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12月の読書メーター
読んだ本の数:25
読んだページ数:6705
ナイス数:4705


妖異金瓶梅  山田風太郎ベストコレクション (角川文庫)妖異金瓶梅 山田風太郎ベストコレクション (角川文庫)感想
明の長編小説「金瓶梅」をもとにして、西門慶と多くの夫人たちの話を連作短編のミステリにしています。夫の寵愛を受けようと密かな戦いが繰り広げられる中、事件は起こり、西門慶の悪友でたいこもちの応伯爵が毎回真相を見抜くのですが…。最初はただただ恐ろしいと思える彼女が、読み進めるにつれ、愛のためならなんでもするとても可愛らしい人になっていきます。ミステリ好きならトリックは楽しめること間違いなし。15編すべて同じように進むかと思ったら、彼らをラストまできちんと書ききっていて、長編としてもとても良かったです。
読了日:12月28日 著者:山田 風太郎
火定火定感想
平城京の庶民救済施設・施薬院で働くも嫌気がさしている官人、蜂田名代。一方冤罪によってすべてを失った元侍医、猪名部諸男。そんな二人に降りかかったのは天然痘によるパンデミック。対処療法しかない時代、凄い勢いで広がります。どうしようもない悲しみや怒りを民衆はどこにぶつけるのか。逃げ出したいのが当たり前の状況で必死に戦う医師たちや、真っ先に犠牲になる弱者の姿を胸が潰れる思いで読み進めました。人間の強さと弱さ、そしてたくさんの犠牲の上での医学の進歩。たくさんの事がずっしりと心に残る作品で、とても良かったです。
読了日:12月27日 著者:澤田 瞳子
シネマコンプレックスシネマコンプレックス感想
畑野さん初読みです。シネマコンプレックスの従業員やアルバイトたちのクリスマスイブの一日の仕事の様子が、違う担当の視点から連作短編の形で描かれます。スタッフたちがどんなことをどんな風にしているのかが、経験された方ならではの生き生きとした筆致で伝わってきました。登場人物に自分を重ねて、あるあると思ったところも少なくありませんでした。たった一日の情景で少しずつ5年前の事件を明らかにしていく所はとても好みです。一歩踏み出せるラストもとても良かった。読後見る表紙イラストは晴れやかで本当にキラキラと美しく見えました。
読了日:12月24日 著者:畑野智美
死の泉 (ハヤカワ文庫JA)死の泉 (ハヤカワ文庫JA)感想
一部は第二次大戦下のドイツ。ラストはとても先が気になる状況で終わっています。悶々とする中、二部は戦後15年。読み手を翻弄しながらこの間になにがあったのか、少しずつ現在の状況から垣間見える時の破片。色々なものが必然のように繋がる様を息をのんで追いかけました。そして三部。世界観から構成からすべてが大満足のラスト。なのに「あとがきにかえて」が余韻に浸っていた私を椅子から転げ落としました。徐々に頭の中に浮かび上がったものにすべての違和感が解消され、思わずため息が出ました。凄いものを読みました。皆川さん大好きです。
読了日:12月23日 著者:皆川 博子
デビル・イン・ヘブンデビル・イン・ヘブン感想
東京湾に出現した楽園「カジノ特区」へ異動となった諏訪刑事が自殺処理された転落死事件を疑問視し、謎を追います。近未来がこんな形になるとは想像したくありませんが、こんな風になる危険性も潜んでいるのでしょう。高齢者が食い物にされる世の中は本当に悲しい。四面楚歌の状況で果たして諏訪はいつまで正義でいられるのか、祈るような気持ちで読み進めました。個人的に前日譚であるスノウ・エンジェルを先に読んでいたため変に意識してしまったのが残念でした。これ自体が悪いということではないのですが、私は鏑木シリーズの方が好みです。
読了日:12月22日 著者:河合莞爾
世界は密室でできている。 (講談社文庫)世界は密室でできている。 (講談社文庫)感想
「煙か土か食い物」において、名探偵として登場しあっという間に退場していったルンババが中学生のときのお話。隣の家に住む親友、友紀夫が彼と行動を共にし、連続殺人や密室殺人の謎を次々と解いていきます。謎解きはありますが、この話の肝はそこではなく、中学生の彼らが陥ってもがいている密室からいかにして抜け出すか、彼らの成長譚でもあるところなのでしょう。こんなに人間の葛藤を描き、勢いのある小説はミステリや青春小説の枠では囲えない、いわばカテゴリ「マイジョー」でしょうか。とても良かった。人を選ぶ本ですが私は大好きです。
読了日:12月20日 著者:舞城 王太郎
ふたごふたご感想
