三作目は家庭にいろいろな事情がある引きこもりの由宇が巻き込まれた事件。彼は唯一友人と言える舞田ひとみに助けを求めるわけですが、17歳になってもひとみはしっかりと自分に一本筋を通して忙しく生きています。最初余計な部分が多いような気がしたのですが、読み終わってみるときちんと計算されていたことがわかりさすが歌野さん!と感嘆しました。ただ一つどうしても気になったのが犯人像です。こんな綿密な計画と行動は合ってない気がします。長めのエピローグのおかげで後味は悪くないですがテーマはとても重かったです。
読了日:5月14日 著者:歌野晶午
百舌の叫ぶ夜 (百舌シリーズ) (集英社文庫)百舌の叫ぶ夜 (百舌シリーズ) (集英社文庫)感想
旧版既読。あまり覚えてはいなかったもののドラマになったので見ていたらそこここに違和感があり原作が気になってきたので改訂新版で再読してみました。再読でも登場人物たちに引きずられこの世界にどっぷり浸かって楽しめました。初読同様20年以上前の作品という古さは全く感じませんがドラマは上手く現代に合わせて変えていますね。雰囲気が違うのですが私はどちらもそれなりの良さがあると思います。シリーズはこれ一作しか読んでいないのでこの機会に続きも読みたいと思いました。
読了日:5月13日 著者:逢坂剛
狐さんの恋結び狐さんの恋結び感想
<辛口ご容赦>前作のラストが気に入らなかったのにそれでも手に取ったのは逆に続編で前作のもやもやを綺麗にまとめてくれるかな、と思ったからです。変なファンタジー展開はなくなって読み易くはなっていますが、前作の失恋を引きずった狐さんは痛々しいばかりで内向的で、前作のような飄々とした感じはなくなってしまい残念です。そして恋結びをした後は…またこういうラストですか…。続けるつもりなら最後数ページだけではなくそれなりに惹きつけるものが欲しいです。雰囲気としては前作の方が好きでした。次こそすっきり終わってほしいです。
読了日:5月12日 著者:北夏輝
ブックカバーの本―いろいろ素材、いろいろデザインブックカバーの本―いろいろ素材、いろいろデザイン感想
手芸や洋裁好きの読書家さんなら絶対楽しめると思います。もうすぐにでも作ってみたいものがいっぱいです。いろいろな図案の布製のものはもちろん革や紙に消しゴムはんこのものもあります。栞も載っています。「泥棒の格好をして逃げる兎さんを十手を持って追いかける蛙」という刺繍図案の時代小説用のブックカバーが妙にツボに入ったのでいつか作ってみたいです。その隣のページにはミステリー用の刺繍があるのですが…人魚姫かと思ったら犯行現場だった!これを作って本にかけて外で読んだら注目の的間違いなしですね。私にはできませんが^^;
読了日:5月12日 著者:
猫街道三拾三次 歌川猫重―キャット・アート・コレクション猫街道三拾三次 歌川猫重―キャット・アート・コレクション感想
CAT ARTは有名絵画でしたが、こちらは題名通り「東海道五十三次」の構図ほとんどそのままに人間部分がみんな猫さんたちになっています。それぞれの猫たちの表情がなんとも素敵♪人間より表情豊かだと思います。一つ一つ人間版と比べて楽しみました。これらの絵を描いたという歌川猫重によるそれぞれの絵の解説がまた秀逸で、すごく勉強になったかと思えば、トロろ汁に思わず吹き出したりして楽しみました。山部猫人の歌のインパクトも強かったです。ラストの制作余話も楽しく拝見しました。
読了日:5月12日 著者:シュー・ヤマモト
あとかたあとかた感想
少しずつ繋がった連作短編集。人間というものはみな安定を求めながらも安定することも恐ろしいと感じるものなのかもしれません。それぞれの主人公がもがいて手を伸ばす心情はわかりたくないけれどわかってしまいます。凄く優しいけれど痛々しく、雰囲気は好きだけれど同化したくはない、そんな不思議な感覚です。そんな中、後半に行くにつれ話は痛々しいだけではなくなり「やけど」から「うろこ」でほっとし、さらに「ねいろ」で読後感も優しくしてくれました。読後自分の遺すだろうものを少しだけ考えました。
読了日:5月12日 著者:千早茜
桃ノ木坂互助会 (文芸書)桃ノ木坂互助会 (文芸書)感想
互助会の老人たちによる勧善懲悪のスカッとする物語と思い込んでいたのですが…。町に危害を及ぼす人を追放するための彼らのやり方に一度皺を寄せた私の眉間は、その後ある姉妹が絡むことで急速に話が展開して行っても皺が寄りっぱなしのままだった気がします。ターゲットに同情の余地はありませんが表紙絵のようなほのぼのさはどこにもなくなんともダークなお話でした。正義の捻じ曲げがどうしても受け入れられず私の好みではありませんでしたがこの作家さんらしい話のようですのでラストのスピード展開などは好きな方は楽しめると思います。
読了日:5月11日 著者:川瀬七緒
死亡フラグが立つ前に (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)死亡フラグが立つ前に (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)感想
「死亡フラグが立ちましたのずっと前」で本宮と陣内の出会いのころの話に始まり、「死亡フラグが立つ前に」は陣内がなぜか頼りになる友人として出現し「キルキルカンパニー」では題名そのまま。ラストの「ドS編集長のただならぬ婚活」ではまさかの殺伐ガールとのリンクが!最初はそろそろこのパターンも飽きてきたかな、なんて思っていたのにラストのこの一編でしっかりのめりこんでしまいました。やっぱりこのリズムが好きかも。この話の続きがとても読みたいです。シリーズを読まれている方は是非殺伐ガールを読んでからどうぞ。
読了日:5月10日 著者:七尾与史
一千兆円の身代金一千兆円の身代金感想
このミス大賞受賞作。元副総理の孫の誘拐。身代金は一千兆円。視点は様々な人の間を動き、少しずつ全体像を見せてくれる手法は読み手を惹きつけるのに上手いと思います。ミステリとしては途中でおよそのところは見えてきてしまいましたが、社会派としてはいいところを突いてきたな、と思いました。大変難しい問題でなかなか変わることではないかもしれませんが、若い人にこそ考えてもらいたいことでありこの本を読むことで考えるいい機会になるかもしれません。もちろんあと一息と思う部分もありますが今後の作品が楽しみです。
読了日:5月10日 著者:八木圭一
まほろ駅前狂騒曲まほろ駅前狂騒曲感想
二人がそれぞれ背負っている過去をどのように消化し、向き合っていくか。これにはるちゃんを預かるということでいきなりフラグが立ち、行天がそれを受け止めることができるのか不安になりながら読み進めることになりました。はるちゃんは本当に強い。しっかりと愛情をもって育てられているんでしょうね。ストーリーはいつものメンバーも交えていろいろな出来事が一本に繋がり一気に読んでしまいました。展開にはドキドキしたりほっとしたり泣きそうになったり…沢山のことに気づかされ充実した読書タイムでした。今後の彼らにもまた会いたいです。
読了日:5月8日 著者:三浦しをん
北乃杜高校探偵部 (講談社ノベルス)北乃杜高校探偵部 (講談社ノベルス)感想
以前に一緒に謎を解いた高校生5人がクラスがバラバラになってからの事件4編。シリーズの続きかと思ったのですがそうでもないようです。乾さんの作品はキャラに思い入れができないことが多いのですが、今回は5人のキャラを描き分け、以前より読み易くなっていると感じました。表紙絵も上手く特徴をつかんでいると思います。軽いお話ですがパターンがあって読み易く自分の高校時代を思い出したりして楽しめました。犯人を捕まえることがすべてではないラストの一話がとても好きです。差し込まれている「十年後の読者のために」が笑いを誘います。
読了日:5月8日 著者:乾くるみ
ブックカバーを作る―しまい込んでいた布の再利用 アイロンと両面テープでらくらくできるブックカバーを作る―しまい込んでいた布の再利用 アイロンと両面テープでらくらくできる感想
表装用裏打ち用紙と両面テープで作るブックカバー。これはしっかりするし綺麗に出来上がるのがわかります。素敵なアイディアで、カルトナージュで表紙を作るよりは手軽にできると思いました。でも、表装用の裏打ち用紙って、かなり前の記憶ですが巻で買ったら多すぎるし、小さいサイズはとーっても高かった気がします。ブックカバー以外に載っている厚手の手帳用カバーや名刺入れなどのようなものを作るならともかく普通のブックカバーを作るためにわざわざ表装用裏打ち用紙を買うってのは残念ながら私はしないと思います。
読了日:5月7日 著者:えかたけい
まほろ駅前番外地 (文春文庫)まほろ駅前番外地 (文春文庫)感想
シリーズ二作目。今作ではいくつかの章で視点が二人の周りの人になっていて、周りの人たちの日常や人となりなども別方向から楽しむことができました。中でも「星良一の日常」が気に入りました。「岡夫人は観察する」は二人をよく見ていてもっと彼らを教えて!と思いながら読んでいました。今回実は一番印象深かったのは、トイレを見るとその家がわかるというところだったりします。思わず自分の家のトイレを思い浮かべました。最初のころの二人とは距離感も関係も少しずつ変わっているのを感じます。今後の二人の変化も楽しみです。
読了日:5月7日 著者:三浦しをん
あなたに似た人〔新訳版〕 II 〔ハヤカワ・ミステリ文庫〕あなたに似た人〔新訳版〕 II 〔ハヤカワ・ミステリ文庫〕感想
1に続けて読みましたが、1の方がブラックなインパクトは強いかもしれません。ブラックではなくても「サウンドマシン」「偉大なる自動文章製造機」などは設定が面白く心に残りそうです。逆にインパクトが強いのは「クロードの犬」のシリーズでした。中でも「ラミンズ」は読み始めからなんとも身の置き所のないむずがゆさがあり、ラストはああやっぱり…と思わす息を止めました。「廃墟にて」もよくあるパターンですがこの短さにすべてが説明されているのは驚きます。後味は優しくないのですが児童書にはないダールの色を楽しみました。
