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3月の読書メーター
読んだ本の数:22
読んだページ数:6903
ナイス数:4229


板谷バカ三代 (角川文庫)板谷バカ三代 (角川文庫)感想
板谷三代に受け継がれたエイリアンの血液より質の悪い代物。バカという言葉は好きじゃないけど、彼らは愛すべきバカで、筆者がめちゃくちゃな罵倒を吐きながらも彼らを心底愛しているのが伝わってきて、笑いながらもほのぼのしてしまいます。出歩くのが好きで、人の話を聞かず、常人なら誰でも装備しているストップボタンが「判断力」と「知識」の著しい欠如による壊れている、と表現が適格過ぎて思わず笑ってしまいました。少なくともここの母親や妹じゃなくて良かった…。結局自分に降りかかってこないから笑えるのかも。楽しい読書時間でした。
読了日:03月30日 著者:ゲッツ板谷
インフルエンスインフルエンス感想
子供のころから女同士のうわっつらだけ濃い人間関係が苦手です。私は団地に住んだ経験がないし、クラスや部活が違えばどんどん一緒にいる友達も変わって行ってそんなに深い思い出もないです。この物語の三人の女性の、べったりくっつくわけでもないのに相手のことを即座に慮る、その行動力や決断力には、理解できないと同時に感嘆も覚えます。女の嫌な部分を押し出すイヤミスは好きではないので読み始めは不安でしたが、先が気になって、ぐいぐいとラストまで引っ張られました。作家が話を聞くという構成からのラストシーンもとても良かったです。
読了日:03月30日 著者:近藤 史恵
花咲舞が黙ってない (中公文庫)花咲舞が黙ってない (中公文庫)感想
2000年目前の設定だそうです。現実世界でも大企業の倒産や銀行の合併などが目立った時代、作中でもいろいろな出来事や思惑が絡みます。いつものように臨店で不審な点を見つけて追及する相馬と舞ですが、今回はそれが銀行の暗部に直結していたようで…。連作短編の形ですが、歪んだ銀行の実態にどう切り込むか、思いがけない彼の登場があったり、また特命担当の昇仙峡玲子などの上部の別視点もあってとても読み応えがありました。実際の銀行には舞のような人はいないでしょう。現実世界の今では銀行の歪んだ部分は是正されているのでしょうか。
読了日:03月29日 著者:池井戸 潤
凛とした女の子におなりなさい―日本人らしいひと凛とした女の子におなりなさい―日本人らしいひと感想
ここに収められた詩には現在の自分がどんなだろうかと、考えずにはいられない強さがある。私はちゃんと子供に正しい父親を伝えてこられただろうか。自分自身が手本になって美しい所作を身につけさせてこられただろうか。大正生まれの祖母が見苦しいことをすると「お里が知れる」という言い方で私を叱ったのを思い出した。ある程度年齢を重ねた私でも「凛とした女の子になりなさい」は響く。いつまでも凛として生きていきたい。「少年が憧れた男」「かつてあったやせがまん」もとても好き。構成も素晴らしかった。この本に出会えてよかった。
読了日:03月29日 著者:阿久 悠
ときどき旅に出るカフェときどき旅に出るカフェ感想
奈良瑛子が近所で見つけた喫茶店、カフェ・ルーズ。かつての同僚円が一人で切り盛りしている店で、彼女は頻繁に通うようになります。美味しいメニューを通じて、瑛子が関わる小さな不思議や事件が解かれる連作短編集。主婦で子持ちの女性が働くために何かを選び取ったり、嫌なことを拒絶するためにエネルギーが必要だったり、働く女性の辛い部分も描き出しますが、ビストロ・パ・マル同様に、お店の居心地は抜群です。珍しい海外のメニュー、特にスイーツはとても美味しそう。最後に店主円自身のお話もあって、とても良かったです。
読了日:03月27日 著者:近藤 史恵
私のサイクロプス私のサイクロプス感想