私小説ですから、似たようなことを経て今のセカオワがあるということなのでしょう。意外といったら失礼ですが、しっかりした苦みの青春小説で、文章も綺麗で読みやすいのに彼女たちの叫びが聞こえてくるようで、最後までぐいぐいと読まされてしまいました。普段本を手に取らない人たちにも読んでもらえると思います。直木賞の候補作に異論はありません。ただ、5年かけてこれを書かれたこと、彼女がすでにアーティストであることを思うと直木賞は今後たくさんの本を書かれるであろう他の方が受賞してほしいな、と個人的にはちょっと思います。
読了日:12月20日 著者:藤崎 彩織(SEKAI NO OWARI)
サーチライトと誘蛾灯 (ミステリ・フロンティア)サーチライトと誘蛾灯 (ミステリ・フロンティア)感想
表題作は第10回ミステリーズ!新人賞受賞作。連作短編の形で、魞沢泉という虫好きの男がなんとなく事件を解決してしまいます。魞沢は泡坂妻夫氏の亜愛一郎を彷彿とさせ、たまに聞き間違い等で読み手の笑いを誘うのですが、変なパクリではなくきちんと書かれていて亜愛一郎のファンの私ですが、とても好感が持てました。受賞作の表題作がとても良いです。他は突出してはいないかもしれませんが同じような展開でも読後感がみな違って一冊通して読むとまとまりを感じます。このシリーズも書いて欲しいですし、他の違ったタイプの話も期待しています。
読了日:12月18日 著者:櫻田 智也
ねじの回転 (光文社古典新訳文庫)ねじの回転 (光文社古典新訳文庫)感想
怪奇小説として有名な本作。怪談話をすることになった男性がすでに亡くなった知り合いの女性の手記を読みます。彼女は家庭教師先で幽霊と出会うのですが前半はとにかく彼女の懊悩ばかりで全く幽霊の怖さが伝わってこず、読みにくかったです。後半一気に話が動き始め、読むスピードも上がったのですが、たどり着いたラストシーンには驚愕しました。その後戻ったり読み返したりして、自分なりの答えを見つけましたが、読まれた方によってきっと違う解釈があると思います。これはきっちりした日本の怪談とは違う不安定さが魅力なのかもしれません。
読了日:12月17日 著者:ヘンリー ジェイムズ
校舎五階の天才たち (講談社タイガ)校舎五階の天才たち (講談社タイガ)感想
自殺した少年からの手紙により、二人の少女(天才少女と普通の文学少女)が謎を追います。犯人探しのミステリとくくるのはちょっと違いますね。タイガというレーベルらしく広義のミステリ、これは青春群像劇がメインということになるでしょうか。天才は何をもって天才というのか、スクールカーストとは違い、決して他の人から疎まれることなどないのに、普通の人とは混じりあえない彼らなりの理屈が伝わってきます。辛口評価が多いですが、私はこれは若いからこそ書けたものではないかと思います。デビュー作ですからこの先の作品が楽しみです。
読了日:12月15日 著者:神宮司 いずみ
忌憶 (角川ホラー文庫)忌憶 (角川ホラー文庫)感想
「記憶破断者」の二吉が本作に出ていたと知り、順番は逆ですが、手に取ってみました。3つの中編。「奇憶」二吉の友人でありダメな男、直人。彼が幼いころ見ていた景色を徐々に思い出し、最終的にたどり着くのは…。「器憶」直人の恋人だった女性と腹話術に夢中になった男性との話。このオチはなかなか強烈です。この後どうなったのでしょう。「垝憶」二吉が前向性健忘になった理由と、肉の秘密が少しわかります。実は3作のなかでこれが一番怖かったです。ひいっと叫ぶような怖さではなくじわじわと沁みる気味の悪い怖さ。でもこういうの好きです。
読了日:12月15日 著者:小林 泰三
思い出した訪問思い出した訪問感想
いつも通りの緻密さですが、今回はいつもの子供に残酷だったりよくわからないけど優しい、とは違います。女の子が家族とともに海外へと渡り、色々な経験をしますが、楽しいはずのそれがどこか不穏な様子で描かれます。彼女はある老人と出会い、一つの約束をするのですが…。変な形のトピアリー、片足の欠けた彫像、無を感じるような背景…いったい何を意味するのでしょう。いつもの猫と奇妙な虫だけが妙な安心感を与えてくれます。でも、いつもと違う切なさをまとってもやっぱりゴーリーはゴーリーです。何度もめくって隅々まで堪能しました。
読了日:12月12日 著者:エドワード ゴーリー
サキ―無口になったアン夫人 (バベルの図書館)サキ―無口になったアン夫人 (バベルの図書館)感想