読了日:5月2日 著者:ロアルド・ダール
あなたに似た人〔新訳版〕 I 〔ハヤカワ・ミステリ文庫〕あなたに似た人〔新訳版〕 I 〔ハヤカワ・ミステリ文庫〕感想
「チョコレート工場の秘密」などの児童書で有名なロアルド・ダールですが、こちらは奇妙な味の短編小説。どれもなんとなく不穏な空気が漂うストーリーですが、特にラストの一行でやられた「南から来た男」が印象的です。他にも「プールでひと泳ぎ」「皮膚」も思いがけないラストが苦く残りました。すべてが強烈なインパクトを与えてくれるわけではありませんが、しっかりミステリで、短編集でも読み応えがありました。ブラックなものを楽しめる方にはお勧めします。
読了日:5月1日 著者:ロアルド・ダール
壁抜け男 (異色作家短篇集)壁抜け男 (異色作家短篇集)感想
ずっと気になっていた「壁抜け男」。とにかくすごいインパクトです。どうなるのか期待しながら読み進めたその先は・・・思いがけず寂しいラストが待っていました。表題作以外では「カード」「よい絵」「サビーヌたち」が特に印象的でしたが、他の収録作も含めてみんなラストに違った余韻を運んできてくれるのです。そのため奇妙な味ばかりの短編集でもいろいろな種類のお話を読んだように楽しむことができました。また時を経て読み返してみたい本です。収録は他に「パリ横断」「パリのぶどう酒」「七里のくつ」
読了日:4月27日 著者:マルセルエイメ
つれづれ、北野坂探偵舎  ゴーストフィクション (角川文庫)つれづれ、北野坂探偵舎 ゴーストフィクション (角川文庫)感想
探偵舎への今回の依頼は一枚の絵を見つけること。相変わらずの彼らの距離感がとても好きです。今回は伏線がしっかりとしていて幽霊の正体やしたいことなどがわかった!と思ったのですが実際はもうあと一ひねりあり楽しませてもらいました。本筋の物語に関しても過去はかなり明らかになり、少女に関しても大きな転機が訪れ…と一気に物語が動いた気がしましたが読み終わってみるとそれほど大きな進展ではなかったのかな?でも彼の中ではストーリーが定まりつつあるようです。どんなハッピーエンドを迎えるのか楽しみに続きを待ちます。
読了日:4月27日 著者:河野裕
こだわりのブックカバーとしおりの本 (玄光社MOOK)こだわりのブックカバーとしおりの本 (玄光社MOOK)感想
本好きには見逃せません。本と関わる方々のこだわりの一品の紹介ですからご自身の作品を使ったり非売品だったりと手に入らないものも多いですが見ていてとても楽しいです。壁紙のカバーがとても印象的でした。本屋さんの紙製ブックカバーの紹介もあります。紀伊国屋さんのは現在の私もちょっと嬉しいカバーの一つですが、静岡育ちの私には谷島屋のブックカバーが紹介されていたことがとても懐かしく嬉しく思いました。カバーの写真ひとつで実家の本棚がすっと浮かんできました。好みの栞になかなか出会えないので栞の紹介が少ないのは残念でした。
読了日:4月25日 著者:
新装版 銀行総務特命 (講談社文庫)新装版 銀行総務特命 (講談社文庫)感想
「不祥事」と比べるとこちらは特命係ということで、臨店の扱うものとは事件の規模が違います。指宿が主人公のはずなんですが、途中から唐木怜が特命に加わると話がキリッと締まった気がしました。池井戸さんは芯の強い女性を描くのが上手いですね。池井戸作品は勧善懲悪で気持ちの良いラストだと信じているからこそ楽しんで読めますがきっと現実はこんなに簡単に尻尾はつかめないのだろうと恐ろしさも感じます。それぞれ短編なのが惜しいほどですが全部を中編で読んだら重すぎるのかもしれず、この終わり方がちょうどよいのかもしれません。
読了日:4月24日 著者:池井戸潤
これが物理学だ! マサチューセッツ工科大学「感動」講義これが物理学だ! マサチューセッツ工科大学「感動」講義感想
MITで動画で無料公開しているウォルター・ルーウィン教授の物理学入門の講義の一部をテキスト化したものです。確かに彼の講義が魅力的でわかりやすい事は伝わってきますがでもテキストはテキストであって、彼が体を張って証明する実験の数々は映像で見るのとは迫力が違うというのが正直な印象です。これを読んでからだと英語の動画でもなんとなく中身はわかりますので補助テキスト的に読むのがいいのかもしれません。「白熱教室」を見逃してしまったのですがこれを読んでDVDを見てみたいと思いました。
読了日:4月24日 著者:ウォルタールーウィン
珈琲店タレーランの事件簿 3 ~心を乱すブレンドは (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)珈琲店タレーランの事件簿 3 ~心を乱すブレンドは (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)感想
前作まではミステリとしてはもう一息かなという感じがしていたのですが、3作目となる今作では難しいものではないもののかなりしっかりとしたミステリ仕立てになっていて作者の成長を感じました。大会の主催者側にいい気持ちがしなかったのと最終選考に残ったバリスタの誰も好きになれなかったなど思い入れ出来なかったのが残念でした。そしてやっぱり読後感が苦くて悲しいのです。シリーズの特徴なのかもしれませんがたまにはすっきり気持ちよいラストで読みたいものです。否定的な事も書きましたがシリーズのこの先も期待しています。
読了日:4月21日 著者:岡崎琢磨
新装版 不祥事 (講談社文庫)新装版 不祥事 (講談社文庫)感想
連作短編です。テラーとしてできる人であった花咲舞は、配置換えで臨店の仕事になっても当然できる人で、不正に立ち向かっていく様は読んでいて気持ちがいいです。それにしても、こんなに不祥事ばかり起こしていたら信用第一の銀行では潰れてしまいます。フィクションだとわかっているからこそ楽しく読めますが実際の銀行員があんな出世欲と保身だけでできていたら恐ろしいですね。短編形式なのでさくさくと勧善懲悪の物語を楽しめました。短編の並べ方も上手くて綺麗にまとまっていると思います。是非シリーズで出して欲しいです。
読了日:4月20日 著者:池井戸潤
つれづれ、北野坂探偵舎    著者には書けない物語 (角川文庫)つれづれ、北野坂探偵舎 著者には書けない物語 (角川文庫)感想
前作と違って複数の事件の積み重ねではなく、彼らの過去に関わる大学でバラバラな脚本を正しく並べ一つシーンを加えるという依頼の長編になっていました。分割された脚本が手元にあるわけではないので、読むだけで自分の頭で前後関係を考えながらつなげて理解するのはなかなか骨が折れましたが、クライマックスの舞台上の緊迫したシーンはとても楽しめました。二人の過去や少女の正体などかなり明らかになっているのですが、ラストシーンを読むとまだまだこれからの気がします。登場人物達の作る独特の雰囲気が好きなので続きも楽しみです。
読了日:4月20日 著者:河野裕
殺戮にいたる病 (講談社文庫)殺戮にいたる病 (講談社文庫)感想
再読です。最近読まれている方が多くて懐かしくなったので掘り出してきました。初めて読んだときはそれこそ天地がひっくり返ったような衝撃でしたね。そもそもいろいろな描写が受け入れられずに四苦八苦しながら読んだ覚えがありますので細かい部分なんて読み込んでられなかったんだと思います。今回別の意味で衝撃だったのがあの読みにくかった部分を年月を経たら淡々と読み進められるようになってしまっていたこと。初読の時は気づかなかった伏線もちゃんとありました。でも理解の範疇を越えたラストシーンは再読でも恐ろしかったです。
読了日:4月18日 著者:我孫子武丸
雀蜂 (角川ホラー文庫)雀蜂 (角川ホラー文庫)感想
内容はわかっていて手に取ったのですが、虫が好きではないのでいろいろなシーンが頭に映像で浮かんでしまいグロテスクでちょっと苦痛でした。文字数も少なくてどんどん読めるのですが想像以上に冷静でどこかシュールな主人公にも、彼によって語られる他の登場人物にもあまり思い入れができなくてサバイバルホラーのはずなのに淡々と読み進めてしまいました。そのせいか裏に隠されていることには気づいても実際のところは全然わかっていなかったのでラストには驚きました。わかってみると伏線はバッチリで、このあたりはやはり上手いと思います。
読了日:4月17日 著者:貴志祐介
最後の証人 (宝島社文庫)最後の証人 (宝島社文庫)感想
法廷ミステリですが、そんなに素直ではありません。ですが、法廷での3日間を描きながら途中に過去や事件を起こすまでの状況を挟むので、わかりやすくとても読み易くなっていて一気に読まされてしまいました。巧妙に隠されているものに早々と気づいてしまったのでその点では驚きなどはありませんでしたがさすがに最後の証人までは見抜けませんでした。弁護士の佐方の信念は痛いほどです。彼が小坂を選んだ理由にも現れていますが証人を証言台に立たせた言葉、最後に真生に返した言葉も真っ直ぐに心に刺さってきました。シリーズの先も楽しみです。
読了日:4月17日 著者:柚月裕子
おさる日記おさる日記感想
奇妙な味の国内作品(絵本です)ということで、読み友さんたちが話題にしていたのでとても興味をそそられて図書館でお借りしてみました。パーサーのおとうさんがおみやげにくれたちいさいおさる。そのおさるとの日々が日記で綴られます。村上さんのイラストがぴったりです。どことなくすわりの悪さを感じながらもするすると読み続けたラストの一文は…!感じていた違和感はなるほどこのためか、とじわじわと読後効いてきました。
読了日:4月16日 著者:和田誠
彼女は存在しない (幻冬舎文庫)彼女は存在しない (幻冬舎文庫)感想