旅本作家・和泉蝋庵と付き人耳彦が旅路で出会う怪異譚二作目。今回は版元のおつきとして前作にも出ていた輪が付き添います。耳彦は相変わらずのダメダメですが、いつの間にかそのダメダメがどんどん愛しくなっていくから困ります。一番印象深いのは輪だけが出会う表題作。私も輪と同じように考えていたので人間とはどんなものかが見えるラストは切なくて苦しくなりました。他に印象深いのは「死の山」「呵々の夜」。ラストの「星と熊の悲劇」では和泉蝋庵の秘密が少しだけ明かされますが、物語もとても良かったです。是非続きもお願いしたいです。
読了日:03月25日 著者:山白 朝子
桜の森の満開の下桜の森の満開の下感想
桜が美しすぎて怖い、と思うのはよくあること。一人で満開の桜の下に立つと全ての音が無くなったような感覚さえ覚えます。走馬灯のように満開の桜の下で起きた出来事が浮かんだりもします。一斉に咲き、たった数日で散っていく潔さが尊いです。坂口安吾が描き出したのは人間の孤独と虚無感、桜によって引き起こされたかもしれない狂気。女の遊びの壮絶さに圧倒される一方で、ラストシーンの儚さには恐怖より美しさすら感じます。生きるってなんでしょう…。こちらの桜はそろそろ満開です。明日見る桜は、私にどんな感情を与えてくれるでしょうか。
読了日:03月25日 著者:坂口 安吾
エムブリヲ奇譚 (幽ブックス)エムブリヲ奇譚 (幽ブックス)感想
山白名義は初読。連作ホラーですが世界観が好きすぎて、一編読んで一度本を閉じて深呼吸したほどです。道中記を記すために旅する和泉蝋庵と付き人耳彦。方向音痴の和泉のために彼らは度々不思議なことに巡り合います。好みは「ラピスラズリ幻想」最後の彼女の満足感が伝わってきて涙がこぼれます。「〆」「あるはずのない橋」では人間の身勝手さを嫌というほど突きつけられ、とても痛いです。「地獄」はまさしく一番怖いのは人間だと思わせられる一編。ラストの「「さあ、行こう」と少年が言った。」の締めが見事。どれも素晴らしかったです。
読了日:03月23日 著者:山白 朝子
新世界より(下) (講談社文庫)新世界より(下) (講談社文庫)感想
現れてしまった敵は倒す以外に人間たちの未来はありません。倒すための武器を手に入れるために追われながらも危険生物でいっぱいの地下道を進む彼らに息が詰まります。主人公早紀の視点で見る世界は、正しい方向を選び取っているようでいて、人間の傲慢さを嫌というほど突きつけてきます。最後の対決はわかっていても凄く辛かった。彼らの反乱理由が納得のいくものとしてわかるとき、重みはさらに増します。計算されつくした世界と物語、そして訴えてくるものの大きさに、ただただ圧倒されました。一度挫折した本でしたが本当に読んで良かったです。
読了日:03月21日 著者:貴志 祐介
新世界より(中) (講談社文庫)新世界より(中) (講談社文庫)感想
とにかくこの世界観に圧倒されます。完全な管理下に置かれているように見える子供たちですが、記憶の操作までされて管理されても、大人の言うなりになっているばかりではありません。生じるひずみ。何もかもが計算通りにはいかないのです。一番恐ろしいものの正体は見えてきたようですが、外の世界はまだはっきりとしてきません。今後の彼らはどうなるのか。読む手を止められるはずもなく、このまま下巻へ。
読了日:03月19日 著者:貴志 祐介
新世界より(上) (講談社文庫)新世界より(上) (講談社文庫)感想
1000年後の日本。呪力という神の力にも等しい力を持った人間の世界、神栖66町。この完全に管理された町の中で、呪力の訓練をし制御を学ぶ子供たち…。実はこの世界観に入り込めず挫折した過去があるので、恐る恐るの再トライでしたが、今回は思いがけずにこの世界に早く入り込めました。前半はとにかくたくさんの気になる点(伏線?)が埋まっています。そして後半は好奇心で管理下から踏み出してしまった少年少女達の冒険譚へ。危険を何とか潜り抜けようとする彼らを夢中になって追いかけ、一気に読み切ってしまいました。
読了日:03月18日 著者:貴志 祐介
