7月の読書メーター
読んだ本の数:18
読んだページ数:6355
ナイス数:2163


グランドマンション (光文社文庫)グランドマンション (光文社文庫)感想
「グランドマンション」の住人を主人公にした連作短編集。それぞれはきちんと完結していますが、別の話で前の話に出てきた部屋や住人が主人公になったり、前の話が過去の話として話題になったりとこういう作りは楽しいですね。でも扱っているのは児童虐待だったり年金の不正受給だったり穏便なものではありません。住人に老人が多いのでその関係のお話も多いです。一話ずつがきちんと完結しているのにそれぞれがちゃんと作者らしさを持っているのには驚かされました。結果として軽く読めましたが満足感いっぱいのとても好みの本でした。
読了日:07月24日 著者:折原 一
恋のゴンドラ恋のゴンドラ感想
東野さんの文章は綺麗でとても読みやすいですね。物語の中に無理なく引っ張り込まれ、一気読みしてしまいました。初出は全てスノーボード専門誌SnowBorderの別冊付録。東野さん自身もきっと楽しんで書いたのではないかと想像していました。連作短編で、それぞれの章の脇役が次の章の主人公になったりして、次々と繋がっているので背景を思い出してひやひやしたり笑ったり。こんな偶然は実際にはありえませんが、物語だからそれもよし、です。文庫化されるときは是非彼女のその後がわかるもう一話を加えてほしいです。

読了日:07月24日 著者:東野 圭吾
愚者の毒 (祥伝社文庫)愚者の毒 (祥伝社文庫)感想
2015年の高級老人ホームの老女。1985年の職安が縁で知り合った生年月日が同じ二人の女性。最初はミステリの伏線を探すように読んでいました。でも二章の1965年の廃鉱部落の話になると、炭鉱事故の被害者や家族の悲惨さに、生きるための逞しさと悲しさに、胸が潰れる思いで読み進めました。後半、すごい勢いで物語が組みあがっていき、多少想像がつく部分はあったものの、構成の上手さに舌を巻きました。人生は最期に帳尻が合うものでしょうか。最期にあったのは救いでしょうか。久しぶりにすごい骨太のミステリを読んだ気がします。
読了日:07月23日 著者:宇佐美 まこと
天久鷹央の推理カルテV: 神秘のセラピスト (新潮文庫nex)天久鷹央の推理カルテV: 神秘のセラピスト (新潮文庫nex)感想
人混みで体が腐る男性、整体で若返っていく女性。血の涙を流し聖痕の浮かび上がる聖者。二編目の人でなしの男には、それが後にどんな結果を生むのかわかっているはずなのに、と、怒りが収まらなかったので、最後の年をとることに対する鷹央の見解にとても救われました。ラストの一話は移植の必要な少女の母親が、預言にすがり移植を拒否するという辛い展開。彼女だって胡散臭いのはわかっているはず。新興宗教というのは本当に人の弱いところを突くのですね…。シリーズとしては、鷹央が少しずつ変わっていくのがわかり、嬉しくなりました。
読了日:07月19日 著者:知念 実希人
ダブル・ミステリ (月琴亭の殺人/ノンシリアル・キラー)ダブル・ミステリ (月琴亭の殺人/ノンシリアル・キラー)感想
「月琴亭の殺人」というクローズドサークルものと「ノンシリアル・キラー」というサスペンスミステリを表裏からどちらも途中まで読み進めると真ん中の袋とじが両方の解決編になっているという凝った作りです。一つのミステリを二つの別視点から追うのとどこが違うんだろう?と思いながら読み進めましたが、読み終わってみるとちゃんと違いました。○○的で賛否はあるでしょうが、伏線の張り方等はちゃんとフェアだったと思います。帯の「ただ瞠目せよ! 」という煽りは期待値を必要以上にあげてしまって勿体ないですね。
読了日:07月17日 著者:芦辺 拓
秋山善吉工務店秋山善吉工務店感想
火災で家と主を失うことでスタートしますが、とても素敵な家族のお話です。年寄りと小さな子供が同居してたころの古き佳き時代に想いを馳せました。嫁も息子たちもそれぞれが新しい環境でトラブルを抱えます。それを良い方向に導いてくれる善吉爺さんも春江夫人もすごく素敵でかっこいい。春江夫人のように年を取れたらいいんだけど、なかなかできることじゃありませんね。楽しいばかりのストーリーではありませんが、ラストに彼が墓地で思い至ることはとても素敵です。ちゃんとミステリでもあり、中山さんらしい作品でとても良かったです。