何かが仕掛けられているのは題名からも想像できるし、たくさんの違和感が潜んでいるのです。なのに多重人格者という煙幕が見通すことを邪魔します。決して読み易い内容ではなく嫌な描写もあるし混乱もするのですがこのページ数をほとんど一気に読み切ってしまいました。この手のトリックはわかってしまうとそれ以降が楽しめないのでなるべく考えずに素直に騙されようと思って読むのですが、今回は特に一気に読んだので見事に騙されました。潜んでいた違和感が一気にクリアになったのは気持ちが良かったのですが、内容は重くとても悲しかったです。
読了日:4月16日 著者:浦賀和宏
5分で読める! ひと駅ストーリー 冬の記憶 東口編 (宝島社文庫)5分で読める! ひと駅ストーリー 冬の記憶 東口編 (宝島社文庫)感想
冬の記憶なのでクリスマスか雪に絡んだものが多いです。印象深かったのは一番最初の佐藤青南「雪の轍」とラストの中山七里「アンゲリカのクリスマスローズ」。深津十一「闇の世界の証言者」も好みです。いくつか挙げるとどうしてもこのミス受賞作家さんの作品ばかりになってしまうのはもともとミステリ好きだからなのもありますが、やはりラノベやラブストーリーの方がショートのオチがつけにくいのかなとも思います。それぞれがとても短いゆえにさらさらっと読めてしまい新しい好みの作家さんに出会う、という形にはならなかったのは残念でした。
読了日:4月16日 著者:
霧越邸殺人事件<完全改訂版>(下) (角川文庫)霧越邸殺人事件<完全改訂版>(下) (角川文庫)感想
ほとんど覚えていない状況で読み進めた上巻と違って多少思い出した状態で突入した下巻では、視点の彼が自分は蚊帳の外と思い込んでいるのか恐怖感がまるでないのが少し気になってしまいましたがそれも元プロットが学生時代という若さゆえの勢いなのかなとも思います。本格好きでこのタイプを好まない人の言い分もわかりますが、私はやはり本格部分はしっかり本格だと思いますしこのボリュームをしっかりと楽しみました。「もう一人の中村青司氏」の意味など、最後に収録されている特別インタビューが大変興味深く、新装版を手に取ってよかったです。
読了日:4月15日 著者:綾辻行人
霧越邸殺人事件<完全改訂版>(上) (角川文庫)霧越邸殺人事件<完全改訂版>(上) (角川文庫)感想
新潮文庫版で読んだのはもう15年近く前です。再読のきっかけがなかなかつかめずにいたのですが今回新装版の遠田さんの美しい装丁に惹かれて手に取りました。かなり好きな話だったはずなのですが読み始めてみるとほとんど覚えていなかったのに驚きました。いつ三階の見取り図が出てくるんだろう?なんて思いつつ読み進めていくうちに少しずつ思い出しました。クローズドサークルと見立て殺人。館シリーズとは違った美しい描写と幻想的な雰囲気。綺麗な文章で読者を世界に引き込むのはさすがだと思います。
読了日:4月15日 著者:綾辻行人
蜩ノ記 (祥伝社文庫)蜩ノ記 (祥伝社文庫)感想
10年後の切腹、それまでは家譜の編纂を命じられた藩士戸田秋谷。ある不祥事から彼を輔佐と監視することになった檀野庄三郎の視点で最後の3年が語られます。フィクションのはずなのに、実際にあった出来事のようにリアルに物語が流れ込んでくるのです。この時代、どれだけ人々が自分の命を賭していろいろなことに向き合って行ったのか自分の大切な人を守り、信義を貫くためにどれだけ考え強くあったのかが痛いほど伝わってきました。「蜩ノ記」の意味、最後の一行。他にもたくさんの心打たれる言葉の詰まった大変読み応えのある本でした。
読了日:4月14日 著者:葉室麟
キャット・アート―名画に描かれた猫キャット・アート―名画に描かれた猫感想
読み友さんの感想を見て興味を持ちました。表紙絵のインパクトも凄かったのですが、中のイラストもすべてこんな感じで有名なもののパロディばかりなのでページをめくるたびに楽しくて仕方ありませんでした。各ページにある解説も笑いを誘われます。「記憶の個室」でかかっているのがマウスだったり(作者のネコバドール・ダリダッケもツボでした)、「晩鐘」で収穫されているものに合わせてちゃんと後ろに小川が流れていたりするところがとても好みです。猫好きさんは絶対楽しめると思いますので是非。オールカラーでこのボリューム。楽しみました。
読了日:4月10日 著者:シュー・ヤマモト
甘いもんでもおひとつ 藍千堂菓子噺甘いもんでもおひとつ 藍千堂菓子噺感想
表紙も美しいですが、とにかく目を惹くのは章ごとの中扉に使われている千代紙のような綺麗な和柄の装丁です。お話は両親の死後、叔父に和菓子店を追い出された兄弟が嫌がらせにも負けじと頑張るちょっとみをつくし料理帖を思い浮かべるようなお話でした。兄弟の役割分担のしっかりしているところや根本でお互いを信じわかりきっているところが素敵です。ここぞというときに助けてくれる脇役の存在も良かったです。少し薄めですがこれでお終いなのはちょっと勿体ない気がします。続編は書かれないのかしら?この先の藍千堂も見てみたいです。
読了日:4月10日 著者:田牧大和
カササギたちの四季 (光文社文庫)カササギたちの四季 (光文社文庫)感想
優しい連作短編集でした。この小さな人間関係の中に実はたくさん嘘が詰まっていたりするのですが、それが切なさではなく優しい読後感を作り出してしまうのが不思議ですごいと思います。毎回の在庫商品の列記に道尾さんが楽しんでいるのが伝わってきます。三人それぞれのキャラが良かったのはもちろん、全編通して出てきた住職がいい味を出してました。最初の強欲なところも楽しかったのですが、最終話で「泣くな」と叱責するところ、そして蜜柑の接ぎ木の話はとても良かったです。それにしても道尾さんはいろいろな引き出しをお持ちで驚きます。
読了日:4月10日 著者:道尾秀介
美雪晴れ―みをつくし料理帖 (時代小説文庫)美雪晴れ―みをつくし料理帖 (時代小説文庫)感想
澪は本当に強いです。もう少し人を頼ってもいいはずなのに、きちんと自分で考え気づき、行動を起こして道を開いていく。それも決して新しく始めることで迷惑をかけることもなく。いろいろなことがきちんとゴールに向かって動き始めたのがわかる巻です。辛い思いをした人もいますが、彼女にもきっと高田さんは優しいラストを用意してくださるのだろうと思います。巻末にもう出てこないのかしら、と思っていた気になるあの方の様子がわかる短編がついているのも嬉しかったです。続きが楽しみですが終わってしまうのが勿体なくも思います。
読了日:4月9日 著者:高田郁
それでも僕は夢を見るそれでも僕は夢を見る感想
夢を追い、夢を捨て、そして…。そんな一人の男のストーリーを鉄拳さんのイラストで綴った一冊。もしも、全く同じストーリーを文字だけで伝えられたならきっと素直には受け取れないと思うのです。パラパラ漫画同様にページをめくるたびに現れるイラストと一文が視覚で一瞬のうちに心の中に流れ込んできます。彼のイラストが与えるインパクトは凄いですね。優しい気持ちと切なさで読み進めたあとのラストの手紙は本当に熱いです。読みながらほとんど泣きそうでした。はい、私は今、生きています。そのことをあらためて考えます。
読了日:4月8日 著者:水野敬也
ピエタ (ポプラ文庫 日本文学)ピエタ (ポプラ文庫 日本文学)感想
最初、ひらがな多用の文章に戸惑いましたがこれが独特の女性の語りの柔らかさを生んですぐに世界に入っていくことができました。ベネツィアの景色はもちろんのこと、登場人物達の会話がとても美しいです。もちろん美しいばかりではなく、例えば腕のPの字にピエタの現実を知らしめられたりします。ヴィヴァルディ氏の過去とクラウディア、ヴェロニカ。月日が過ぎ、繋がるべくしていろいろなことが繋がるとき静かな感動を覚えずにはいられません。全体を通してゆっくりと特別な時間の流れを感じる物語でした。
読了日:4月8日 著者:大島真寿美
5分で読める! ひと駅ストーリー 冬の記憶 西口編 (宝島社文庫)5分で読める! ひと駅ストーリー 冬の記憶 西口編 (宝島社文庫)感想
ひと駅ストーリーシリーズを初めて読みました。5分で読めるというだけあって短く、27人分ですからどれも薄味で印象に残りにくいかな、と思っていたのですが読み終わってみるとやはりいくつも印象に残る話がありました。林由美子「祈り捧げる」沢木まひろ「ファースト・スノウ」咲乃花音「クリスマス-ローズ」桂修司「断罪の雪」印象に残っている好みの作品を書き出してみるとどれも後味が切ないものでした。七尾さんのはお約束なんですか?ラスト一話、これだけ浮いてるような?いえ、嫌いというわけではありませんが…。
読了日:4月8日 著者:
攪乱者 (実業之日本社文庫)攪乱者 (実業之日本社文庫)感想
普通の日常生活を送りながらテロリストとしての一面も持つ3人。最初の指令はスーパーにレモンを置いてくること。これがどんなテロになるのか串本という仲間が推理しますが、最初から背筋が寒くなりました。証明はされないまま結果も語られないまま次々話は進むのですが、TURN2に入り指令を受ける細胞である彼らの側が感情を見せ始めると続きが気になって一気に最後まで読まされてしまいました。ラストの展開まで含めて石持さんらしい作品だったと思います。解説によると続編でもっと明らかになる部分があるとのこと、是非読もうと思います。
読了日:4月7日 著者:石持浅海
地獄と極楽地獄と極楽感想
「絵本地獄」を読んで「絵本極楽」もあるのを知りました。これは2冊を合わせて文庫化したもののようです。「絵本地獄」と比べると小さくなった分だけ迫力は落ちるかもしれませんが、このサイズの方が隅々まで見やすかったです(小さくても怖いです)。「極楽」は、死後徳を積んだ人が行けるところだと思って読み始めたので(親より先に死んではいけないはずの)子供の視点で描かれていることに戸惑いましたが極楽がどんなものかという定義が違っていて、心に残るものでした。極楽は美しい情景ですがやはり地獄の方がインパクトが強いですね。