サキを図書館で物色していて、バベルの図書館?と思いながら書庫から出してもらったら、面白い版型で驚きました。ショートストーリーの名手として有名ですが、サキのオチは本当にブラックで、いや、ブラックを超えて残酷で怖かったりします。一話目の表題作のラストでいきなり頭が真っ白になり、ああ、サキってこうだった、とあっという間に世界に取り込まれました。初読の話が多く楽しめました。好み、というか長く心に残りそうなのは「納戸部屋」「ゲイブリエル-アーネスト」「あけたままの窓」「スレドニ・ヴァシュター」「邪魔立てするもの」
読了日:12月12日 著者:サキ,ホルヘ・ルイス・ボルヘス
極楽プリズン (幻冬舎文庫)極楽プリズン (幻冬舎文庫)感想
火事の渋滞に巻き込まれ、横浜の宿泊をあきらめてバーに入ったシングルマザー理々子。隣り合わせた男が、妙な話を始めます。あまりにもありえない、不思議な話に暇つぶしのつもりが、すっかり夢中になり自分の境遇や過去にも思いを馳せる彼女…。木下さんの話には無駄がありません。どれもこれもが伏線で、最後に綺麗につながるのです。今回もぶっとんだ設定ですが期待通り綺麗にピースが繋がり、満足、といいたいところですが…うーん、決して悪くはないですが、普段の木下作品と比べるとインパクトは薄いです。お薦めするなら別のを薦めるかな。

読了日:12月11日 著者:木下 半太
江戸川乱歩傑作選 (新潮文庫)江戸川乱歩傑作選 (新潮文庫)感想
短編なのに素晴らしい本格作品、とお薦めいただいた「二銭銅貨」。なるほど納得!なぜこれを今まで読んでいなかったのだろう、と思ったほどです。面白かったです。「二癈人」ラストが意外で思いがけないインパクトがありました。これもとても良かった。「心理試験」既読。読みやすくオチも綺麗な本格です。こういうのは安心します。収録は他に「D坂の殺人事件」「赤い部屋」「屋根裏の散歩者」「人間椅子」「鏡地獄」「芋虫」。読友さんに基本図書と言わせる本書、なるほど有名どころを抑えていると思います。既読作もすべて再読し、楽しみました。
読了日:12月10日 著者:江戸川 乱歩
このミステリーがすごい! 2018年版このミステリーがすごい! 2018年版感想
毎回思いますが、この手の本で隅から隅まで嘗めるように読めるムック本は私にはこれ以外思いつきません。上位に入っていて読んでいない本は読もう、と思えるし、対談も本当に楽しい。隠し玉も毎年楽しみにしているひとつです。印象深かったのは、今の若者世代は「館シリーズの」ではなく、「Anotherの」綾辻行人という言い方をするということ。30年という月日は決して短くはないですね。/他にこの手の本を何冊か買ったり読んだりしましたが、読了本に残すほどではないので、それらについてをコメント欄でさらっと。
読了日:12月10日 著者:
慈雨慈雨感想
警察官を定年退職し夫婦でお遍路の旅に出た神場。途中で幼女殺害事件を知り、過去に自分が携わった事件と酷似していることに気づき、かつての部下と電話で連絡を取る…。過去の事件に対する傷と悔恨もあり、ただひたすら第三の事件を起こすまいと考える神場と、彼を信じて動くかつての同僚と部下。こんなに重い話なのに読後感じるのは、とにかくたくさんの人たちの正義感と優しさ。お遍路の旅の途中で出会う人々からのハッとする言葉の数々。奥様の強さ。ラストシーンに、そして「慈雨」という題名に納得の物語でした。
読了日:12月10日 著者:柚月 裕子
敵の名は、宮本武蔵敵の名は、宮本武蔵感想
題名通り、武蔵と一戦を交えた人達から見た武蔵を連作短編の形で紡ぎ出します。描写が細やかで切なく痛々しい。登場人物たちのモノクロの画にパッと鮮血が散る様を頭の中に何度も見ました。描き出される武蔵は相手により違った一面を見せるのですが、読み手にはパズルを埋めるように少しずつ武蔵の人となりが見えてくるのが見事です。そして読了後私が見てきたのは武蔵だけのストーリーではなかったことに改めて気づきます。書き下ろされた最後の一編が映画のラストシーンを見るようで、沢山のことを想像し胸が痛くなりました。読んで良かったです。
読了日:12月08日 著者:木下 昌輝
素敵な日本人 東野圭吾短編集素敵な日本人 東野圭吾短編集感想
短編集で、少しSFっぽい話が多いですが、どれも違ったテイストのものばかり。綺麗に落としたり、先が気になったり、じーんとしたり、しっかりミステリだったり。一番好きなのは最終話の「水晶の数珠」。不穏だったのに最後に少しほっとした「今夜は一人で雛祭り」。「サファイアの奇跡」も文句のつけられないラストでした。「レンタルベビー」はそんな未来は嫌だったけど物語としては見事。読み手の好みで評価は分かれるとは思いますが、これだけ質の揃った外れのない短編集ができるのは、やはり東野さんという人は器用で凄い人だと思います。