読了日:07月17日 著者:中山 七里
流れる砂 (ハルキ文庫)流れる砂 (ハルキ文庫)感想
シリーズ2作目。冒頭から親子心中というショッキングな展開ですが、勿論事件の始まりに過ぎません。続くのは行方不明事件、放火殺人、不正受給、保険金詐欺…。畝原の魅力はなんといってもハードボイルドらしからぬ一人娘のことを第一に思う普通の父親なところだと思います。その彼が一本筋の通った信念で動くのですから惹かれないはずがない。心折れ、立ち止まりそうになった彼が、通帳の入金欄の振込を見て座り込むシーンには一緒に泣きそうになりました。形を変えて流れる砂を、息を止めて一緒になって凄い勢いで追いかけたような読後感でした。
読了日:07月16日 著者:東 直己
【至急】塩を止められて困っています【信玄】【至急】塩を止められて困っています【信玄】感想
どこかで見たような題名の体裁…そう、信玄が知恵袋で相談しているのです。歴史上の出来事をその時彼らがメールのやり取りをしたら、とかLINEで相談したら、等くすっと笑えるように仕上げています。ちゃんと歴史上人物の人となりも考慮していて、右端に赤で一行ある作者のツッコミも結構面白かったです。太閤検地の絵でこんなに妄想できるのか、とコラムでも爆笑しました。意外と印象に残ったのは「刀狩り」のゴミ出しシール風処理券と「刀狩りを装った詐欺にご注意ください」のポスター。ただ私としては、これは一度読めば充分です。
読了日:07月16日 著者:スエヒロ
エスカルゴ兄弟エスカルゴ兄弟感想
出版社で編集の仕事をしていたはずが、いつの間にか立ち飲み屋をエスカルゴ専門店にして料理人をするということになっていた主人公。巻き込まれ型の彼は本物のエスカルゴとの出会いの後、ぐるぐるを愛する立ち飲み屋の長男秋彦ともに、ぐるぐるしながらお店を完成させていきます。その一生懸命のぐるぐるが凄く良かった。料理描写は見事で、ずっと想像して葛藤していました。エスカルゴファームでの寮生活や雨野家の居候生活など、家族同様の優しい集団生活の描き方も素敵です。一気読みしてしまったけど読み終わりたくなかった。すごく好きです。
読了日:07月12日 著者:津原 泰水
([お]7-8)真夜中のパン屋さん 午前4時の共犯者 (ポプラ文庫)([お]7-8)真夜中のパン屋さん 午前4時の共犯者 (ポプラ文庫)感想
このシリーズ、最初のころは好きで楽しみにしていたのですが、今回は苦戦しました。過去の件が次々と明らかになる一方で、何かがちょっとずれているような…正直、こんなページ数を使わなくてももう少しエピソードを削いで何とかなったんじゃないかなと思います。特にある人の立場の二転三転、さらには本心などあんなに変わる意味はあったのでしょうか。優しい人たちのもと、ちゃんと落ち着きましたが確かにこれで終わりでは気持ちよくはないですね。気持ちよくエンドマークをつけるために次も読みたいと思います。
読了日:07月11日 著者:大沼 紀子
か「」く「」し「」ご「」と「か「」く「」し「」ご「」と「感想
高校生の青春小説。それぞれがちょっとだけ特別な力を持っていたりしますが、だからと言ってすべてが変わるわけじゃない。私のような年を重ねたものでも当時の甘酸っぱい思い出がちょっと蘇ったりします。章ごとに視点が変わり、もちろんそれぞれが自分の知っていることだけを知っていて行動するわけで、さらに一人称だけでなく同じ人物を呼ぶのにも呼び方は変わり、細切れで読んでいたら混乱して何度も戻ってしまいました。一気に物語に入れていたら表紙絵の雰囲気通り爽やかに気持ちよく楽しめたと思うのでちょっと勿体なかったです。
読了日:07月11日 著者:住野 よる
文庫版 魍魎の匣 (講談社文庫)文庫版 魍魎の匣 (講談社文庫)感想
再読。超能力、占い、霊能、宗教の違い。医療行為や科学に価値観を持ち込むこと。人が境界を超えるということの意味…考え続けたまま、「意図的に順序を変えた情報公開」が魍魎を落とす様を呆然と眺めました。そもそも時間的にほんの少しでも偶然が作用しなかったらこれだけのことは起こり得なかった。冒頭シーンをそんな想いで回想しながら到達したラストシーンの久保視点は、全てを表すようで圧巻でした。読後この匣の中に作者がどれだけ無駄なく隙間なく情報開示の順番を考えながらストーリーを詰め込んだかを思い、ため息が出ました。