読了日:4月6日 著者:西川隆範,宮次男
リバーサイド・チルドレン (ミステリ・フロンティア)リバーサイド・チルドレン (ミステリ・フロンティア)感想
前作の雰囲気はそのままに今回は長編でカンボジアのストリートチルドレンが描かれます。「叫びと祈り」の中の一編とも取れるように意識して書かれたのでしょうね。今回もこの世界の描写には圧倒されました。日本に生まれ育てば遠い世界のことだと感じてしまうこの情景が日本人の少年が存在するだけで一気に現実味を帯びて伝わってきます。ミステリとして読むと、しっかり騙されたとはいえトリックありきでちょっともったいなかった気がしますがこんな表現のできるこの作家さんの感性はとても好きで、この先も注目していきたいと思いました。
読了日:4月6日 著者:梓崎優
殺戮ガール (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)殺戮ガール (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)感想
いろいろな視点で、時間も前後して語られるいくつかの場面。それが上手く整列して実際に起こっていることがわかり始めるとき、この作家さんは読み手をつかむのが上手いなといつも思います。ただ、その場面が決してワクワクするとか解放感とかではなく何とも苦いものなのですが。今回も視点であった人物が次の場面では死体になっていたりして、真実に到達するのか心配しながら読み進めました。そしてたどり着いた先は…。彼女を形作ったものが出生だけだとは絶対思いたくない。ラストの彼と彼女が可哀想すぎですがこれが作者の持ち味なんでしょうね。
読了日:4月4日 著者:七尾与史
恋歌恋歌感想
女性の目から見た天狗党の乱。この時代の歴史はあまり得意ではなかったので最初は戸惑いました。でも、この手記を読むという形が大変読み易かったのです。なんて彼女たちは強いのでしょう、強くいられるのでしょう。母の強さは私にも理解できますが、恋する女も強い。この時代、歴史を変えるために必死だった人々も命を懸けて相手を想った。辞世の句の形をとった恋の歌たち。もはやいないことのわかっている相手への恋の歌。ひとつひとつの歌が本当に心に沁みました。女性の描く柔らかい文体なのに本当に力強いストーリーで圧倒されました。
読了日:4月3日 著者:朝井まかて
浜村渚の計算ノート 5さつめ 鳴くよウグイス、平面上 (講談社文庫)浜村渚の計算ノート 5さつめ 鳴くよウグイス、平面上 (講談社文庫)感想
解説の結城浩さんの「数学ガール」を読んだ後だとこのシリーズが本当に柔らかく噛み砕いてあってわかりやすいのを感じます。魔方陣、鳩の巣原理、パップス・ギュルダンの定理、ラストは放物線と接線。これがこんなに簡単に説明できるものなんですね(パップス・ギュルダンの定理のとこだけは、重心が簡単に求められる図形の方が少ないだろう!と突っ込みましたが、改めて円錐の美しさには感激しました)。さて、今回は気になっていた武藤さんの過去に触れていたり、ストーリーは少し進んで変化もあり、この後も長く続きそうです。続きも楽しみです。
読了日:4月2日 著者:青柳碧人
私の男 (文春文庫)私の男 (文春文庫)感想
普段は生理的に受け付けないタイプの話です。ですがこの過去へ過去へとさかのぼっていく話の進め方が抜群に上手くて、とにかく引きずり込まれて一気に読んでしまいました。作者が女性だからこそ書けた話のような気がします。最後の章まで時間が戻ると泣きそうになりました。分岐点はあったかもしれない、でも二人はこのようにしか生きられなかったのではないでしょうか。ラストまで読んでから一章に戻って読んでみたら、細々とした行動や言葉が更にずっしりと重く変わりました。特に二度目の一章の最後はこの先を考えるときりきりと痛いほどでした。
読了日:3月31日 著者:桜庭一樹
リケジョ!  (角川文庫)リケジョ! (角川文庫)感想
大学院生と小学生の二人のリケジョの関係は微笑ましく、軽く楽しく読み進めていましたが事件が意外と重いものに変わっていき驚きました。でもたくさんドキッとする素敵な言葉が詰まっていて、登場人物も素敵で上手く一冊にまとまっていたと思います(一年後の話も読んでみたいですが)。私も理系なので、いろいろな定理や人物名だけで嬉しくなりましたが、名前が難しくても内容はわかりやすく説明してあって物理があまりお好きでない方でも読み易いと思います。改題はわからなくもないですが、私も旧題の「プチ・プロフェスール」の方が好きですね。
読了日:3月30日 著者:伊与原新
絵本地獄―千葉県安房郡三芳村延命寺所蔵絵本地獄―千葉県安房郡三芳村延命寺所蔵感想
数年前に話題になった本だと思います。当時読んでみたい!と思ったのですが、図書館の予約の多さに断念していました。今回偶然見つけてお借りしてきましたが、いやー想像以上でした。これ、普通に児童書の絵本の棚にありましたが小さな子供には相当怖いでしょうね。書いてあること、この本の存在意義には頷けるものがありましたが、娘が小さいころに知っていたとして読み聞かせする決心がついていたかどうか…。現在高校生の娘には、なにこれグロイ!と表紙だけで突き返されました。遅かったか。
読了日:3月28日 著者:白仁成昭,宮次男
探偵が腕貫を外すとき探偵が腕貫を外すとき感想
シリーズ4作目。一作目は短編で絶妙に相談者自身に回答を見つけ出させ、二作目では腕抜を外したあとの彼を少しずつ見せながらどの話も少しほろ苦く。三作目では長編だけれどプロデュースなので出番は少なめ。と少しずつ色が違います。今作は短編。通常通り苦情係としてお仕事をしていたり、お昼休みだったり事件後にユリエちゃんの話を聞いていたりしますが相変わらず推理は見事です。好みは珍しく(?)読後感の良い「どこまでも停められて」。そしてラストの「いきちがい」…その塩むすびセットまでの話は?すごく気になるんですけど。
読了日:3月28日 著者:西澤保彦
叫びと祈り (ミステリ・フロンティア)叫びと祈り (ミステリ・フロンティア)感想
冒頭の一編目で、独特の世界観にぐっとつかまれてしまいました。デビュー作とは驚きます。その後さらにルポライター斉木が絡むことで世界各地での連作短編となりぐいぐいと世界に引きずり込まれ、「叫び」と「祈り」で読後深々とため息をつきました。日本人でいることを考えさせられもしました。ホワイダニットの秀逸な作品と聞いていましたが期待に違わなかったです。とにかく色のついた絵として浮かぶ情景が素晴らしいと思います。この日本にはない独特の情景ゆえに読者は選びそうですが私はとても好きでこの先も追いかけてみたいと思いました。
読了日:3月26日 著者:梓崎優
まほろ駅前多田便利軒 (文春文庫)まほろ駅前多田便利軒 (文春文庫)感想
多田にしても行天にしても依頼をする人たちにしても、それぞれが一言では表せない過去や影を持っています。夢中になって読んでしまうのに気付いてみればかなり重たい話も多く、リーダビリティの高さはさすがしをんさんだと思います。破天荒でありながらちゃんと自分を持っている行天がとても愛おしい。彼の言葉にいくつもはっとさせられました。行天のこの後も気になりますが、この先多田が行天によって救われていくことを祈ります。この先の二人をまだまだ読んでいきたいです。ドラマは何話かみましたがユギさんのコミックも是非読んでみたいです。
読了日:3月24日 著者:三浦しをん
福家警部補 未完の頂上 (Kindle 連載)福家警部補 未完の頂上 (Kindle 連載)感想
犯人が事件を起こすまでの心情、冷静に処置しながらも時々起る予期せぬ出来事。どこから福家警部補が切り込んでいくのだろうと事件の描写の時点から細かく追いながら読み進めました。相変わらずの聞き込み先で与える小さなハッピーが素敵です。ただ、今回は犯人に全く同情できない上にもしかしてこっちから切り込むとしたら嫌だな…と思っていた方向そのままの追い詰め方で好みではありませんでした。親という立場上考えてしまうこともありました。(kindle連載版ですがkoboアプリで読みました。他の電子書籍ストアでも読めるようです。)
読了日:3月24日 著者:大倉崇裕
福家警部補の報告 (創元クライム・クラブ)福家警部補の報告 (創元クライム・クラブ)感想
福家警部補シリーズの三作目で今回は中編が三本です。今回も更に彼女がいろいろなことに精通しているのがわかり驚かされます。部下の二岡刑事との関係ややり取りも毎回楽しいです。今回は「少女の沈黙」がとても好みで、思わず読み返してしまいました。3編目はちょっと変わっているな、と思って読み進めていたら最後にびっくり!なるほどそうきましたか。別シリーズのキャラの名前も出てきたりして、続きがますます楽しみになりました。
読了日:3月23日 著者:大倉崇裕
隠蔽捜査 (新潮文庫)隠蔽捜査 (新潮文庫)感想
長く読みたい本に登録していましたがようやく…今野敏作品初読みです。とにかく最初は竜崎のエリート意識というか、東大にこだわったり家庭のことは妻に任せたりという部分がムカついて仕方ありませんでした。ですが過去イジメにあっていたという伊丹との関係や彼が本気で思っていることなどがわかり始めると、彼に惹かれ、突然面白くなってきて400ページ以上を一気に読んでしまいました。読み終わってみると奥様が素敵!谷岡もかっこよかったです。読後感もよく多くの方が絶賛されているのがわかります。シリーズの続きも読んでいきたいです。
読了日:3月22日 著者:今野敏
金田一耕助VS明智小五郎 (角川文庫)金田一耕助VS明智小五郎 (角川文庫)感想