エレノア・オリファントは今日も元気です (ハーパーコリンズ・フィクション)エレノア・オリファントは今日も元気です (ハーパーコリンズ・フィクション)感想
人づきあいが苦手で毎日を決まったルーティンで回すエレノアは、相手の気持ちを思いやったり空気を読めたりもするはずもなく、確固たる自分を持つ周囲から見たら変人です。でもどこかに自分にもある部分だと思えて胃がキュンと痛くなります。…そんな彼女が恋をし、レイモンドという友人を得て、変わろうとします。そして隠されていた過去に少しずつ、でも必死で向き合おうとする彼女に、いつしか涙をぼろぼろこぼしながらエールを送っていました。上手でなくていい、一生懸命に生きよう。エレノアのパワーを私もしっかり受け取りました。
読了日:03月17日 著者:ゲイル ハニーマン
雲上雲下(うんじょううんげ) (文芸書)雲上雲下(うんじょううんげ) (文芸書)感想
深い山中にぽっかりと開いた草原に樹木のごとく常世の緑を保つ「草どん」。彼の根元に子狐が寄り添いお話をせがみます。「とんと昔の、さる昔」草どんが少しアレンジされた有名な日本の昔話をひとつずつ語り、途中からは山姥も一緒に耳を澄ませます。ある日そこを通り過ぎる青年「小太郎」。どうやら草どんは彼を知っているみたいです…。雲上雲下という題名の意味することがわかる頃には、幼いころの自分、娘が小さい時のことなどしみじみと思い返していました。まかてさんが鳴らす物語たちへの警鐘を、是非多くの方に受け取って欲しいと思います。
読了日:03月16日 著者:朝井まかて
サハラの薔薇サハラの薔薇感想
エジプトで発掘した石棺に入っていたのはなんと死後数か月のミイラ。考古学者として調査をしていた峰はその後フランスに行くため飛行機に乗るが、砂漠に墜落。そして生存者の一部はオアシスを目指す…砂漠の縦断は過酷だけれどこんなもんじゃないだろう、とか、主人公が胡散臭い、とかいろいろ思いながらの読み始めでしたが、途中からぐいぐいと引き込まれ、彼らの選択、運、思考を一緒になって考え、追いました。そして…行きついたテーマの壮大さには驚かされます。これだけのテーマをこんなエンタメ作品に落とし込んだ作者に脱帽です。
読了日:03月15日 著者:下村 敦史
月の満ち欠け月の満ち欠け感想
愛した人と不慮の死で別れた人が、生まれ変わり、前世で愛した人に会いに行く。一方で18歳で亡くなった娘が、7歳の少女として現れたとき、父親は…。普段の私がこれを読んだなら、こんなに年が離れた状態で再会してどうなるんだろう、双方が生まれ変わったならともかく、などと考えたことでしょう。でも、私がこれを読んでいたのはちょうど3/11。不測の事態で失った愛する人、がリアルで、そんな相手とは年齢など関係なく、どんな形でも再会したい。そう考えるのは当然だと思えました。今度こそ幸せな人生を全うできますように。
読了日:03月12日 著者:佐藤 正午
ボクたちはみんな大人になれなかったボクたちはみんな大人になれなかった感想
Twitterで燃え殻さんの文章は知っていました。小説になってもこの特異な文体は結構好きかもしれません。この時代を同じように過ごしたわけではないけれど、彼がするっと生み出す言葉は心に刺さるものがたくさんあり、あっという間に本が付箋だらけになりました。年相応にたくさんの経験をしました。思い出すだけで微笑んでしまうようなことも、記憶の奥底にしまいたいようなことも。でもその一つ一つが今の私を作っています。でもこんな風にたった一人の名前からあふれるように短くとも濃い時間を思い出せる主人公がとても羨ましかったです。
読了日:03月09日 著者:燃え殻
宇喜多の捨て嫁 (文春文庫)宇喜多の捨て嫁 (文春文庫)感想
タイトルから、直家の嫁いだ娘のお話かと思いましたが、それはこの本の中の一編。視点を変え、年代を前後し、いつしかこの本が梟雄とまで呼ばれた宇喜多直家を描き出していることに気づきます。時系列が前後することで読みにくいかなと思いましたが、本人視点まで交えて語られたことで徐々にはまるピースに見せ方の上手さを感じました。娘を捨て嫁とまで世間から呼ばせた彼は、ただの梟雄ではなかった。それまでの荒々しさをすっとまとめるラストの「五逆の鼓」が印象的です。衣類の流れていた旭川の冷たさが私の足にも伝わってくるほどでした。