読了日:07月09日 著者:京極 夏彦
なるへそ (Kindle Single)なるへそ (Kindle Single)感想
Kindle Single。小さな寿司屋に集まった「黒焦げ蜘蛛の会」の面々が落語家ごぼうさんの恋煩いの相手を探そうと、推理を繰り広げる短編。もちろんパロディですが、題名から想像できるように綺麗なオチのついた落語のようで短いながらも十分楽しませてもらいました。
読了日:07月09日 著者:池井戸 潤
強盗プロフェッショナル (角川文庫)強盗プロフェッショナル (角川文庫)感想
ドートマンダーシリーズ2作目。今回ケルプが持ってきたのは、トレーラーハウスで仮営業中の銀行を丸ごと盗むというもの。仲間を集め不可能を可能にして上手いこと盗んだものの、その後すんなりいくはずもなく…。キャラが生き生きと描かれとても読みやすいです。スラプスティックという言葉を途中で何度も思い出しながら一気に読み進めました。意外と一番笑ったのはコーヒーとデニッシュのシーンかも。トレーラーのラストシーンは面白いを通り越してなんだか感動してしまいました。そして…ああ、やっぱり!の予定調和に一安心。楽しみました。
読了日:07月06日 著者:ドナルド・E. ウエストレイク
バスカヴィル家の犬 (角川文庫)バスカヴィル家の犬 (角川文庫)感想
多分数十年前児童書で読んで以来のバスカヴィル家。舞台はロンドンを離れたダートムア。少し前に写真を見ていたので荒涼とした大地をイメージしながら読むことができました。新訳は特に癖もなくすっきりと読みやすかったです。きちんと伏線の張られたミステリらしいミステリだと感じました。結構覚えていたところもあったのですが、抜粋された児童版とはかなり違うんでしょうね。感想としては、ワトソンに頑張ったね、と労いつつ、最も大事なことは何か忘れちゃいけないと叱咤したい、というところでしょうか。久しぶりのホームズ、堪能しました。
読了日:07月05日 著者:アーサー・コナン ドイル
五色の舟 (ビームコミックス)五色の舟 (ビームコミックス)感想
原作elevenを読んだのがかなり前だったので、まず原作を再読してから読みました。原作自体を自分自身の中できちんと消化してから目にしたこともあり、ものすごく丁寧に綺麗に漫画化されているのがよくわかりました。特に最終話は原作を補って余りある美しさでとてもとても良かったです。賞を獲ったのも納得です。
読了日:07月03日 著者:近藤ようこ,津原泰水
11 eleven (河出文庫)11 eleven (河出文庫)感想
単行本では既読です。今回再読してみて、かなり人を選ぶ作品集だろうというのは改めて思いました。SFに分類されるものが多いでしょうか、同じような不思議の世界でも幽明志怪シリーズの怪異とは全く違います。「琥珀みがき」が一番好みだった前回と違い、今回は「五色の舟」がすごく良かった。前回私はラストがきちんと消化できていなかったのかもしれません。そして前回名前をあげてない「延長コード」が凄く沁みました。「微笑面・改」「テルミン嬢」「土の枕」は再読でもやはり好き。きっとまた再読するでしょう。
読了日:07月03日 著者:津原 泰水
蘆屋家の崩壊 (ちくま文庫)蘆屋家の崩壊 (ちくま文庫)感想
一編目はたった7p。大宮の豆腐を想像していたら最後の一行で思わず本を取り落としました。映像でガツンと頭に貼りつくラスト!…無職の猿渡と小説家の伯爵が様々な場所で出会う、夢か現かどこか不思議でやっぱり怖い怪異の数々。不思議の余韻の系統が全て違って素晴らしいです。表題作は純粋に、「猫背の女」はひたすら怖く「カルキノス」は自分の理解力を疑い、「ケルベロス」の最後の一行の不安定さに手が止まる。「埋葬蟲」は虫嫌いには酷な映像です。そして「水牛群」で怪異に振り回される頃には、猿渡がとても愛しい人間になっていました。
読了日:07月02日 著者:津原 泰水

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