表題作だけでなく、すべてに金田一耕助と明智小五郎に対する愛がいっぱい詰まっていて、作者自身が本当に楽しんで書いているのが伝わってきました。パロディではなくパスティーシュなんですね。上手く原作の言葉や時間をつかんではめ込まれているようで感心しました。特に≪ホテル・ミカド≫は楽しかったです。「少年は怪人を~」も意表を突かれ好みでした。表紙絵もいいですね。二つの元シリーズどちらにもまだ読んでいない作品がたくさんあるので早く読みたくなりました。
読了日:3月21日 著者:芦辺拓
うろんな客うろんな客感想
うろんな客、可愛いです。原文の韻を踏んだ2センテンスのリズム感もいいですが、短歌風に57577でまとめた訳のセンスもとても好きです。(散文の方が人気のようですが…。)うろんな行為がまるで○○みたい、と思いながら読んでいたので、ラストページと解説を読んでやっぱり!と嬉しくなりました。憎めない可愛さは当然ですね。今まで読んできたゴーリー本と違って残酷で不条理な部分がないのは驚きました。この不思議な雰囲気もとても良かったです。
読了日:3月19日 著者:エドワードゴーリー
数学ガール (数学ガールシリーズ 1)数学ガール (数学ガールシリーズ 1)感想
理系の高校生ならすらすらと簡単に読める、というレベルなので数学が苦手だったらちょっと大変かもしれません。私自身理系でしたがしっかりと式を追いかけていくのは忘れている部分もあって正直疲れました。ラノベ的な高校生の関係は正直話を読み易くしているのかどうかはわかりませんが、「道を間違えた」ときのショックは何度も経験したのでわかるわかる、という感じで過去の自分を思い出したりもしていました。図書館でお借りして期限があったので頑張って読むことになりましたが、ゆっくりと時間のある時に楽しんで読むべき本だと思います。
読了日:3月19日 著者:結城浩
アルジャーノンに花束を (ダニエル・キイス文庫)アルジャーノンに花束を (ダニエル・キイス文庫)感想
初読は20年近く前だと思います。基本的なあらすじ程度しか覚えていなかったのですが、今回は頭脳的なことだけではなく登場人物達の人となりや人間関係までもが本当に細やかに心に刺さってきて、逃亡のあたりからもう、切なくて悲しくて…ラストの「本を二さつもっていく」のくだりでとうとうぼろぼろ泣いてしまいました。今回思ったのは翻訳の素晴らしさです。原文はどうなっているのか綴り間違いくらいしか想像ができませんが、ひらがなと漢字という日本の言葉を本当にうまく使って私たちにこの情景を伝えてくれたのだと感激しました。
読了日:3月18日 著者:ダニエルキイス
福家警部補の再訪 (創元推理文庫)福家警部補の再訪 (創元推理文庫)感想
前作では機械的だと思った福家警部補の人となりが垣間見えてきました。今回も倒叙ものでしっかり本格で、犯人が気づかない小さなほころびを見つけ出す福家警部補に夢中になって楽しみました。どの犯人にも同情できませんが、最後に警部補にあっさり降参するところが安心して読めるのだろうと思います。今回の一番の好みは「相棒」。隠されていたものが暴かれたときは凄く胸が痛かったです。
読了日:3月17日 著者:大倉崇裕
優雅に叱責する自転車優雅に叱責する自転車感想
題名も不可解なら、一行目からして不可解。そもそもどうやって動いてんのこの自転車!って感じでページを次々とめくっていく。そして到達するラスト。驚くと同時にない部分がなぜないのかなんとなく理解できた気がして、その間を想像してみたりします。裏表紙にあるものを確認し、表表紙に戻った時、数を数えて、うんぴったり!と嬉しくなりました。すぐに再読して細かい部分まで何度も楽しみました。何を書いたらいいかわかりませんが、とにかく「好き」です。
読了日:3月17日 著者:エドワードゴーリー
北天の馬たち (単行本)北天の馬たち (単行本)感想
二階にやってきた格好いい探偵二人が仕事をする連作短編のようなエピソードがまず二つ。これらは普通に楽しんで読み進めましたがそれらを伏線にして全部を繋ぐエピソード3が、期待したのとは違う方向に行ってしまいました。語り手である毅志の魅力が掴みきれなかった事も残念です。友情をテーマにしたストレートな話ということなので、ドラマなど映像で見たらラストまで含めてこれはこれで悪くないと思います。貫井さんは新しい作風の作品をこれからも書いていかれるようですが、最近は私の好みとは少し違うかな、というのが正直な印象です。
読了日:3月16日 著者:貫井徳郎
料理人 (ハヤカワ文庫 NV 11)料理人 (ハヤカワ文庫 NV 11)感想
テレビでの紹介で興味を持ちました。ある田舎町に現れた凄腕料理人。得体のしれない高圧的な彼ですが腕は確かで雇い主一家に素晴らしい料理を提供することで完全に舌から彼らをつかんでしまいます。太っていた人を痩せさせ、痩せていた人を太らせていく彼の料理。途中で最後に待っているものはなんとなくわかるのですがそれでも先へ先へとページをめくる手は止まらず最後まで一気に読んでしまいました。ホラーなのかブラックユーモアなのか、読者を選ぶと思いますが、私はこのなんとなく居心地の悪い読後感は好きです。楽しみました。
読了日:3月15日 著者:ハリー・クレッシング
福家警部補の挨拶 (創元推理文庫)福家警部補の挨拶 (創元推理文庫)感想
「刑事コロンボ」を彷彿とさせる、全てが倒叙ものの連作短編でした。普段倒叙ものってあまり好きではないのですが、これは動機に印象的なものが多かったり、ただの証拠探しの話ではなかったので読み易かったです。ただ、福家警部補自身がちゃんと容姿や酒の強さなど特徴を持ったキャラとして描かれているのに、なぜか印象が薄いのが気になります。ちょっと機械的なイメージです。もっと極端にカラーを持っていた方が楽しいような気がしますが、続編でそのあたりは変わってくるのでしょうか。是非先も読んでみたいと思います。
読了日:3月11日 著者:大倉崇裕
海賊とよばれた男 下海賊とよばれた男 下感想
石油がどれだけ人々の生活と直結し、必要なものであるかはわかっていたつもりですが現在の状況があるのは彼が、そして彼についていった男たちがいたからであることを見せつけられ、日章丸事件の部分では読んでいて涙が出そうでした。経済統制と自由競争。今の日本は彼のような人たちによって作られてきたのですね。人間尊重の精神を貫き通した彼のような人物がいたことに感嘆し、今の時代にそれができる人や会社がどれだけあるのかも考えさせられました。このように読み易い小説の形でこの実話を知ることができたことを嬉しく思います。
読了日:3月11日 著者:百田尚樹
海賊とよばれた男 上海賊とよばれた男 上感想
凄い男がいたものです。戦前戦中戦後と、ずっとゆらぎがありません。「馘首はならん」で始まるのはまさしくこの男の信念を一言で表しているようなもの。戦後の混乱期を乗り越えるために彼の部下たちがどれだけ彼を信じ本気で動き、働くか、一章でそれをまざまざと見せられた上での時系列を戻しての第二章。もし時系列順に読まされたら読みにくいかもしれない戦前戦中の部分が時系列を逆転させたことで納得のいくものとしてすんなりと入ってきます。百田さんの読ませる技術も凄いと思います。さて「七人の魔女」とは?すぐに下巻へ。
読了日:3月9日 著者:百田尚樹
銀の匙 Silver Spoon 11 (少年サンデーコミックス)銀の匙 Silver Spoon 11 (少年サンデーコミックス)感想
一年がいよいよ終わりですね。寮からみんなが出て行ってしまうのは少し寂しい気がしますが、八軒が自分からしたいことに焦点を絞り始めたのがとても眩しく、嬉しく思います。都会の高校生では全く考えないことを彼らは考えて動いているのだと実感します。八軒父の考えていることが少し明らかになったことも嬉しいです。連載の最初のころエゾノーの一年を描くということだった気がしましたがもっと先まで読ませてくれるのかな?それにしてもラストページには驚きました。大川先輩…。
読了日:3月7日 著者:荒川弘
アルモニカ・ディアボリカ (ミステリ・ワールド)アルモニカ・ディアボリカ (ミステリ・ワールド)感想
前作文庫版の書下ろしの事件が出てくるので文庫版でも読んでおいてよかったです。前作から5年経ち失踪中の彼らがどう関わってくるのか楽しみに読み始めましたが、100ページで息を飲むことになりました。前作と同様に当時の英国の温度や湿度まで伝わってきそうな繊細な描写。いろいろな伏線が一本につながり過去と現在の事件が明らかになった時、切なさとやりきれなさに押しつぶされそうになりました。こんなに残酷で哀しいのに、手が震えそうなラストの一文。どうかこの後の彼らが救われることを祈ります。
読了日:3月7日 著者:皆川博子
昭和の犬昭和の犬感想
確かに昭和の犬って今の犬たちとは違いましたね。中型以上で外にいるのが当たり前でしたし。戦争を経験していない私たちの時代の父親の中にも似たような父親はいたしそれを子供たちは当たり前に受け入れていました。隅から隅まで昭和の香りがぎっしり詰まった犬との物語。この本には確かに昭和の犬たちに癒され心の支えとしていた人たちがいました。目の前に映像として浮かんでくるほど読み易いのに淡々と話が進むからなのか、犬を飼ったことがないせいなのか途中から何が魅力なのかわからなくなってしまい、読後残らなかったのが残念でした。
読了日:3月4日 著者:姫野カオルコ
晴れた日は図書館へいこう ここから始まる物語 (ポプラ文庫ピュアフル)晴れた日は図書館へいこう ここから始まる物語 (ポプラ文庫ピュアフル)感想
今回も期待を裏切らず、優しい雰囲気そのままの気持ちの良いストーリーです。図書館の本に対するマナーに関してちょっと悲くなるような行動をする人物も出てきますが、だからこそこういう本を子供たちが読むことで学ぶことがあるのだと思います。今回も探偵役が一人でないところがいろんな視点があって楽しめました。後味がよかったのは「幻の本」ですが、何気に安川くんの優しさが伝わってくる「空飛ぶ絵本」も好きです。番外編の主人公以外が偶然集って繰り広げる推理合戦「九冊は多すぎる」も作者の遊び心が伝わってきてとても楽しめました。