読了日:03月08日 著者:木下 昌輝
チュベローズで待ってる AGE32チュベローズで待ってる AGE32感想
AGE22から10年後。2025年という設定はほんの少し未来ですが、ITがこんな風に進歩していくのは想像できます。上巻は人間模様を痛々しいほど書き上げていましたが、今回はうって変わってがっつりミステリ。途中、ちょっとこれはないんじゃないか、とかこれ要るの?なんて思っていたのがちゃんと伏線だったりして、後半は夢中でむさぼるように読み進めました。10年前のすべてを綺麗に回収し、なおかつ余韻の残るラスト。とても良かったです。正直ぎっしり詰め込んだゆえに甘さを感じるところもありますが、今後の作品が更に楽しみです。
読了日:03月06日 著者:加藤 シゲアキ
チュベローズで待ってる AGE22チュベローズで待ってる AGE22感想
就活に失敗し自暴自棄で路上で嘔吐していたところを拾われ、就職浪人の間だけ、とホストになった主人公。病弱な母と幼い妹を抱え、少しでもいいところに就職したいと有名企業ばかり受けた結果とはいえ、恋人が有名旅行社に内定したり、自暴自棄になるのもなんだかわかります。ホストクラブの煌びやかな空間、臭いまで感じそうな路地裏、カッと血が上る瞬間がわかるような感情。決して爽やかな部分はないのにこれを泥臭くなく書き上げる彼の文章が私はとても好きです。後半は怒涛の展開です。ラストの叫びが本当に痛々しかった。続けてAGE32へ。
読了日:03月05日 著者:加藤 シゲアキ
Y駅発深夜バス (ミステリ・フロンティア)Y駅発深夜バス (ミステリ・フロンティア)感想
ホラー、青春もの、読者への挑戦、倒叙、といった違うテイストの短編を楽しめます。どれもきっちり本格ミステリで、伏線から動機から収束までまるでお手本のように見事です。好みはラストの「特急富士」。アリバイトリックを弄した倒叙ものですが、予定通りにいかずにバタバタする犯人に笑い、読後あらためて気づく伏線も見事でした。他にしっかりホラーなのに本格ミステリな「九人病」も好み。欲を言えば、どこかで人物が繋がっているような連作だったらもっと入り込めたかもしれません。全てのテイストが違うために逆に後に残りにくい気がします。
読了日:03月04日 著者:青木 知己
くちなしくちなし感想
世界はうっすらと霧がかかったようなモノトーンに少しパステルが入ったような柔らかさ。独特の世界観を作り出し、ぐさっと人間の本能や女の嫌なところにも切り込んでいるのになぜこんなにも優しいのでしょう。現実世界と重なる「愛のスカート」「茄子とゴーヤ」はするっと心に届き揺さぶられましたが、読み返すごとにどんどん染み入ってきたのは「くちなし」「花虫」「山の同窓会」。彩瀬さんの作品は「桜の下~」を既読ですが、こちらの方が断然好みです。大人の童話集を読んだような読後感がとても良かったです。
読了日:03月02日 著者:彩瀬 まる
護られなかった者たちへ護られなかった者たちへ感想
今回のテーマは生活保護。不正受給がはびこる一方、本当に必要なものには届かないという現実を思い、胸が痛くなります。私もけいさんと同じ立場になったら諦めて死を待つかもしれない、そんなことを思うほど、簡単に必要書類を書いたり揃えたりできないようになっている仕組みにやるせなさや悲しさでいっぱいになりながら読み進めました。ミステリとして楽しめるのは勿論ですが、読んだ全ての人が、生活保護の制度と実態について考えずにはいられないと思います。凄い読み応えでした。読後見る表紙絵に、あらためて涙がこぼれそうになりました。


読了日:03月01日 著者:中山 七里

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