読了日:12月07日 著者:東野 圭吾
白い馬白い馬感想
東山魁夷の白い馬の絵を見たくなったので、検索していて見つけたもの。いわさきちひろの息子さん松本猛氏が「緑響く」を中心に、ドイツオーストリアで描かれた絵を並べ、魁夷の心情を思い、文章を書いたものだそうです。少年が白い馬に導かれ、背に乗って色々な風景と出会います。最後にある解説を読んで理解すると2度目はまた違ったイメージで楽しめました。私は白い馬を見たかったので白い馬からの風景というイメージではほとんど馬が出てこなかったのは残念でしたが、日本の風景でなくても魁夷の絵は静かで優しかったです。
読了日:12月07日 著者:東山 魁夷,松本 猛
ラブセメタリーラブセメタリー感想
BL界の芥川賞作家とも言われる木原さんの初文芸単行本。彼女が今回テーマに選んだのはなんと小児性愛。BLによくあるハッピーエンドを期待して手に取る方はいないと思いますが、それを同性愛と同様のマイノリティとしてくくることができるか、など大変難しいことを考えさせられる内容になっています。こんな風に彼らの葛藤を描き出すのは木原さんだからこそできたものなのだろうと思います。私自身も母親ですから、子供の事を考えたら許容はできません。確かに衝撃を受ける作品でしたが、いざレビューを書こうとすると…とても難しいです。

読了日:12月06日 著者:木原 音瀬
江戸川乱歩傑作集 (2) 人間椅子 屋根裏の散歩者江戸川乱歩傑作集 (2) 人間椅子 屋根裏の散歩者感想
テーマは変態乱歩。それぞれ何かに魅せられてしまった人たちの話です。「人間椅子」を初めて読んだ時のインパクトは忘れられません。今回唯一初読だった「鏡地獄」は確かめずにいられなかった衝動に共感する部分もあってぞっとしました。「パノラマ島奇談」生き生きと描かれる島の様子が印象的でした。丸尾氏の素晴らしいコミカライズも読んでいますが、ラストシーンは文章で読むほうが強烈でした。収録はほかに「D坂の殺人事件」「屋根裏の散歩者」「押絵と旅する男」。執着の果てがどれも美しいものではないところが乱歩らしいのかなと思います。
読了日:12月05日 著者:江戸川 乱歩
アナベルとふしぎなけいとアナベルとふしぎなけいと感想
アナベルが手に入れた箱には編んでも編んでもなくならない不思議な毛糸が入っていました。しろいゆきとえんとつからでるくろいすす、という黒と茶のトーンで描かれていたちいさなまちが、アナベルが毛糸で編むものによって、少しずつカラフルに色づいていきます。セーターの色の美しいこと!微妙なグラデーションを一枚一枚確認したくなります。絵本のストーリーも上質で、文章にぴったりのジョンクラッセンの手による美しい世界を心ゆくまで堪能しました。動物たちも出てきて、帽子三部作の読者はさらにほっこりできると思います。
読了日:12月05日 著者:マック バーネット
煙か土か食い物 (講談社文庫)煙か土か食い物 (講談社文庫)感想
改行のないギッシリ詰まった文字にいきなり胸倉をつかまれます。目を離すな、気を散らすな、読み落とすな。突然出てきた数式とグラフにヒャッホーと叫び声をあげたくなったのに続く暗号を楽しむ暇も与えられず、あらためて地面に叩きつけられたように与えられる痛み。家族とはなんだ、愛とはなんだ。暴力とはなんだ、連鎖とはなんだ。頭の中はぐちゃぐちゃで、泣きそうになりながらページをめくりました。メフィスト賞らしい、ミステリでくくっては勿体ない作品。全ての設定の妙に、読後は長距離走を走り切ったような疲労と満足感が残りました。
読了日:12月03日 著者:舞城 王太郎
京洛四季京洛四季感想
東山魁夷の絵は静けさを運んできます。青、緑、白、橙。基調となる色は変わっても、どの絵も身を正すような静けさで日常と切り離してくれます。朝の冷たい澄んだ空気、爽やかな春の風にそよぐ木々のざわめき、川のせせらぎ、しんしんと降り注ぐ雪の音。静けさの中にもこんなにいろいろな音があるのだな、と何度もページをめくって堪能しました。カレンダーや文庫版の画集を持っていたりしますが、同じ絵でも大きくなると迫力が違います。カレンダーも次は大きいのを買おうと思いました。どれも好きで選べませんが特に「花明り」は実物を見たいです。
読了日:12月03日 著者:東山 魁夷

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