読了日:3月2日 著者:緑川聖司
ギャシュリークラムのちびっ子たち―または遠出のあとでギャシュリークラムのちびっ子たち―または遠出のあとで感想
子供たちがひとりずつ危険な目に合うというアルファベットブック。訳ももちろん素敵ですが、原文のリズム感と韻を踏んでいるところがとても好きです。内容はみなさんのレビューを見ていて想像がついていたのですが、図書館でお借りして驚いたのがこの本のサイズの小ささでした。これなら購入して自宅においても邪魔にならない!購入して大切に読み返したいです。イベントを通したことでちょっと違った目線でもこの本を読むことができ、とても楽しかったです。
読了日:3月2日 著者:エドワードゴーリー
ノックス・マシンノックス・マシン感想
このミス一位ですが、ミステリを題材にしているだけで分野的にはSFですね。しかもある程度の海外古典ミステリを知らないと純粋に楽しむのは難しいと思うのでかなり読者を選ぶのではないかと思います。表題作は星新一のショートを読んだ後のような読後感で、それまでに積み重ねられるデタラメな論理の薀蓄がなんともおかしく楽しく読めましたがこれも好みがあるかもしれません。凄いと思ったのが「バベルの牢獄」でもあとがきを読んで苦労したのが必然性だったと知って笑ってしまいました。作者自身が楽しんで書いているのがよく伝わってきました。
読了日:2月27日 著者:法月綸太郎
ビブリア古書堂の事件手帖 (5) ~栞子さんと繋がりの時~ (メディアワークス文庫)ビブリア古書堂の事件手帖 (5) ~栞子さんと繋がりの時~ (メディアワークス文庫)感想
栞子が気にしている部分が全く想像できず、何を隠しているのかが気になって実は前半かなりイラつきました。この期間をこらえていた大輔は偉いと思います。そして、さらっと何も考えずに出てくる男前なセリフ。栞子でなくてもやられます。二人の関係や母親との関係はもちろんですが、私は志田の過去に関する部分、そして門野澄夫の人間的なところがとても印象に残りました。ブラックジャックなど興味深く読みましたが、実際人間関係やラストの展開にすべて意識を持っていかれてしまい、古書の印象は薄かったかもしれません。次作も待ち遠しいです。
読了日:2月27日 著者:三上延
つれづれ、北野坂探偵舎    心理描写が足りてない (角川文庫)つれづれ、北野坂探偵舎 心理描写が足りてない (角川文庫)感想
喫茶店で別テーブルに向かい背中合わせに座る男性二人。彼らが背中越しに会話しながら今見かけた謎に関して推理しながら作るストーリー。プロローグでこの不思議な二人の関係にガッツリつかまれ一気に物語の世界に入りました。ところが話はもっと深く、なんと特殊設定が加わります。連作短編かしら、と思えば今度は見事にそれらは繋がっていき…。実は作家と元編集者という彼らが紡ぐ物語。ミステリですがとにかく設定と登場人物に惹かれました。シリーズとしては物語はまだ始まったばかり、なのでしょうね。続きが楽しみです。
読了日:2月25日 著者:河野裕
晴れた日は図書館へいこう (ポプラ文庫ピュアフル)晴れた日は図書館へいこう (ポプラ文庫ピュアフル)感想
元々は児童書のようですが読みにくいようなことはありません。題名通り図書館が舞台になっていて本にまつわる優しくて軽いミステリになっていました。視点が10代で、決まった探偵役ではなくその時々で関係者によって謎が解かれていくところも優しい印象を与えるのではないかと思います。図書館の本や仕事について初めて知ることもあって軽くてもしっかりとしたお話でしたので、とても楽しめました。番外編がちょっとやられた感がありとても好きです。
読了日:2月25日 著者:緑川聖司
輝く夜 (講談社文庫)輝く夜 (講談社文庫)感想
クリスマスイブの5編の泣ける奇蹟。とのことですが、普段の私なら受け入れ難いかもしれません。ところがたまたま読んでいたのは病院での数十分の不自由な時間。右手一本でそれでも読み進めるには、このべたべたな甘さと短さがちょうどよかったのです。といってもそんな状況では「ケーキ」は純粋にハッピーエンドなのか考えてしまったのですが、「猫」と「タクシー」は本当にベタな展開で優しくてよかったです。「サンタクロース」だけは意表を突かれました。私も母という立場だからでしょうか。読み終わってからの余韻がすごかったです。
読了日:2月23日 著者:百田尚樹
華々しき鼻血華々しき鼻血感想
イベント「エドワード・ゴーリー誕生日一日読書会」にて。題名だけでもすごいインパクトですね。表表紙と裏表紙の絵を比べてみるだけでもいろいろ考えてしまいます。副詞部分がアルファベット順のアルファベットブックになっていますが、副詞ってこんなにいろいろなものがあるのだと改めて驚きます。見開きごとの繊細な絵とワンセンテンスに前後の物語まで想像させられて不思議な余韻をもらいました。中でも想像を掻き立てられるPとSがお気に入りです。じっくり見ると人々の表情が何とも言えません。特にLの紳士…あれはいけませんっ!
読了日:2月22日 著者:エドワードゴーリー
不幸な子供不幸な子供感想
イベント「エドワード・ゴーリー誕生日一日読書会」にて。初ゴーリー作品です。小公女を彷彿とさせるストーリーですが、最後まで見事に救いがありません。最後のページには想像していても息を飲みます。すべてのページにひっそりと描かれているトカゲのような何かが怖さを増していて、それに気づいてから表紙絵に戻るとドキッとします。感情を一切表さず淡々と綴られる文章と繊細なペン画に引き込まれ何度も読み返してしまいました。現実世界というものは案外こういうものなんでしょうか。彼はこの後もずっと探し続けるのでしょうか。
読了日:2月22日 著者:エドワードゴーリー
文庫版 姑獲鳥の夏 (講談社文庫)文庫版 姑獲鳥の夏 (講談社文庫)感想
再読…のはずなんですが、覚えているのは京極堂の薀蓄に圧倒されたことと本格というにはちょっと変則かな、という印象のみ。ですが今回は以前に圧倒された部分の話がとても面白く惹きこまれてぐんぐんと読み進めていました。実際に事件の核心に迫ってくるとさらに拍車がかかってこれだけの厚さを後半はもどかしいほど一気に読み切りました。以前に変則?と思った部分が今回はちゃんと伏線も貼ってあってしっかり本格だったのだとわかり驚きました。堪能しました。それにしてもこれがデビュー作とは本当にすごいですね。
読了日:2月21日 著者:京極夏彦
上石神井さよならレボリューション上石神井さよならレボリューション感想
連作短編です。盗撮という趣味は受け入れられませんが、キャラの設定は上手くとても読み易かったです。表紙絵が上手く登場人物の特徴を捉えていますね。度を越して天然の川野がやたら可愛いです。消失シリーズよりかなりキャラクターがラノベ寄りなんだと思います。もちろんちゃんとミステリですが唐突だったりわかりにくかったりとちょっと無理を感じる部分もありました。キャラに助けられて楽しく読めましたが、もう少し長く掘り下げて書くか、逆にすっきり省くかするともっと違う印象になると思うので、シリーズ化するなら今後を期待したいです。
読了日:2月17日 著者:長沢樹
とうざいとうざい感想
江戸文楽ミステリとのことで興味を持って手に取ってみました。最初はだれが探偵役なんだろう?なんて思いながら読み進めていたのですが、人形浄瑠璃という舞台がとても魅力的で、登場人物がみな容姿や性格までそれぞれはっきりと生き生きと描かれているので、気づけばすっかりこの世界に取り込まれ、時代小説として楽しんでいました。最終的にミステリとしては薄味だったとは思いますが、この世界をよく知らない私でも存分に楽しめるものでしたので満足です。キャラがとても魅力的ですのでこの作家さんの他の作品も是非読んでみたいと思いました。
読了日:2月16日 著者:田牧大和
インサート・コイン(ズ)インサート・コイン(ズ)感想
マリオ、ぷよぷよ、ストⅡ、シューティング、ドラクエ。それぞれがテーマになったミステリ短編。好みとしては甘酸っぱい青春を感じるぷよぷよパート。でもラストのドラクエが秀逸でした。謎が解けたときの一文に「ああ…」と思い、読後章題に息をのみました。ゲームを体験していない方や世代でも読めないことはないのでしょうが、私自身ドラクエはもちろんマリオも落ち物もシューティングも呆れるほどやりこんだのでそれぞれの薀蓄も楽しく読めましたが、全くしたことのないストⅡパートはよくわからなかった部分があり、読者を選ぶかもしれません。
読了日:2月16日 著者:詠坂雄二
無花果の実のなるころに (お蔦さんの神楽坂日記) (創元推理文庫)無花果の実のなるころに (お蔦さんの神楽坂日記) (創元推理文庫)感想
神楽坂という舞台設定が好きです。元芸者のお蔦さんと、その孫である男子中学生の望くんの日常に絡むミステリ。事件自体は実はかなり重くて日常ミステリとして片付けられないものもありますが、料理上手な望くん視点のせいなのかきりっとしたお蔦さんの背中がすっと想像できるせいなのかあるいは神楽坂の人々のせいなのか、ストーリーはとても柔らかくするすると読めてしまいました。シリーズとしては素敵な設定だと思います。強烈なインパクトがあるわけではないのですが、軽く読めて雰囲気もよかったので続きも是非読んでみたいと思います。
読了日:2月14日 著者:西條奈加
新釈 にっぽん昔話新釈 にっぽん昔話感想
もちろん昔話の大筋はそのままですが、「新釈」の部分が新鮮で面白いながらも苦く感じる部分がありました。イケメンさるに誑かされるかに「さるとかに」、実はしたたかでドライな「一寸法師」、「笠地蔵」なんてお爺さんとお婆さんは冒頭でオレオレ詐欺にやられてます。また息子たちが戻ってこない理由と気持ちがわかると本当に切なくなります。ちょっと変わった試みだと思っていましたがあとがきを読んで納得しました。もっと風刺を効かせて新釈部分がきつくても良かった気がしますが、この本の意義ゆえにこれでちょうどいいのかもしれません。
読了日:2月13日 著者:乃南アサ
植物図鑑植物図鑑感想
素直な印象としては劇甘なファンタジー。携帯小説だったと聞いて納得してしまうような展開です。こんなの現実は絶対ない!と思い、こんな男は許せないとも思い、さやかの強さが悲しく感じて、それでも心がささくれ立っているときとか再読したらいいだろうとも思えてしまう不思議な優しさ。恋愛はともかく、植物図鑑としての野草の薀蓄や調理法などは読んでいて楽しかったです。一番心に残ったのはカーテンコールの「午後三時」の杏奈ちゃん。なんて素敵な女の子なんでしょう。このおかげで読後感もこの一冊の価値も私の中でぐんとあがりました。
読了日:2月13日 著者:有川浩
三匹のおっさん ふたたび三匹のおっさん ふたたび感想
比べてしまうと前作の方が痛快で爽快だと感じますが、もちろんこちらが劣るということではありません。ただ、今回は、第一話の貴子の同僚、第二話の万引き少女の母親、そして「最近の年寄りは」と言われる人たち等、物語の中だけではなく現実に少なからずいることが想像できて痛々しくて読んでいて哀しくなってしまいました。でも今回は貴子さんの成長が嬉しく、康生さんたちの子供のころの話も興味深く読みました。またノリさんのこの先も気になります。もちろんますますいい男になっている祐希のこの先も。是非続きをお願いします。
読了日:2月12日 著者:有川浩
開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU― (ハヤカワ文庫 JA ミ 6-4)開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU― (ハヤカワ文庫 JA ミ 6-4)感想
単行本では既読。書かれていない部分に何が起こっているのかわかって読むと何とも繊細に綺麗に伏線を潜め、ストーリーが魅力的に展開していっているのかわかり感動します。それぞれの場面がこの時代のセピア色の映画を見ているように目の前に展開しある場面では路地裏の空気や湿り気まで伝わってきそうでした。再読だからこそわかる二人の強さも楽しみました。文庫化にあたって収録された本編の前日譚にあたる短編が、登場人物それぞれの性格がよく出ていてとてもよかったです。楽譜もついていますし、これから手に取られる方は是非文庫でどうぞ。
読了日:2月10日 著者:皆川博子
金色機械金色機械感想
1747年のある夜を基本にして過去がいろいろな視点で場所で、時代さえ前後しながら語られます。ちょっと不思議な金色様とそれぞれ不思議な力や運命に翻弄された人たち。後半これらが次々と繋がっていくので一気に読み進めていくしかありません。想像する世界はモノクロなのにとても澄んでいて、特に女性たちが翻弄されるだけではなくとても強いのが印象的です。政嗣様と金色様に涙し、ラストシーンは神々しささえ感じてしまったほど美しかったです。ちょっと不思議で哀しく切ない物語を楽しみました。「また別の物語」も是非お願いしたいです。
読了日:2月9日 著者:恒川光太郎
十三回忌 (双葉文庫)十三回忌 (双葉文庫)感想
「やり過ぎミステリ」と聞いていたのですが、読中はどこがやりすぎなのかと不思議に思いながら読み進めていました。読み終わってみると伏線を貼るのも回収するのもしっかりできていてちゃんと本格トリックでしたし、幕間にも想像はつくもののそのままではないし、いろいろ仕込んであってこういうところがやりすぎと言われるのかな、となんとなく納得する部分がありました。警察や探偵がもう少し魅力的だともっと読み易くなると思いますが、楽しめましたしこの作風は割と好みです。デビュー作のようですので成長した他の作品も是非読んでみたいです。
読了日:2月8日 著者:小島正樹
メグル (創元推理文庫)メグル (創元推理文庫)感想
初乾ルカ作品です。日常の謎というより世にも奇妙な物語に近いでしょうか。大学学生部女子職員から半ば強制的に与えられるアルバイト。確かに学生たちは選ばれていて、その仕事を通してそれぞれ何かを得て自分と向き合い変わっていきます。どのお仕事の終わり方も綺麗です。最初の一編がすごく怖かったのでびっくりしましたが、これも読み終わってみると決して怖いだけじゃなかった。むしろ唯一悠木さんが勧めなかった「アタエル」の後味が怖くて苦かったです。(でもこういうのも好きですけど。)好みはやはり「モドル」と「タベル」かな。
読了日:2月8日 著者:乾ルカ
限界集落株式会社 (小学館文庫)限界集落株式会社 (小学館文庫)感想
祖父の田舎である限界集落に立ち寄った主人公がそこで農業法人を立ち上げてその集落をなんとか再生しようとする話ですが、とても読み易くぐいぐい引き込まれ一気に読まされてしまいました。現実では絶対にこんなにうまくは行かないけれど、上手くいきすぎる部分もとても気持ちよく楽しめました。限界集落だけではなく、いわゆる居場所を失った若者の再生の話としても良かったです。優が乗り出すきっかけが少し弱いと思うのと、ラストの躓きと立て直しが俗っぽく感じてしまったのが少し残念でしたが、読後感も良く楽しい読書の時間でした。
読了日:2月4日 著者:黒野伸一
密室蒐集家 (ミステリー・リーグ)密室蒐集家 (ミステリー・リーグ)感想
忙しい時の細切れ時間で読んだのですが、短編でとても読み易く、楽しむことができました。一つ一つはあっさりはしているのですがどれもしっかり本格の密室でよくできているのではないかと思います。密室がどうやって作られたか、どうして密室にしなければならなかったか、本当に密室に特化して展開されているので状況が理解しやすく、一緒になって考えるのがとても楽しかったです。密室蒐集家が不思議な人で警察でも伝説的な人物という設定が、逆に彼の印象を薄くしてしまったようでそれが少し残念でした。
読了日:2月2日 著者:大山誠一郎
白戸修の狼狽白戸修の狼狽感想
再読。一作目よりドキドキ感は大きいかもしれません。意外と細かい内容は忘れてしまっているもので…やはりお人好しのインパクトが強すぎでしょうか。再読でも十分楽しめました。以下「逃亡」用に覚書。「ウォールアート」落書き。七倉豊、清水(町内自警団)「ベストスタッフ」仙道忠行(大学の先輩)雛美紀子(アイドル)「タップ」諸刃冴子(盗聴バスター)「ラリー」スタンプラリー。宇田川一(私立探偵)「オリキ」中林(NA KA NO‐KUリーダー)君川結花(会員番号003)犬蔵藤男(アイアンロックス)ニトロ(ダフ屋)
読了日:1月28日 著者:大倉崇裕
白戸修の事件簿 (双葉文庫)白戸修の事件簿 (双葉文庫)感想
再読。3冊目を読んであまりにも登場人物を覚えていなかったので確認に。もちろんお人好しは最初からで再読でも忘れている部分もあり、しっかりと楽しめました。以下「逃亡」用に覚書。「ツール&ストール」スリの話。山野井大介(もと刑事)山霧純子。「サインぺインター」ステ看板。日比登(何でも屋)「セイフティゾーン」銀行強盗。芹沢哲生(清掃員)「トラブルシューター」ストーカー。北条隆一(私立探偵)杉本恵(被害者)「ショップリフター」深田重子(万引きGメン)山霧純子。
読了日:1月28日 著者:大倉崇裕
史上最強の内閣 (小学館文庫)史上最強の内閣 (小学館文庫)感想
モデルが誰なのか、名前だけではなく口調や性格までそっくりでわかりやすく、パロディとして楽しめる本なのだと思いますが、あまりに誰が誰なのかわかるので逆に風刺が強すぎる気がして、大丈夫なのかしら、と読んでいて心配になってしまいました。正直あまり好きなタイプの話ではないのですが、一気に流されるように読んでいき、ラストに用意されていたことには不意打ちで驚かされました。結局これが普通に発刊されて読んで楽しめるということ自体、今の世の中が平和ということなんですね。
読了日:1月25日 著者:室積光
鍵のない夢を見る鍵のない夢を見る感想
5つの短編が別々の犯罪をテーマに女性の視点で描かれています。辻村作品には自分の好きでない部分を棒でぐりぐりつつかれるような嫌な思いを受けることが多いのですが、今回はワイドショーの世界のようでいつもよりは遠く感じました。でもどれも全くの他人事ではなくどんな女性もどこかしらに少し持っていて何かの拍子に同じような運命を辿る可能性があるのではないかと思います。男性読者にはこの本の女性たちはただの愚か者でしょうか。一番手伝ってほしいときに夫が忙しくていなかった私には赤ちゃんの誘拐の話が特に印象的で悲しかったです。
読了日:1月23日 著者:辻村深月
玩具修理者 (角川ホラー文庫)玩具修理者 (角川ホラー文庫)感想
短編である表題作はオチが想像できてしまいましたが綺麗にできていると思います。素直にラストに驚ければインパクトはかなりのものでしょう。「酔歩する男」は、核となる理論が楽しかったのですが読んでいるうちにすっかりわからなくなり、ぐるぐる考え続けることになりました。ふと、日常の風景に同じような思いをすることがあります。今の自分自身がなんとも心もとなく感じてきます。頭の中をかき回されたままの感じですが、ラストの余韻は好みです。小林泰三作品初読みでしたが別の作品も読んでみたいと思いました。
読了日:1月23日 著者:小林泰三
熱帯夜 (角川ホラー文庫)熱帯夜 (角川ホラー文庫)感想
曽根圭介作品を初めて読みました。3作品どれも確かにホラーなんですがしっかりミステリです。一見関係のなさそうな何人かの人物の視点がラストに上手く繋がって別の絵を見せてくれる手法はとても好みで、三作とも最後にいろいろな意味で衝撃が用意されていました。伏線もうまく張ってあったと思います。ブラックだったりシュールだったり、ホラーの背筋の寒くなるような怖さではなく、なんだか落ち着かない気持ち悪さを感じました。それなのにこの作家さんの別作品をすぐ読みたいほど、この世界観には不思議なことに惹かれます。
読了日:1月21日 著者:曽根圭介
白戸修の逃亡白戸修の逃亡感想
物語冒頭からいきなり逃亡せざるを得なくなった白戸君を、今まで出てきたたくさんのキャラたちが助けて奮闘してくれます。この本は長編でほとんどの場面が追手と駆け引きをしながら逃げているだけ。なのに最後まで一気に読ませてしまうリーダビリティはさすがです。逃亡を助けてくれるみんなは今まで出てきたキャラのはずなんですが、実はほとんどのキャラがうろ覚えで残念でした。前の2作は白戸君のお人好しすぎるイメージが強すぎて周辺の人たちはあまり印象に残らなかったのでしょう。もう一度前2作を読んでから再読してみたいです。
読了日:1月20日 著者:大倉崇裕
重力ピエロ (新潮文庫)重力ピエロ (新潮文庫)感想
単行本で何度か既読。私と伊坂作品との出会いでもありました。とにかく好きで映像化作品も見ました。伊坂さんは版型が変わると手を入れると聞いていたので今回文庫の方で読んでみました。時間をおいているせいか変わっている部分はそれほど感じなかったです。もちろん内容はわかっているはずなのに途中からはページをめくる手が止まらずに、隅々まで伏線をたどることに没頭し、また父親の最高のセリフのところで泣いてしまいました。そして今回は前回は知らなかったリンクを楽しめました。黒澤ってこんなに味のあるいい男だったんですね。
読了日:1月18日 著者:伊坂幸太郎
ウルチモ・トルッコ 犯人はあなただ ! (講談社ノベルス)ウルチモ・トルッコ 犯人はあなただ ! (講談社ノベルス)感想
「『読者が犯人』というアイディアを一億円で買ってほしい」という手紙がある作家の元に届くところからこの話は始まります。ストーリー自体にそれほど盛り上がりがあるわけではないのですが文章は読みやすく究極のトリックを期待しながらさらさらと読めてしまいました。最後まで読んでみるとなるほど「読者が犯人」です。ちゃんと伏線もあってしっかりトリックとして成立していると思いますし、読み終わってみると余計な部分もなく綺麗なよくできたストーリーだと思います。ただ、副題通りに「犯人は私だ!」と思うのはちょっと厳しいかも。
読了日:1月16日 著者:深水黎一郎
妖怪アパートの幽雅な人々 妖アパミニガイド (YA! ENTERTAINMENT)妖怪アパートの幽雅な人々 妖アパミニガイド (YA! ENTERTAINMENT)感想
夕士がアパートに来てもう十数年、つまり本編は終わってある程度落ち着いてしまっている状況です。本編ネタバレ満載ですので未読の方は注意!私は楽しく思い出しながら読みました。古本屋のトランクの中身のイラストとか本当にガイドとしてチェックしながら本編を再読したら面白いかもしれません。また好みは別として作者のこだわりはとても伝わってきました。でも一番驚いたのはこの表紙のアパートが紙粘土だったことかも。中には同じく紙粘土のアパートの内部、裏表紙には質感の伝わってきそうなクリとシロもいて読後何度も見直してしまいました。
読了日:1月16日 著者:香月日輪
昼田とハッコウ昼田とハッコウ感想
表紙と舞台が本屋さんであることに惹かれて山崎ナオコーラ作品を初めて手に取りました。最初は冗長に感じてしまったりもしたのですが、するすると物語に引き込まれていくとそれがたくさんの登場人物をふわりと描き上げ読み手に沁みこませていく手腕なのかなと思います。500頁以上に本当にたくさんのテーマが詰まっています。あまり好きでない言葉がいくつか使われていることは気になりましたが、それを差し引いてもこの独特の熱すぎないけれど一生懸命な優しい雰囲気とストーリーを楽しめました。読後改めて装丁の美しさに惚れ惚れしました。
読了日:1月14日 著者:山崎ナオコーラ
銀の匙 Silver Spoon 10 (少年サンデーコミックス)銀の匙 Silver Spoon 10 (少年サンデーコミックス)感想
今回は大川先輩の印象が強いです。ラクレットグリルを出力最大にした結果…うわぁ、やっぱり(笑)。豚肉ファンドにおいて、値段を決めたり、それが正しかったかどうかは次回わかるなんてところは、ベテランの業者さんと同じなんだと当然のことを再認識させられました。ラベルのくだりも面白いと思いながらも現実を見た気がします。高校生でこれだけの経験ができるって本当にすごい。利益を投資した次回がどうなるかますます楽しみです。ロシア人のお嫁さんがまた素敵でした。そして何より気になっていた彼が!ラストページで目頭が熱くなりました。
読了日:1月13日 著者:荒川弘
妖怪アパートの幽雅な日常(5) (シリウスKC)妖怪アパートの幽雅な日常(5) (シリウスKC)感想
原作を読んでいるのでどうなるのかはわかっています。でも三浦先生の顛末を絵で見るのはなかなかきついものがありました。一方でるり子さんのごはんが絵になると更に美味しそうです。今回は改めて、これが元は児童書で子供たちに聴かせたいようなセリフがいっぱい入っていることを感じました。簡単に言葉でまとめられるようなことではないことを本当にうまく例えて説明していると思います。うちの娘は残念ながら好みがうるさいので読みそうにありませんが。
読了日:1月13日 著者:深山和香
尾崎紅葉の「金色夜叉」  ビギナーズ・クラシックス 近代文学編 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス 近代文学編)尾崎紅葉の「金色夜叉」 ビギナーズ・クラシックス 近代文学編 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス 近代文学編)感想
熱海と言えば「お宮の松」そして貫一がお宮を足蹴にしている銅像。有名なセリフもこれがどんな場面なのかもなんとなくわかります。でもなぜこうなってこの先は?何度か原文を読もうとして数行で挫折していたのですが、この本では上手く名場面を切り取り原文と現代語訳を対比させながら解説やコラムを挟み、とても読み易くしていました。いろいろな資料もとても興味深く楽しめました。とはいってもこれで全部理解した気になろうというのは甘かったです。しかしながらこの後全文にあたればきっと今までより理解しやすいと思うので挑戦してみます。
読了日:1月11日 著者:山田有策
三匹のおっさん (文春文庫)三匹のおっさん (文春文庫)感想
読み始めたとき、息子と嫁があまりにも痛くて放棄しそうになりましたが、彼らがあまり関わってこなかったこともありますが途中から三人の活躍を本当に楽しんで読み進めていました。きちんと成長していく祐希がイイ男ですねぇ。あんな両親でもちゃんと育ったのは祖父母がそばにいたからかな。どの話も軽く片付けているように見えますが実はどれもかなり重い内容を扱っていて結末も現実的です。印象深かったのは第3話のラスト。そして3匹の中では一番危ないノリさんがひそかに一番好きです。イラストも楽しかったですし、続編が楽しみです。
読了日:1月7日 著者:有川浩
EDS緊急推理解決院 (カッパノベルス)EDS緊急推理解決院 (カッパノベルス)感想
「新世紀「謎」倶楽部」は、固定メンバーではなくその時々で有志メンバーだそうですが、今回は緊急推理対策院という面白い設定を作ってそれぞれの短編を上手く時系列で分解して見事に合作長編となっていました。それぞれの作家さんが得意分野を担当しているようでしたが、別シリーズの探偵の名前が出てきたりするところも面白かったです。自分ではたくさんのミステリを読んでいるつもりでいましたが実際はこの本の作家さんたちの半数以上が未読でした。どの作家さんもとても読み易かったので是非作家さんそれぞれの他の本も読んでみたいです。
読了日:1月5日 著者:新世紀「謎」倶楽部
ブラックボックスブラックボックス感想
無菌室内で完全オートメーション化された水耕栽培の野菜たち。その野菜を使って作るカップサラダ。誰も悪くない、誰もが食の、農業の未来のために試行錯誤をしながら努力しているだけ。外食で提供されるものに何が入っているかはわからないとは思っていても、家族の食事を作るためにスーパーで買う普通の野菜が同様だなんて誰が思うでしょう。だからと言って虫でいっぱいのかぼちゃの調理は私にはできませんし、高級な野菜を買うこともできません。内部告発や外国人労働者の問題も絡んで考えさせられることがたくさん詰まったずっしり重い本でした。
読了日:1月4日 著者:篠田節子
はなとゆめ (単行本)はなとゆめ (単行本)感想
このあたりの歴史や人間関係や恋模様の本を好んで手に取っていた私としてはストーリー自体は知っていることで「天地明察」や「光圀伝」と比べてしまうと物足りない感じは否めません。ですが、清少納言の半生や枕草子の元というだけでなく、中宮定子がどんなに魅力的で賢い女性であったか、時代に翻弄されながらも一条帝にどれだけ愛され愛したかということが生き生きと描写されていると思いました。この生きにくい世の中を清少納言が女性といえどもどれだけ自分らしく精一杯中宮のために生きたかもきちんと伝わってきました。読後感も良かったです。
読了日:1月2日 著者:冲方丁
名探偵の証明名探偵の証明感想
少々思うところはありますが、鮎川哲也賞を感じる作品です。新本格の探偵がたくさん出てきたときに十分に楽しみながらも見えないふりをしていた通常ではありえない部分に上手く切り込んでいました。年を取って引退を考える探偵という人間臭いところが評価されたのも頷けます。思いがけずラストが切なく苦いのにも驚きました。若いアイドル的探偵との共演なども上手く作ってあるのですがちょっと欲張りすぎたのは感じます。もう少し修飾的なストーリーは絞って文章もこなれてくればとても読みやすくなると思うので今後の作品を楽しみにしています。
読了日:1月1日 著者:市川哲也

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